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国産木材利用は本当にメリットがあるのか?市場動向と背後の社会情勢
建築関連のニュースで最近良く話題に上がるキーワードが「国産木材」です。
国立競技場の設計以降、頻繁にテレビ出演も増えた隈研吾氏も木材をふんだんに利用する建築家として有名です。
木材は建築とは切っても切れない深い縁のある材料ですが、気になるのは「国産」と言う部分ではないでしょうか。
外国産木材と比較して、国産木材を利用した場合どのようなメリットが有るのでしょう。
また、なぜここまで注目されるのか、市場の動向と背後にある社会情勢についてまとめさせて頂きました。
国産木材利用のメリット、建築のプロとして知っておくべきポイントとして参考にして下さい。
1.国産木材の自給率の低さ
建築に利用される材料は多岐に渡ります。木材やコンクリート、鉄やその他の金属、樹脂や石油製品もあり、現代建築は資源の複合融合体となっています。
日本は古来より建築材料として「木材」をメインとして利用してきました。木材は柱や梁と言った構造材から、仕上げ材料として広範囲に活用できる優れた材料です。
ところがこの木材、昭和30年頃は 国内自給率が9割を超えていたのですが、戦後の復旧に伴う住宅供給増加と昭和39年の木材輸入の全面自由化により、安価な外国産木材が建築市場の主役的存在として君臨するようになりました。
その影響で平成14年には国内木材の自給率は18.8%まで下落しました。
木材と異なり、建築材料の主役の一つでもあるコンクリートの原料の「石灰」は、国内自給率100%です。資源に乏しい日本において、輸入に頼らない工業資源は極めて稀と言えます。 国内自給率100%は厳しいとしても、国土の7割を森林が占める日本において、建築材料として利用できる木材は豊富に存在しています。 この国産木材が今まで十分有効活用されず、安価で大型の外国産木材に市場を奪われてきました。
ところが昨今、この国産木材市場に大きな変化が訪れています。
日本は古来より建築材料として「木材」をメインとして利用してきました。木材は柱や梁と言った構造材から、仕上げ材料として広範囲に活用できる優れた材料です。
ところがこの木材、昭和30年頃は 国内自給率が9割を超えていたのですが、戦後の復旧に伴う住宅供給増加と昭和39年の木材輸入の全面自由化により、安価な外国産木材が建築市場の主役的存在として君臨するようになりました。
その影響で平成14年には国内木材の自給率は18.8%まで下落しました。
木材と異なり、建築材料の主役の一つでもあるコンクリートの原料の「石灰」は、国内自給率100%です。資源に乏しい日本において、輸入に頼らない工業資源は極めて稀と言えます。 国内自給率100%は厳しいとしても、国土の7割を森林が占める日本において、建築材料として利用できる木材は豊富に存在しています。 この国産木材が今まで十分有効活用されず、安価で大型の外国産木材に市場を奪われてきました。
ところが昨今、この国産木材市場に大きな変化が訪れています。
2.国産木材と外国産木材の大きな違い
国産木材は、日本の風土で育った木を利用した材料です。四季がハッキリし、厳しい冬や高温多湿の夏によって逞しい木が育ちます。特に、主な建築材料に利用される杉や桧の成育には日本の自然的風土が適しています。
外国産木材は、育ちが良過ぎて年輪が大きいと言われます。年輪が大きいと乾燥収縮による変形が大きくなり、様々な箇所に支障が出る場合があります。 だからと言って外国産木材が建築材料の利用に適していない訳ではありません。
国産木材と外国産木材のどちらを選ぶかは、「品質」「好み」「価格」「用途」等で決まるため、一言で優劣が決まるものではありません。 建築用材として木材を使う場合、単純に「性能」だけが求められる訳ではなく、「色合い」や「木目」「香り」と言った「装飾性」も同時に求められます。 杉、桧、松、ケヤキなどの木は、日本の歴史の中で長く使われてきました。日本人にとって国産木材は親しみがあり、文化や好みに一致するからです。
日本は四季がハッキリしている為、年輪もハッキリ現れます。これはイコール美しい木目を作り出す要因です。見た目と性能を有した国産木材は優れた建築材料の一つです。 しかし、「二方柾」と言った材料を確保する場合は、断面が大きい原木が必要となります。国産の大径木は少なく、どうしても外国産木材に依存しなければならないと言った弱点もあります。
外国産木材は、育ちが良過ぎて年輪が大きいと言われます。年輪が大きいと乾燥収縮による変形が大きくなり、様々な箇所に支障が出る場合があります。 だからと言って外国産木材が建築材料の利用に適していない訳ではありません。
国産木材と外国産木材のどちらを選ぶかは、「品質」「好み」「価格」「用途」等で決まるため、一言で優劣が決まるものではありません。 建築用材として木材を使う場合、単純に「性能」だけが求められる訳ではなく、「色合い」や「木目」「香り」と言った「装飾性」も同時に求められます。 杉、桧、松、ケヤキなどの木は、日本の歴史の中で長く使われてきました。日本人にとって国産木材は親しみがあり、文化や好みに一致するからです。
