- 掲載:2025年03月21日 更新:2025年03月21日
肉のプロが厳選した最高に旨い肉を最高の空間で。すき焼き専門店「すきはな」誕生に至るまでの想い 株式会社ペッパーフードサービス 代表取締役社長CEO 一瀬 健作インタビュー

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1972年生まれ。静岡地盤でハンバーグ店を展開するさわやか株式会社を経て、1999年ペッパーフードサービス入社。ペッパーランチ運営部長やCFO、副社長などを歴任し、2022年8月から社長。
株式会社ペッパーフードサービス
東京都墨田区太平四丁目1番3号
オリナスタワー17F
03-3829-3210(代表)
お店に1歩足を踏み入れた際のびっくり感もお楽しみ

落ち着きのある和モダンテイストの店内
全席カウンターで、「羽釜」を中心にコの字型のカウンターとなっている。
長谷部 本日は、ペッパーフードサービスの一瀬社長に、昨年末、新規にオープンされた「すきはな」についてお話を伺って参りたいと思います。「すきはな」は今までと全く違う新しい形態のお店という事で、私たち「建材ナビ」のスタッフで早速お店に行って参りました。
一瀬社長
そうですか。それでは、店の内装やデザインのことなども気になられたのではないでしょうか。
長谷部 もう内装が素晴らしく、入り口から天井、壁、カウンターや座席なども思わず、触らずにはいられないくらい感動してしまいました。
一瀬社長
僕もデザインや素材を絵や写真でもらって見るよりも実際に店舗に行って物を見た時、お客様にこれをどうやって伝えられるか、いえ、伝えなければもったいないと思ったくらいです。壁に収められている手描きの春夏秋冬の物語、カウンターの素材や椅子の座面など、他には全くないものが使われていて……。
お店を作る時に、経営者とか会社側からの要望というのは、ざっくりとこんな感じというものがありますが、ただ、僕の中では、やはり要望が多すぎてしまうと、せっかくデザインをしてもらっているのに、こちら側の都合で壊してしまうこともよくあることだなという思いはありました。
コンセプトを聞いて、互いに理解納得することで、パートナーシップが生まれ、その上でお任せすることによって結果、良いものができるのではというのが今回の僕の感想です。自分の思っている形をイメージでは伝えるけれども、例えばイメージの中でカウンター仕様の25坪しかない店内で、私たちにあるオペレーション動線ラインというものを、デザインにどのように生かしてくれるかが重要です。
一瀬社長 今回、「すきはな」の離れの茶室のところは、そういうコンセプトで造ってもらいました。図面には、離れの茶室ということを書かれていたので、景色が頭の中で浮かぶようなイメージのコンセプトになっており、それをパースで見せてもらった時に松の絵が描かれていて、これはインバウンド寄りで大丈夫かなと思ったのですが、結果は素晴らしいものになりました。
また、ペッパーランチなどを運営してきた経験上、カウンターでのオペレーションに対するこだわりというのが非常にある中で、最初に丸みを帯びたカウンターが来たのですが、私の方で勝手に丸みがあると西洋チックになるので角を入れてほしいと要望しました。一般的にカウンターの店というと、丼屋さんなどのファストフード店的なイメージがあると思うのですが、僕のカウンターイメージは高級なお寿司屋さんで、そうすると角が丸いよりは真っすぐで角ばったイメージだったのですが。そうすると、どうしてもコーナー部分をどうするかという問題も出てきたりして、そこをどのように対処するかなどを、互いに意見を出し合い、しっかり話し合いながら決めて行きました。
長谷部 すき焼きを目の前で職人さんが、一膳ずつ提供するというところも高級なお寿司屋さんのイメージに近いですね。オープンキッチンにするという発想はどのようなプロセスで生まれたのでしょう。
一瀬社長
オープンキッチンとは仕込み作業を見せたいのではなく、フライパンなどの調理技術で、炎と温度感と演出感のためだと思います。そこで、カウンター集約型の当店においては、最初は全く見えないように作ってほしいと考えたのですが、厨房が狭いという事もあり、結果的にこちらの意見とプロの視点を合わせた今の形に収まりました。
「すきはな」が他と違うところは、お客様のカウンターで調理をするので、キッチンの中での調理がないというところです。普通ですと、キッチンの中で調理したものを「お待ちどう様です」となり、どうしてもお客様に背を向けて物を取りますね。食べる側のお客様にとっても、効率の良い望むべき動線ラインの仕上がりを具現化してもらいましたので、お料理以上にまずお客様が店に入った時の、びっくり感の演出が素晴らしいと思います。
お腹も心も満足する、お肉の一番美味しい食べ方は
黒毛和牛すき焼きセット 2,530円(税込)
和牛を使った最高の1枚とご飯、生卵、味噌汁、お新香、ミニソフトクリームがついた定食形式。野菜はあえて入れず、すき焼きに欠かせない「肉」「米」「卵」の3つのシンプルな具材に徹底的にこだわったメニューになっている。
長谷部 今までと違う形態のお店としての新ブランドが生まれたきっかけをお伺いしたいのですが。
一瀬社長
本来は、うちの主力ブランドである「いきなりステーキ」のリモデルをした新しいタイプの「いきなりステーキ」を、去年の3月ぐらいからプロジェクトをスタートさせ、もうパーツや内装のイメージとか出来上がっていて、あとは物件を探したいというところから物件を探す活動をしていました。
ただ、いきなりステーキをやるには物件の坪数等々が少し問題があるなというところから、そうだと、今考えている新しい業態の「すきはな」で、すき焼き業態をここでやったらどうかと言うことになりました。もともと「すきはな」は、すき焼きをやりたいというよりは、飲食事業をやっている企業として、新しいブランドを創作して行くことが絶対的に必要なことであるという指針の一環として生まれたものです。
