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掲載:2021年04月25日 更新:2022年06月17日

建築士が生き残るために求められるオンライン活用スキル

建築士が生き残るために求められるオンライン活用スキル

「建築士」といえば憧れの職業ランキングにも挙げられる人気の仕事の一つです。
世間一般的には華やかなイメージがあり、建築業界では花形と思われている職業です。

ところが昨今、少子高齢化や人口減少に伴う社会情勢の変化から建築士需要に大きな変革期が訪れています。
従来の業務や受注スタイルでは生き残りが厳しい時代が訪れつつあります。
今後、生き残る建築士や建築設計事務所として何を習得しておくべきなのでしょうか。

経済や時代背景が厳しくなるほど、問われるのが「集客力」です。
過当競争を避け、生き残るためにも、自力で集客や営業ができる建築士が求められる時代になってきました。
建築士としてのポジションを保持しながらも、リスクを極力避けたオンライン活用の集客術について紹介させて頂きます。

1.時代とともに変わる建築士のポジション

建築士が生き残るために求められるオンライン活用スキル

建築士を取り巻く環境は時代の流れとともに大きく変化しています。
建築士の最も重要な業務の一つは、建物の新築における設計や監理、並びに確認申請業務です。
ところが、人口の変化や時代背景の影響を受け、昨今では新築需要の減少から建築士のポジションも変化しつつあります。

建築需要の一つの目安となるのが「新設住宅着工戸数」です。
新設住宅着工数は戦後から急速に増加し、1973年には約190万戸の最高水準を記録しました。
ところがオイルショックを機に1980年代前半は110万戸台まで減少しました。

その後、バブル景気を背景に170万戸程まで急激に回復するものの、リーマンショックや建築基準法改正の影響によって2007年には100万戸台まで大きく減少しました。
2019年度では88万戸、さらに今後の見込みとしては2030年度には63万戸、2040年度には41万戸まで減少すると予想されています。

減少の一途を辿る新築市場に対し、逆に増え続けているのが既存住宅市場です。
リフォーム市場は2040年まで年間6~7兆円台で微増傾向が続くと予測され、今後はこの市場へどのような形で建築士が市場開拓できるのかが大きな鍵を握っています。


2.この先必要になる建築士のスキル

建築士が生き残るために求められるオンライン活用スキル

「建築士」とはそもそも何をする人でしょうか。
建築士の役割と業務について再度確認してみましょう。

建物を建てるためには、どのような建物になるかを正確に示した図面が必要になります。
「設計図」「設計図書」と呼ばれる図面を作ることが建築士の重要な仕事の一つです。
デザインや間取りの計画だけでなく、各種法律に適合した安全で快適な建物を設計する役目を担っています。

このような重要な役割を果たすために、一定の規模以上の建物の設計をするためには、「一級建築士」「二級建築士」「木造建築士」といった国家試験に合格して免許を受ける必要があります。

建築士の業務は「設計」や「工事監理」の他に、「建築工事契約に関する事務」「建築工事の指導監督」「建築物に関する調査若しくは鑑定」「建築物の建築に関する法令若しくは条例の規定に基づく手続の代理」があります。

また、建築設計においても業務を細分化すると、「意匠設計」「構造設計」「設備設計」の3つに別れます。

建築士の仕事は新築の設計や監理だけではありません。
既存建築物の維持保全や再利用など、すでに存在している建築物の継続的利用や有効活用の分野にも貢献しなければなりません。

減少する新築需要から脱却し、既存建築物に関連する派生分野をいかに活用していくのかが、生き残れる建築士や建築設計事務所の大きな課題となっています。


3.「客待ち」から「集客」の戦略へ

建築士が生き残るために求められるオンライン活用スキル

景気の良い時代は、積極的な集客や営業をしなくても仕事は自然的に集まってきます。
供給と需要のバランスで社会経済は成り立っているため、需要数が供給数を上回ると、条件の良い仕事が増加して収益を増やすことができます。

ところが、景気が悪くなると供給過多となり「価格競争」「業務の減少」といった「仕事待ち」「客待ち」の状態が続きます。
仕事を確保するために、つい値引きや条件の悪い業務の受注をしてしまいがちです。
しかし、条件の悪い仕事を請けるほど、業務や収益性が悪化し、経済的にも精神的にも負の循環を招く要因に陥るので要注意です。
競争の激しい環境下では業務やお客様をじっと待つのではなく、積極的に自ら集客や営業活動を展開しなければなりません。