日本は四季がハッキリしている為、年輪もハッキリ現れます。これはイコール美しい木目を作り出す要因です。見た目と性能を有した国産木材は優れた建築材料の一つです。 しかし、「二方柾」と言った材料を確保する場合は、断面が大きい原木が必要となります。国産の大径木は少なく、どうしても外国産木材に依存しなければならないと言った弱点もあります。
3.国産木材を薦める政府と背景事情
昨今「国産木材」が強く注目される背景には、政府の推奨と国際的な社会事情があります。
かつて、軍需用材の用途で大量伐採された日本の森林は、保水力を失って多くの自然災害を発生させました。戦後、政府は災害対策と大量の住宅供給の為に、成長の早い針葉樹の植林を薦めました。
ところが木材輸入の自由化に伴って価格の安い外国産木材の需要が高まり、国内の林業が衰退し始めます。林業が衰退すると森林の管理が手薄になり、国内木材の高騰を引き起こしました。価格が上昇すると需要が減り、国産木材の自給率は平成14年まで低下し続けるという負のスパイラルに陥りました。 森林は木材利用としての価値だけでなく、二酸化炭素の吸収や災害の防止にも強い効果があります。森林をしっかりと保守管理し、健全な森林に育てていくためには、木材を上手に利用して森林の健全なサイクルを維持しなければなりません。 森林には、土砂災害の防止、林産物の供給、生物多様性の保全といった様々な機能と役割を持っています。森林の崩壊は人間社会にも大きな影響を及ぼすでしょう。
今、国際的にも問題視されている地球温暖化の問題も森林が大きく関わっています。温暖化の原因となる二酸化炭素を吸収する樹木の役割は重要で、健全な森林を維持管理出来るか否かは、国際社会の厳しい視線の中で問われる日本の真価です。 また、戦後に植樹された木が伐採期に達している為、国産木材を利用した市場開拓に政府が本腰を入れて取り組んでいます。
ところが木材輸入の自由化に伴って価格の安い外国産木材の需要が高まり、国内の林業が衰退し始めます。林業が衰退すると森林の管理が手薄になり、国内木材の高騰を引き起こしました。価格が上昇すると需要が減り、国産木材の自給率は平成14年まで低下し続けるという負のスパイラルに陥りました。 森林は木材利用としての価値だけでなく、二酸化炭素の吸収や災害の防止にも強い効果があります。森林をしっかりと保守管理し、健全な森林に育てていくためには、木材を上手に利用して森林の健全なサイクルを維持しなければなりません。 森林には、土砂災害の防止、林産物の供給、生物多様性の保全といった様々な機能と役割を持っています。森林の崩壊は人間社会にも大きな影響を及ぼすでしょう。
今、国際的にも問題視されている地球温暖化の問題も森林が大きく関わっています。温暖化の原因となる二酸化炭素を吸収する樹木の役割は重要で、健全な森林を維持管理出来るか否かは、国際社会の厳しい視線の中で問われる日本の真価です。 また、戦後に植樹された木が伐採期に達している為、国産木材を利用した市場開拓に政府が本腰を入れて取り組んでいます。
4.新市場の創出と可能性
「地球温暖化防止」「災害対策」「林業の活性化」「雇用問題」「経済問題」と言った様々な課題を抱える日本の森林は、政府主導の元で新しい市場を創出し始めています。
中でも「CLT」と呼ばれる新技術に注目が集まり、「木造ビル」と言う新しい市場が生まれるとして大きな期待が寄せられています。
「CLT」は1995年頃からヨーロッパを中心に研究と開発が進められました。 繊維方向を直角に交わした挽き板を接着した材料です。従来の集成材とは異なり、CLTは基本的にパネル材として利用します。面で構造を支える仕組みは「木製の壁式構造」と言えるでしょう。
繊維方向を交互に貼り合わせる事によって、ねじれや割れを防止し、軽量で柔らかい針葉樹を上手に活用する事が出来ます。 建築材としての高い強度を持つCLTは、「木造ビル」と言う新市場の創生主として期待が寄せられています。すでにヨーロッパでは法令の見直しが進み、次々に高層の木造ビルが登場しています。
少し日本は遅れていますが、2016年に「CLTパネル工法」の告示が実施され、構造計算を行うことでCLTを使った建築が可能になりました。 大手ゼネコンもこの市場に注目し、独自の商品開発に乗り出しています。 木材を鋼材と組み合わせた「木鋼ハイブリッド構造」で、2041年を目標に高さ350メートルの超高層木造ビルを建設する計画を発表している企業もあり、新たな市場に注目が集まっています。
「CLT」は1995年頃からヨーロッパを中心に研究と開発が進められました。 繊維方向を直角に交わした挽き板を接着した材料です。従来の集成材とは異なり、CLTは基本的にパネル材として利用します。面で構造を支える仕組みは「木製の壁式構造」と言えるでしょう。
繊維方向を交互に貼り合わせる事によって、ねじれや割れを防止し、軽量で柔らかい針葉樹を上手に活用する事が出来ます。 建築材としての高い強度を持つCLTは、「木造ビル」と言う新市場の創生主として期待が寄せられています。すでにヨーロッパでは法令の見直しが進み、次々に高層の木造ビルが登場しています。
