- 掲載:2023年11月01日 更新:2024年08月07日
//= $nameTitle ?>日常的な事象や原理を「視覚化」
東京都渋谷区東京都渋谷区本町2-45-7 RENN Bldg.
1973年横浜生まれ。明治大学理工学部建築学科卒業。設計事務所勤務、ヨーロッパ各国を旅行ののち、2000年に タカトタマガミデザインを 創業。2015年にはタカトタマガミデザイン作品集出版。使い手や場所の個性を空間や形態に反映させる作風が特徴。現在、日本大学理工学部で非常勤講師を兼任。
得意な設計は、「集いの場」「憩いの場」
我々の担当領域は広いのですが、こうして俯瞰してみると、用途は違えど集いの場、憩いの場を設計していることが多いので、自然とそういう目的の空間の設計は得意になっていると思います。過去には喫煙所を複数手掛けたり、今は物流倉庫の休憩ラウンジやスキー場のレストラン、展望テラスなどを継続して手掛けています。
親しみのある漫画とのコラボレーション
特にやりがいを感じたのは、隅田川を運行する水上バス「エメラルダス」の内装設計の仕事です。水上バスの外装は漫画家の松本零士氏がデザインしているのですが、子供のころから氏の漫画には親しんできたので、氏とコラボレーションできること、建築ではなく、初めて移動空間のデザインができることをとても光栄に思いました。
もうひとつ大きな理由は、クライアント直々に指名で依頼を頂いたことです。特にそれまでそのクライアントとは縁があったわけではないのですが、多くの建築家やデザイナーをリサーチしたなかで玉上が最もこの仕事に相応しいと思ったので依頼した、と飛び込みでコンタクトをいただきました。設計者冥利につきるとはこのことで、凄く嬉しかったのと同時に期待を裏切れないプレッシャーにもなりました。
常にデザインのヒントを求め、いろんなものを観察
努力しているといえるか分かりませんが、常にデザインのヒントになるものはないかと、建築に限らずいろんなものを観察しています。
質実剛健、詫びさびを美徳とする日本人建築家が多くいるなかで、個性を打ち出す強い表現を意識的にすることで差別化を図っています。
なにげなく日常的に人が知覚している事象や原理を形態として視覚化することで人の感情に働きかけるものを作りたいと思っています。
水上バスから得られた非日常的な体験
松本零士デザインの未来的な船に乗り、東京の街を水上から眺めることはとても非日常的で唯一無二の体験でした。タワーマンション群とガントリークレーンが立ち並ぶ埠頭の対比は、まるで人間の営みの表と裏を見るようで、東京の街から喜怒哀楽が溢れてきているように感じました。これを印象的な体験にしたいと思いました。
また水上バスの船内には、水面が反射するきらめきや、船が橋の下に入った一瞬の暗がりが映り、そこは水上の移動空間ならではの面白さがあると思いました。
季節や日照、風、風景といった環境は建築の空間づくりに影響を及ぼしますが、移動空間においては目まぐるしく周辺環境が変化します。そこに大きな違いを感じました。
船舶ならではの法規などもありましたが、法的、技術的、経済的なものを解決しながら作るのは建築も同じなので、苦労はさほど感じませんでした。これはクライアントや施工者のサポートがあったのも大きいと思います。建築の設計経験がこんなかたちで求められ、そして活かせるということを知れたのは大きな収穫です。引き続き領域を横断した仕事には挑戦したいと考えています。
チーム内での円滑なコミュニケーションがかなう「BIM」
BIMを二年くらいまえから導入しています。複雑な形態を設計することが多いため、3Dのモデリングデータを自動的に2D図面化してくれたり、様々な情報をまとめることができるBIMは我々にとって有益でした。パースの作成にはリアルタイムレンダリングソフトを使っています。レンダリングに何時間もかけていた頃に比べ、かけている時間は雲泥の差です。
又、コロナ禍であたりまえになったオンラインミーティングやクラウドサーバの活用はもちろんのこと、Miroのようなアイデアをオンラインで共有できるツールはチームの円滑なコミュニケーションをするうえでとても重宝してます。
現代の技術で問題解決
今注目しているのは、5軸CNCや3Dプリンターです。複雑な形状や曲面の施工はいまだに施工者側の拒否反応が強く、過剰なコストアップや抵抗を受けることが多いのですが、5軸CNCや3Dプリンターの技術はそこを解決してくれる可能性があります。 過去に苦労して手がけたプロジェクトの造作なども今だったら5軸CNCでできたのに、と思うことがあります。
建築完成後もより良い関係を。
現場でのコミュニケーションの行き違いで困ったことは何度もあります。難易度の高い工事のときには、打ち合わせや施工図、制作図の承認に長い時間をかけてしまうこともしばしば。現場で変更や手直しをお願いすることもあります。
ただ、その原因は我々のミスのときもあれば、施工者側のミス、またはクライアント側の翻意、などの複合的な要因など様々です。人間だれでもミスや失念、翻意をする可能性があるなかで、監理者とはいえ、何でもかんでも頭ごなしに無理な指示をするようなことをしないようにしています。
関係者の都合や要望を聴いたり、察したうえで落とし所を見つけるようにしています。当初の設計どおりにいかなくてもコンセプトを守りつつ最適な解決策を見出すように心掛けています。上手くいかないときもありますが、完成したときには皆で苦労したけど良いものができたね、と言える関係をつくりたいと思っています。建築は完成後も付き合っていくものなので。
熱心な施主とは楽しさや失敗も共有する
熱心な施主には一緒に勉強するか、教えてもらうつもりで対応します。ちょっと話はずれるかもしれないですが、弊社のように建築資料集成に掲載されていないような、一般的に知られていない用途の建築や空間を手掛けていると、施主にその施設がどのように使われ、運用されているか、或いはどのようにしたいのかを教えていただくことから始まります。
必ずしも設計者は全てを知っている存在では無い、ということを知ってもらう必要があると思っています。与条件を統合していくのは我々の仕事ですが、施主と一緒に考えて共犯者のようになっていけば、作り上げていく楽しさを共有できますし、失敗すらも共有し、次に活かそうという気持ちになれます。
今までの経験を活かし、新しいことに挑戦する
これからは、こうした経験やスキルをこれまで僕があまり手掛けていなかった領域や分野に活かせたらと思っています。具体的には建築であれば教会の設計、土木であれば橋梁の設計などもやってみたいですし、映画のプロダクションデザインにも興味があります。