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掲載:2023年07月18日更新:2023年09月08日

内装を木質化して住まいを心地よい空間に!フローリングや壁材選びのポイントや注意点とは?


建物の内装や外装に木材を使うことを「木質化」といいます。 内装の木質化は、そこで過ごす人にも地球環境にもメリットがあるとして近年注目されています。

そこで今回は、内装木質化で得られるメリットや設計における注意点、具体的な建材の選び方などを解説します。 木質空間に興味がある、安らげる内装を実現したいという方は、ぜひ参考にしてください。


1.内装の木質化で期待される効果とは



木質空間で過ごすと人の心理面や安全面、快適な室内環境にプラスの影響があるといわれています。
どのような働きがあるのか、みていきましょう。

高い調湿作用による快適な湿度


木材には、室内の湿度変化を抑える性質があります。空間の湿度が高ければ水分を吸収し、湿度が低ければ水分を放出する木材の働きは調湿作用と呼ばれます。内装に木材がふんだんに使われた室内では、空気中の湿度を一定に保ちやすいといわれています。

そのため、木質空間では湿度の上がりすぎる梅雨時期や湿度が下がりすぎる乾燥した冬の日でも室内を快適な湿度に保ちやすいのです。

優れた断熱性による心地よさ


多数の細胞からできている木材内部には、多数の空隙があります。空隙にたっぷり含まれる空気は熱を伝えにくいため、木材は断熱性に優れています

コンクリートやビニールの床に比べると、木材の床は足を冷やしにくいことが分かっています。寒い冬でも、木材のフローリングならより快適に過ごせるでしょう。

衝撃吸収能力がケガを予防


木材は、衝撃吸収能力にも優れています。木材を構成する空洞の細胞は、衝撃が加わった際に変形してクッションのような役割を果たすからです。

内装木質化がもたらす転倒時のケガ防止効果は、お年寄りや小さな子供がいる家では、床や壁に木材を取り入れる動機付けの一つになるのではないでしょうか。

紫外線と音の吸収で目と耳が快適


木材は、人間の目と耳に負担をかけにくいと考えられています。木材は紫外線をよく吸収する性質をもっているため、木材に反射した光は紫外線をほとんど含みません。有害な紫外線を浴びる量を減らせるため、木質空間は目にやさしいといえるのです。

また、木材は音を適度に吸収する性質もあります。木材を上手に取り入れた空間では、音が適度に反射するためいつまでも響くことがなく、耳に心地良い環境、音が聞きやすい環境を期待できます。

香りがもたらすリラックス効果


木の香りが漂う空間で、心地よさを感じたことはないでしょうか。 感覚的な指標だけでなく、脳活動や自律神経活動、血圧などの測定によって、木質化された室内において人はリラックスできることが分かりつつあります。 樹種にもよりますが、木の香りは人間の脳活動や交感神経を落ち着かせ、リラックス状態に導くといわれているのです。
ここまでに挙げた内装木質化のさまざまなメリットを受けるためには、内装材選びで気をつけるポイントがあります。


2.内装木質化のポイントと注意点



ここからは内装の木質化に当たって、材料選びのポイントと設計時の注意点を説明します。

木材のメリットを活かすなら無垢材を


木材特有のメリットを最大限に生かしたいなら、床材や壁材、天井材などの内装材を選ぶ際に気をつけるポイントがあります。 それは、合板や積層材などの木質系加工材ではなくなるべく無垢材を使うということです。

例えば、フローリングには無垢フローリング複合フローリングに大別されます。
無垢フローリングは、木材の一枚板をフローリングに加工したものです。 一方、複合フローリングの種類はさまざまですが木目調のプリントを施したシート、突板、挽き板などを、基材である合板に貼り付けた構造が基本です。
調湿作用や衝撃吸収作用など木材本来の特性を活かしたいなら、無垢フローリングを選びましょう。

ただし、無垢材を使った建材には次のようなデメリットがあります。

● 価格が高くなりがち
● 反りや歪みが発生することがある

一般的に木質系加工材に比べて、無垢材を使った内装材の価格は高くなりがちです。予算には限りがあるでしょうから優先順位をつけて上手に取り入れるといいですね。

また無垢材は施工後時間が経つと、反りや歪みが出てくる可能性があります。このデメリットを最小限に抑えるには、無垢材の性質に精通し、無垢内装材の施工経験が豊富な業者を選ぶことが大切です。

内装木質化と内装制限


内装に木材を使う際、設計に当たって「内装制限」の要件を確認する必要があります。
「内装制限」とは、建物内で火災が起こった時の被害を最小限に抑えることを目的として建築基準法で定められた規定で、場合によっては内装に木材の使用が制限されることがあります。

内装制限を受けるか否かは、建物の用途や規模、開口部や火気使用の有無などの条件によって異なり、また一定の条件を満たせば緩和措置も適用されます。 人の命が関わることなので、不安が残る場合は、自治体の担当者や専門家に相談しながら、設計や材料選定を進めることをおすすめします。


3.内装の木質化が注目される理由



近年の社会情勢の観点からも内装木質化は注目されており、国も建物への木材使用を推進しています

カーボンニュートラルの実現に寄与


政府は平成22年制定の「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」の名称を、令和3年に「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」に変更しました。
建築への木材利用の推進は、カーボンニュートラルな脱炭素社会の実現に資するものだと明確に示されたのです。

内装木質化も建物への木材利用を進める手段の一つであり、国によるさまざまな補助事業が行われています。林野庁が「建築物の木造化・木質化に活用可能な補助事業・制度等一覧」をまとめているので、参考にしてください。

また地方自治体も地元材の活用を前提に、木造化・木質化に補助制度を設けていることがあります。自治体ホームページを確認したり、担当窓口に問い合わせたりしてみましょう。

健全な森林の維持・持続的な林業経営に貢献


日本では、戦後植林された人工林が伐期を迎えているにも関わらず、それらの国産材が十分に活用できているとは言い難い状況です。 手入れをされずに放置されれば森は荒れ、水源涵養機能や災害防止機能、生物多様性の維持など本来期待される能力を発揮できません。

健全な森林の育成・持続的な林業経営には、「伐採→利用→植林→育林」というサイクルが必要です。 内装への積極的な木材の活用は、森林資源の循環利用を促す一助となることが期待されているのです。


まとめ


木材を取り入れた内装はそこで過ごす人に好ましい影響を与えたり、快適な室内環境を保ったりできると考えられています。
さらに地球環境問題、国内森林資源の活用、林業の活性化の点でも、建物への木材利用は推進されており今後もこの流れが止まることは考えにくいでしょう。

興味がある人は今回紹介した材料選びや施工のポイントを押さえつつ、メリットの多い内装の木質化に挑戦してみてはいかがでしょうか。




著者(西山 ゆうこ)プロフィール

フリーライターとして活動中。
住宅関連サイト、木材関連プラットフォームなどで、住まいや暮らし方、建築材料に関する記事・コラムを執筆しています。
なるべく手間をかけずにスッキリ暮らすのがモットー。そのためのアイデアも発信中。






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