従来から設計事務所はサービス残業当たり前の世界といわれるほど、収益性がよいビジネスモデルではありません。
下請け業務に頼るだけの経営では、厳しい今後を生き残ることは難しいといえます。
コロナ禍の影響で「オンライン化」が進んだ昨今の条件を活かし、「オンラインを活用した集客」の仕組みを構築していきましょう。

最初から無理な資金や時間を投入する必要はありません。
まずは集客の基本原理を学び、無料系のWeb集客から始めていきましょう。


4. Webマーケティングの基本理論

建築士が生き残るために求められるオンライン活用スキル

マーケティングという言葉を聞くだけで身構えてしまう人もいますが心配は不要です。
マーケティングの難しい理論を学ぶ必要はありませんが、基礎知識として最低限のマーケティング理論を覚えておいて下さい。

マーケティングには「1.0」から「4.0」まで概念が提唱されています。

時代や社会背景とともに変わるマーケティングの概念を知っておきましょう。
一般的に「マーケティング」の概念は、200年近く前に生まれたとわれています。
有名なイギリスの産業革命以降、市場の需要と供給のバランスが問われるようになったからです。

「どうのようにして効率的に利益を最大化するか」を考えて実用化する仕組みがマーケティングの必要性です。

これはオンラインを利用したWebマーケティングでもほぼ同様の考え方です。

【マーケティング1.0】
「製品中心主義」と呼ばれ、良いものを作って販売するかが重要な考え方です。
需要よりも供給の多い市場で利用されます。

【マーケティング2.0】
「消費者志向」と呼ばれ、需要数よりも供給量が増えた場合に、顧客のニーズを考えて販売手法を考える概念です。

【マーケティング3.0】
「価値主導」と呼ばれ、商品やサービスの機能・性能よりも、環境保護や社会貢献といった製品以外の付加価値を付与した考え方です。
ちなみに日本は現在、マーケティング3.0の段階に存在しているといわれます。

【マーケティング4.0】
顧客の自己実現欲に訴えかける手法が「マーケティング4.0」です。
商品やサービスの提供により、顧客に「自分の理想像」をイメージさせる手法です。


5.SNSを活用した建築士の集客手法

建築士が生き残るために求められるオンライン活用スキル

具体的にマーケティング4.0の事例をご紹介しましょう。

【ベンツの事例】
車を単なる道具としてではなく、所有することで「どういった喜びを得られるか」
を意図的に提唱しています。

【Appleの事例】
革新的な製品をこれまでに多数発表してきたApple。
Apple製品を持つことはひとつのステータスといった感情を生み出しています。


大手企業のようなマーケティングを展開することは容易ではありませんが、商品やサービスの情報を探す場合、現在はスマートフォンをはじめとしたオンラインから提供されている情報がメインではないでしょうか。
このオンラインを活用した「マーケティング4.0」の実践が今後の集客の要となっています。

集客の手法には、テレビやWeb広告といった広告費用が発生する媒体がたくさんあふれています。
しかし、最初に実践していただきたいのが、FacebookやTwitterといったリスクの少ない「SNS活用」です。

多くのSNSは無料で利用することが可能で、話題に上がると急激に検索数が増える特徴を持っています。 このSNSを利用してオンライン集客を始めてみましょう。
上手くいくコツとしては、情報を一方的に流すのではなく、双方向のコミュニケーションを意識することです。

顧客側の声を聞けなければ、市場のニーズを知ることができません。 言葉のキャッチボールとなるような投稿を心掛けて実践していきましょう。
具体的な事例については、また別の回で紹介させて頂きます。


6.まとめ

いかがでしたか。
建築士や設計事務所が今後生き残るために求められるのは「オンライン活用」と「集客力」のスキルです。 集客の分野は極めることが難しい分野ではありますが、上手に活用する秘訣としては「成功事例を真似る」ことです。

大手企業の広告を参考にしながらも、地元の新聞折込やチラシ、タウン誌を活用しながら異業種のマーケティングをしっかりと確認してみましょう。
面白いマーケティングのアイデアが思いつくこともあります。

オンライン活用に対するハードルも高いかも知れませんが、今後ますますオンラインからの情報収集が主流化していくと予想されています。
まずは気軽なSNSを利用した集客からスタートさせて、自力で有力な顧客を獲得できる仕組みを構築していきましょう。




著者(田場 信広)プロフィール

・一級建築士、宅地建物取引士

・建築設計、工事監理、施工(大工)、戸建て木造住宅の新築からリフォーム全般、分譲マンションの内装改修、マンションの大規模修繕工事の設計・設計管理、警察署の入札仕事や少年院の特殊な工事も経験

・某資格学校にて2級建築士設計製図コースの講師を6年務める







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