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  • 掲載:2011年12月01日 更新:2011年12月01日
八戸市 N邸新築工事

一人ひとりの暮らしに即した「理想の空間」を共に考える

古戸 睦子
ふるとちかこ建築設計室 古戸 睦子
古戸 睦子(CHIKAKO FURUTO)
一級建築士/日本建築士会連合会認定 設計専攻建築士/福祉住環境コーディネーター2級/八戸工業大学土木建築工学科非常勤講師/社団法人青森県建築士会女性委員副委員長
青森県八戸市
<経歴>
1965年 青森県八戸市生まれ
1983年 青森県立八戸東高等学校卒業
1987年 千葉大学工学部建築学科卒業
1987年〜㈱東建設計勤務(八戸市)
1994年〜㈱松本工務店勤務(南部町)
2004.6 ふるとちかこ建築設計室設立 現在に至る

<主な資格>
一級建築士
日本建築士会連合会認定 設計専攻建築士
福祉住環境コーディネーター2級
八戸工業大学土木建築工学科非常勤講師
社団法人青森県建築士会女性委員副委員長


古戸先生のお得意とされる建築手法について教えて下さい。

会社勤務していた頃は、事務所ビルや工場などの事業施設の設計監理に携わる機会が多かったのですが、独立後は個人住宅の設計監理を中心に手掛けています。

住宅の設計は簡単に捉えられる方も多いのですが、お話を進めていくと暮らし方にも、好まれるスタイルも少しずつ違いがあってそれを整理して反映していく楽しさがあります。

また、ここ数年では歴史のある建築物の調査業務に携わっております。古い建物は図面が残っていない為、調査に基づいて図面を整えて、活用に役立てる為の業務ですが、先人達の技術を知る貴重な機会に恵まれています。




個人住宅を多く手がけていらっしゃる中で、最も多い要望はどういったものでしょうか?

住宅の設計では「収納スペースを充分に確保して欲しい」と言う要望が最も多いです。
シューズクローゼットや食品庫など用途に応じた収納スペースを望まれる方もいれば、少し広めの納戸が欲しいと言う方もいらして、人によって求めている内容が異なります。季節で必要な物、屋外で使う物、思い出の品物、趣味の物、頻度は少なくても保管しておきたい物も結構ありますね。

建物のボリュームやコストでも収納スペースの取り方や造り方は随分変わってきます。
棚一枚の奥行きや高さでも使い勝手が変わってきますので、時間をかけて打合せをしています。

また、最近リクエストがとても多いのが室内での物干しスペースです。北国では冬は外に洗濯物を干せないと言うこともあるのですが、近年は花粉や埃などの対策にも室内の物干しは必須になっています。
干すだけでなく、取り込んで・畳む動作にも、換気と除湿にも配慮が必要です。 些細な事ではありますが、暮らしの中では大きなポイントになると思います。




今までに手がけられた設計・デザインのお仕事の中で、特に思い入れがある案件はありますか?

どの建物にも色々な思い入れがありますが、4年ほど前に手掛けた「細長い敷地に建つ家」(UK邸)が非常に思い出深い物件です。

敷地の間口が7.4mで、一低住専で敷地後退があり建物の巾は3間も確保できず、対して奥行きが25mありました。
更に、地盤面は南側隣地より2mほど低く、悪い条件が重なった敷地でした。
都会では珍しくない事かもしれませんが、地方の住宅地では巡り合う事が少ない条件で、初見の時には愕然とした事を今でも鮮明に思い出します。

リビングは南面させることが理想ですが、南隣地から見下ろされる感じが無いよう細長い平面プランの中央に吹き抜けのあるリビングを配置して、トップライトとハイサイドライトで採光を確保して明るく開放的な空間に設計致しました。
また、東西の隣地に落雪が無いように片流れ屋根にしたり、そこに出来た小屋裏空間を収納スペースに活用したり、オーナー様ご夫妻と様々な角度から話し合いをして、色々な工夫をして進めた建物でした。

また、設計・施工期間中、オーナー様一家は県内他市にお住まいで、片道3時間近くかかる道のりでしたので、お会いできる時が限られていましたが、設計期間に充分な打合せをしたことで、着工後に滞る事もなく満足して頂けた事が強く印象に残っています。




打ち合わせの段階で、お客様の要望・想いの共有をする事。その過程で妥協をしないということですね。完成した際の喜びもひとしおではないでしょうか。

そうですね。仕事にやりがいや喜びを感じるのは、単純ですが完成したときに喜んで頂ける事、そして、お住まいになられてからも折に触れて「快適だ」とご連絡があることです。お子様のお友達やご夫妻のご友人がいつも集まって賑やかにしているお話を聞くことも嬉しいです。




最後に、これから家をたてる方へのアドバイスをお願いします。

少し時間をかけて、設計者とトコトン話し合う事だと思います。ただ、考えているイメージをどう伝えてよいかわからないと言う方、雑誌などを見ているとドレもコレも良く見えてまとまらないと言う方、図面をうまく読み取れないと言う方などがいらっしゃいます。

そんな方々にお薦めなのが、「理想の家」について箇条書きで書き出してみることです。
家を建てるとなると、どうしても平面プランや外観のデザインが気になったり、線を引きたくなったりするかもしれませんが、文章での設計と言うのも中々面白いものです。

例えば、無垢材や自然素材を使いたい、広いお風呂、オール電化、対面キッチン、来客が多い、続き間の和室・・・など、機能的・具体的なことはもちろんですが、ごろ寝のできるスペース、追いかけっこができる家、屋外と一体的に使える空間、ひとりになれる空間・・・、少々抽象的な要望でも書いて頂けると、ご家族が望んでいる「理想の家」をうかがい知ることが出来るように思います。

もちろん、雑誌の切り抜きなどでイメージブック(スクラップブック)を作っておくことも伝える手段としては有効です。箇条書きと共に活用する事で話が膨らんでいくと、より具体的で理想に近い家づくりが出来るように思います。




ARCHITECT
設計士インタビュー
シーズン毎で取材させて頂いている設計士へのインタビュー記事です。2007年秋にスタートして四半期毎に新しい記事の更新をしています。住宅、集合住宅、商業施設、公共施設など設計士の体験談をお楽しみください。
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