少し日本は遅れていますが、2016年に「CLTパネル工法」の告示が実施され、構造計算を行うことでCLTを使った建築が可能になりました。 大手ゼネコンもこの市場に注目し、独自の商品開発に乗り出しています。 木材を鋼材と組み合わせた「木鋼ハイブリッド構造」で、2041年を目標に高さ350メートルの超高層木造ビルを建設する計画を発表している企業もあり、新たな市場に注目が集まっています。
5.マーケットチャンスに乗る
「CLT」は大型建築物に対応しているだけではありません。現場でパネルを組み合わせるCLTの工法は、工期短縮や建物の軽量化にも大きく貢献します。
元来から木造が多い一般住宅分野においても、工期短縮と高い断熱性から利用者も増えるでしょう。
CLT製品が普及し始めると、次に必要になるのが専門の技術者です。特に設計段階で専門知識と工法を理解した建築士の育成が急がれます。 単体としては建築資材の価値が低かった間伐材ですが、CLTの登場によって手付かずであった日本の森林資源の有効活用に大きな期待が集まっています。 雇用創生や自然災害の防止、さらに新市場の創造と、国産木材には大きなチャンスの波が押し寄せています。 さらに後押しするように、外国産木材の価格高騰があり、国産木材の利用が一気に高まっています。
18.8%まで下落した木材自給率も現在は30%台まで回復しました。政府はさらに木材自給率を50%まで押し上げる方針を打ち出しています。
ところが、少子高齢化と人口減少の影響により、国内の住宅着工棟数は年々減り続けています。その為、今後は国内需要だけでなく、海外への輸出も含めた整備が必要となります。 新興国は経済発展や人口増加により、木材需要が増加することが見込まれています。この需要に応えるためにも、国産木材市場の人材の育成や工場の体制強化、そして販路拡大が急がれるでしょう。まさにマーケットチャンスの到来です。
CLT製品が普及し始めると、次に必要になるのが専門の技術者です。特に設計段階で専門知識と工法を理解した建築士の育成が急がれます。 単体としては建築資材の価値が低かった間伐材ですが、CLTの登場によって手付かずであった日本の森林資源の有効活用に大きな期待が集まっています。 雇用創生や自然災害の防止、さらに新市場の創造と、国産木材には大きなチャンスの波が押し寄せています。 さらに後押しするように、外国産木材の価格高騰があり、国産木材の利用が一気に高まっています。
18.8%まで下落した木材自給率も現在は30%台まで回復しました。政府はさらに木材自給率を50%まで押し上げる方針を打ち出しています。
ところが、少子高齢化と人口減少の影響により、国内の住宅着工棟数は年々減り続けています。その為、今後は国内需要だけでなく、海外への輸出も含めた整備が必要となります。 新興国は経済発展や人口増加により、木材需要が増加することが見込まれています。この需要に応えるためにも、国産木材市場の人材の育成や工場の体制強化、そして販路拡大が急がれるでしょう。まさにマーケットチャンスの到来です。
6.まとめ
いかがでしたか。国産木材に今熱い注目が集まる理由とメリットがご理解頂けたでしょうか。CLTの登場により、木材輸入大国であった日本が木材輸出大国に変わる日も遠い未来の話ではないのかも知れません。
もちろん、国内市場も今後拡大すると予測され、木造ビルにおいては1〜2兆円規模の新マーケットが生まれると試算されて期待が高まっています。 需要が増えるまでの間は高価な製品になりますが、需要の増加に応じて安価な国産木材やCLTの普及が加速するでしょう。 すでに木造住宅でも、有名ビルダーが外国産木材から国産木材に切り替え出しています。
今後さらに賑わうと予測される国産木材市場、建築のプロであれば見逃すことなくチェックしておきましょう。 国産木材のメリットを十分に把握し、お客様にベストな提案が出来るように最新の情報の仕入れをオススメします。
もちろん、国内市場も今後拡大すると予測され、木造ビルにおいては1〜2兆円規模の新マーケットが生まれると試算されて期待が高まっています。 需要が増えるまでの間は高価な製品になりますが、需要の増加に応じて安価な国産木材やCLTの普及が加速するでしょう。 すでに木造住宅でも、有名ビルダーが外国産木材から国産木材に切り替え出しています。
今後さらに賑わうと予測される国産木材市場、建築のプロであれば見逃すことなくチェックしておきましょう。 国産木材のメリットを十分に把握し、お客様にベストな提案が出来るように最新の情報の仕入れをオススメします。
著者(田場 信広)プロフィール
・一級建築士、宅地建物取引士
・建築設計、工事監理、施工(大工)、戸建て木造住宅の新築からリフォーム全般、分譲マンションの内装改修、マンションの大規模修繕工事の設計・設計管理、警察署の入札仕事や少年院の特殊な工事も経験
・某資格学校にて2級建築士設計製図コースの講師を6年務める
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