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掲載:2023年10月25日 更新:2024年03月04日

リビングイン階段|選び方のポイントは?

リビングルームの中に階段を設ける「リビングイン階段」の住まいが増えています。
「新居のリビングインの階段、スタイリッシュなスケルトンタイプにあこがれるけれど、子どものことを考えるとなんとなく心配…」と感じている人も少なくないようです。

そこで今回は、暮らしにあったリビングイン階段の選び方について紹介します。


1.リビングイン階段とは?

リビングルームの中に階段を設けて、上の階に行く時には、必ずリビングルームを通って階段を使う動線の階段をリビングイン階段と呼びます。従来、日本の住宅では、玄関ホールに階段を設けるのが一般的でしたが、近年はリビングインの階段が増えています。

リビングイン階段として利用される階段の種類

リビングイン階段も、通常のエントランスホールで使う通常の階段も、構造は基本的に同じです。
階段は、構造的には箱形階段とスケルトン階段、形態的には、直階段、かね折れ階段、まわり階段、らせん階段などがあります。

●階段の構造による分類

箱型階段

一般的な住宅用階段は、下の図の中央のイラストのように踏み板とそれを支える蹴込板によって構成され、それを階段の両サイドのささら桁などによって支えています。側面から見ると棚を積み重ねたように見えるため、箱形階段と呼ばれています。

スケルトン階段

リビングイン階段では、スケルトン階段がよく使われます。
スケルトン階段は蹴込板やささら桁を用いない構造のため、開放的で空間を広く感じることができます
オープン階段、ストリップ階段とも呼ばれ、構造もさまざまですが、鉄骨造、または木造の力桁(ちからげた)によって、段板を支えるスタイルのものや、側桁によって段板を支えるタイプが主流です。

階段の種類

※住宅の階段については建築基準法施行令23条により、踏面21㎝以上、蹴上げ22㎝以下、幅75㎝以上と規定されています。参考:e-GOV法令検索「建築基準法施行令」


●階段の形態による分類

直階段

直階段は、途中で曲がることなく、一直線に直進する階段のことです。住宅で使われることが多く、鉄砲階段とも呼ばれています。
上の画像のように、スケルトンタイプの直階段はシャープで浮揚感があり、広々としたリビングを確保したい時に採用されます。
その一方で、踊り場がないため、足を滑らせると、はずみで下まで落下するリスクもあり注意が必要です。

かね折れ階段

階段の途中で90度折れ曲がるL字型の階段です。階段の登り口は動線となるためにスペースが必要ですが、かね折れ階段は空間のコーナー部分を活用するため、空間全体の配置をうまく考えれば使いやすい階段となります。

まわり階段

階段の途中で、U字型に折れ曲がる階段です。1坪前後の空間に階段を納めるためには、階高にもよりますが、折れ曲がる部分に4段以上必要になるため、滑りにくい踏み面となるように計画します。

らせん階段

柱を中心に、渦巻き状に踏み板を取り付けるらせん階段は、側板の曲線が美しい階段です。階段を降りる時には、柱を中心に扇状の踏面を回り込むように歩くため、特に大きな荷物を抱えて降りる時には注意が必要です。

2.リビングイン階段のメリット

階段スペースを取り込んだ、広々としたLDKに

従来はエントランスホールに作っていた階段スペース(約1坪分)をリビングルーム空間として取り込むことができるので、LDKスペースを1坪前後、広くとることができます。
蹴上げやささら桁のないスケルトンタイプの階段であれば、圧迫感がないのでより広がりのある印象になります。

2階に行く時に、必ずリビングルームを通る動線ができる

「こどもたちが帰宅したら、リビングルームを通って2階に行く動線にしたい」と希望する人が増えています。
従来の戸建住宅では、子どもが帰宅するとエントランスホールにある階段で2階の個室に直行することができました。リビングイン階段は、LDKを通って2階の個室に行く動線のため、LDKにいる家族と声をかけあうなど、コミュニケーションの機会を作れます

スケルトン階段で、クールモダンな空間に

蹴上げのない、シンプルな構造のスケルトン階段は、スタイリッシュでリズミカルな印象。生活動線をよく考えて家具などを配置すれば、シャープな印象のLDKを作ります。

箱形階段で、収納量を増やす

箱型階段

LDKの計画段階で、箱形階段の階段下スペースを利用して、収納スペースを作ることも可能です。掃除用具、事務用品などLDKに集まりやすい雑多な生活用品をすっきりと収納できます。

3.リビングイン階段を導入する際の注意ポイント

設計段階から冷暖房対策を考える

リビングイン階段を設ける際には、住まいにあった効率の良い冷暖房計画を考える必要があります。
全館空調システムなどで、住まい全体の温熱環境をコントロールできるのが理想ですが、それが難しい場合はLDKの冷暖房効率が落ちないように、階段の配置やエアコンの設置位置を考え、可能であれば階上などに間仕切りを設けるなどの対策を設計担当者と相談して計画しましょう。
一般的に、暖気は上に、冷気は下に集まるので、床暖房やシーリングファンを利用するのも一案です。

安全性を確認する

リビングイン階段に限らず、階段は家庭内での事故が起こりやすい場所です。建築基準法施行令では、階段手すりの設置が義務づけられていますが(25条)オープン階段の場合は細やかな配慮が必要です。
特に、乳幼児、高齢者が利用する場合は転落防止ネットや、アクリル板で作成した防止板など設置する階段にあった安全対策を、施工者と相談しながら講じておきましょう。

スタイリッシュなスケルトン階段は、シャープで軽快なイメージですが、構造によっては降りる際になんとなく怖いと感じる場合もあるので、カタログだけでなく、実際にショールームで階段の降り心地を確認しておきましょう。

音の対策が必要な場合も

リビングインの階段を実際に使ってみて「リビングの生活音やテレビや音楽が2階にも筒抜けに」と感じるケースもあります。これは、厳密に言えば階段自体の問題ではないのですが、良くも悪くも、1階リビングと2階の空間が繋がるため、日常的にテレワークを行う場合などは、生活音の対策が必要になります。

まとめ

都市部の住宅では、限られた広さの中で広々とした空間を確保するためにリビングイン階段を検討する人が増えています。
構造、材質、形態などさまざまなタイプの階段がありますので、家族構成、暮らしのイメージなどを考えながら自分達の住まいにぴったりとマッチする階段を選びましょう。





著者(藤江 薫)プロフィール

二級建築士・宅地建物取引士・インテリアコーディネーター。
電鉄会社の「住まいと暮らしのコンシェルジュ」として、7年間で1,000組以上の住まいの進路相談を担当。
不動産購入・売却・新築・建て替え・リフォーム・住みかえなど、問題解決のために、さまざまな選択肢を提案。







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