- 掲載:2008年03月01日 更新:2024年12月06日
「環境と共存する住まい」づくり 嶺建築設計室 与那嶺真康
沖縄県生まれ
沖縄工業高等学校建築科卒業後、県内、県外(東京・大阪)の設計事務所や工務店に勤める。
事務所設立までの間、設計・監理から 施行に至る建築の経験を積み、技術のノウハウを学ぶ。
2004年嶺建築設計室を設立、現在に至る。
<資格>
一級建築士・ 沖縄県被災建築物応急危険度判定士
~取材にあたり~
建築に関するプロフェッショナルの目指す「理想の住まい」は、常に時代のニーズと共に変遷を重ね、進歩し続けて来ました。
加えて、環境問題が深刻化する現代において、私たちのライフスタイルや嗜好の多種多様化とともに、これからの「住まい」づくりの重要なファクターとして、「地球環境との共存」という新たなテーマが求められています。 日本の平均的な住宅の建て替え年数は30年と、欧米の平均年数と比較しても、スクラップ&ビルドの傾向が強いとされていますが、これからの住宅には「持続できる住まい」つまり「ストック型社会」への移行が必要とされてくることでしょう。
今回のTHE SPACE DESIGNでは、住まいの設計を通して「環境と共存する住まい」づくりに意欲的に取り組むプロフェッショナル、与那嶺真康氏にお話を伺います。
主に手掛けられている建築設計分野・デザイン分野は何でしょうか?
住宅やアパート、それからマンション、店舗などの建築企画・設計・監理を行う建築設計事務所です。どちらかというと住宅やアパートの仕事が大半を占めています。
設計を進めてゆく中で上で最も苦労する点は何でしょうか?
設計にとりかかる場合、全体の資料が整った後プラン作成にはいりますが一番神経を使うところでもあります。立地条件によって、計画案が中々思うように進まないというのは多々あります。
たとえば、狭小の敷地で道路面以外の3面が建物に囲まれた場所に住宅を建てる場合、限られたボリュウムを最大限に生かす工夫が、重要になってきます。部屋の配置をする中で採光などの明り取り窓をどう取り入れるか、それと風の流れをどうするかなどです。
その場合、隣接する建物とプライバシーとの整合性をどう解決したら良いのか名案を探すのにひと苦労します。その他、高低差の大きい敷地や斜面のある敷地などは、平坦な敷地と違ってプラン作成に手間取る場合が多いです。
一般ユーザーさんに対して、良い家を建てる為に設計事務所として何かアドバイスがあれば教えてください。
家づくりを計画する場合、資金計画から設計事務所探し、それからプランづくりの後着工して移り住むまでの間、楽しい反面悩みも又いろいろあると思います。家づくりに対する思いは、ひとそれぞれ違います。
設計事務所と相談をする前に一度家づくりに必要なある程度の考えをまとめておくことは大切なことです。
たとえば、場所の状況や土地の面積、ライフスタイルや家族構成、大まかな予算、だいたいの建坪、建物の着工する時期などです。それから依頼する設計事務所を探す場合ですが、インターネットや建築情報誌などを利用して情報集めをするのも良いでしょう。
気になる設計事務所などがあるなら、直接連絡をとって話しをしてみることが一番です。
設計事務所として建築に携わられて、仕事にやりがいや喜びを感じられるのは、どんな部分でしょうか?
依頼を受けた仕事が完了し、無事に引渡しが済んだときがほっとする瞬間であり喜びを感じる瞬間でもあります。それからお客様から「お願いして良かったです」とか「良い家ができました。ありがとう御座います」などありがたい言葉を頂いたときは仕事冥利に尽きます。
これからの住宅・建物はこんな風になるだろうという予測、あるいはこんな風になるべきであるというお考えがありましたら教えてください。
現代社会のライフスタイルは多種多様化が進み、それに合わせて次々に安くて便利な商品が、市場に氾濫しています。住まい手が住宅に何を望むのか、或いはどういう住まいであって欲しいのか考えた場合、これからの住宅のあり方が少しずつみえてくるのではないでしょうか。一日の生活の始まる場所であり終る場所でもある住まい。これから益々進むであろう高齢化社会の対応も家づくりの中で大切になっています。
日本の平均的な住宅の建替え年数はイギリスの約77年、アメリカの約55年に比べ約30年と短いです。ローンの返済が終わるころに又新しく建替えるという繰り返しです。地球の環境問題や廃棄物が深刻化する現在、建築物の建替えによる大量の廃棄物を生み出し、大量の資源を消費するこれまでのスクラップ&ビルドの繰り返しは終るだろうと思われます。
これからの住宅はつくっては壊すこれまでの一世代フロー消費型の社会から、丈夫で長持ちできる住宅をメンテナンスをしながら大切に使う二世代、三世代まで繋がる住まいづくり、ストック型社会へと移り変わるだろうと考えられます。
~取材後記~
特に私のように大都会に住む庶民派にとっては、広々とした敷地に思い通りの大きな家を建てるなどは望むべくもありません。現実には狭かったり、形が悪かったりの敷地に、どうしたら理想のマイホームを建てられるか悪戦苦闘するのが関の山です。
でもそんな時、やはり頼もしい味方となってくれるのが、与那嶺先生のような設計の専門家ですね。風の通り、光の道、プライバシーの確保など限られた空間を、創意と工夫で快適な住まいに創り上げてしまうプロフェッショナルと私たち住まう側との充分なコミュニケーションが、理想の住まいづくりのキーポイントであると思います。
取材・文 建材ナビディレクター 中島