今の時代は、ある一定のお値段は払っても価値あるものを価値ある価格で食べたいという世代の方なども増えてきています。ある時、僕が焼肉屋さんで食事した時にコースで食べたら「ザブトン1枚あぶり」というのが出てきたのです。これは美味しいなと、卵黄だけで食べて、ご飯も一緒に食べたいなと思った時に、あ、この「あぶり」というのがいいなと思いました。そこを切り出して一枚あぶりのお店にしてみようと思いつきましたが、ロースターを置いて焼くのであれば結果的に焼肉屋さんになってしまう。今までにない差別化を目指すのであれば、ここは日本古来からの和牛を美味しく食べるお店を展開するということに重点を置き、食べさせ方としては、すき焼きというのを切り出してブランド化し、飲食事業に形づくるというところからがスタートでした。
長谷部 お店がスタートするまでのいろいろなストーリーが見えてきました。次にこの「すきはな」の独創性と世界観について、社長とデザイナーの方々がお客様に伝えたいメッセージをお伺いしたいのですが。
一瀬社長 「すきはな」はまさに、「すき焼きとカウンター」というコンセプトで、この素敵なセットメニューを一膳でお客様に、お腹の満足と心の満足の両方を満たしていただきたいなと。お腹の満足という点では量的なものを好む方もいると思いますが、量ではなくて、味と質の満足が心の満足に繋がるところに帰結すればと願っています。なので、今、肉が2枚しかないなどとネットで言われていますが、あれを読んだときに「何を言っているんだ、2枚じゃないよ、大判1枚だよ」と反論しようかと思いましたね(笑)。
和牛を美味しく食べるために、お肉が一番美味しいと感じる1枚目を食べてもらいたいというのが野菜を置かない理由の一つです。でも、お肉とご飯だけでもの足りないという人には、2膳目をこだわりの卵かけご飯で堪能してもらい、さらに余韻を楽しんでいただくために、北海道よつ葉ソフトクリームをデザートとしてご用意してあります。
囲炉裏風の店内で、至福の原体験を
すきはな店舗入口
店舗は新橋駅徒歩1分の好立地。お店のコンセプトである「離れの茶室」のイメージにぴったりのファサードになっている。
長谷部 「すきはな」では、高級路線のカウンターのお店として、インテリアはもちろん、お皿などの小物から料理の提供スタイルまでトータルできめ細かくプロデュースされていらっしゃいますが、ここでお二人のデザイナーの方々からも、設計などの段階でのエピソードなどをお聞かせいただけますか。
岩崎 先ほど社長がおっしゃっていただいた話が殆どなのですが、今回はより深く理解し、関わって行けたことが、まさにデザイナー冥利に尽きるというところです。僕らデザインを起こす際に共感覚というか、ゴールがわかりやすいように世界観を作って、それを共有することによって、こういうデザインをして行こうねというのを最初にコンセプトシート内に書くのですが、そこに「和の原体験」という言葉を入れました。原体験というと実際は小さい頃に感じた、考え方を変えるような体験のことなのですが、それを内装と食事で和に対する新しい認識みたいなものを発見してもらいたいと、緑が溢れる和庭園の中の茶室で食事をすることで記憶に残るような空間を作ろうというストーリーを作らせてもらいました。
あと、ポイントとしては素材のところなのですが、カウンター正面の松の葉や、着物の生地とい草を使ったチェアですね。着物の生地も耐久性があり、デザイン性もあるというのがなかなか見つからず、サンプルも15点ぐらい取ってあれこれと検討した結果、満足の仕上がりになりました。ああいう囲炉裏風な客席で、畳に座って食べながら縁側のところには、和庭園が見えているような絵を想像していたので、それをチェアに落とし込んだというような形です。
1978 東京都目黒区生まれ
2001 東京理科大学 理工学部建築学科卒業
2001 デザイン設計事務所 株式会社テトラ
2012 株式会社東九商事
2020 フリーランス転向
2024 1440合同会社設立
1989 北海道函館市生まれ
2014 中央大学 経済学科国際経済学部卒業
2014 ITベンチャー企業設立
2018 株式会社engine入社
2024 1440合同会社設立
長谷部 山本さんは、ほかに、注目ポイントなどはありますか。
山本 設計の苦労した部分というのは結構ありました。元々は限られた家の中でゆったり感を持ちつつ、最高級感も保ちつつ、どういう風に見せるかという中で、羽釜がやはり結構中心にいると思うのですが、羽釜をあそこに置くにあたって法規上のいろいろな制限があり、防火法の関係で壁の設置が必要になりました。避難口から羽釜までの避難導線を5メーター以上確保してないといけないという消防のルールがあり、後から入り口に壁を建てることになったのですが、結果的にその壁があることで、より良い演出効果が生まれました。入り口にダイレクトにカウンターなので、多分冬は寒いんじゃないかなと思っていたので、機能的にもあってよかったと思っています。
一瀬社長 まさに、ピンチをチャンスにということですね。
僕が今回のデザインで最もお客様にアピールしたい点は、あのお店はどこの席も全て特別な1等席であり、外れの席が無いという事です。例えば、正面は松がある風景から見ていくと、やはりそこをメインステージとしてセンターの一番のところを楽しめる席になっています。逆に四季の部屋を見るとなるとこちらの席の方がより見やすい。それでは、こちらの反対側の席はというと、後ろが誰にも占領されないゆったり入れる空間になっています。
料理以外のことで見てもらいたいポイントが内装の終始にあるということは、もう私の中ではすごいポイントということだと思っております。
長谷部 本日は、ご多忙の中、一瀬社長とデザイナーの両氏から新規出店された「すきはな」の誕生にまつわる素敵なストーリーをお話しいただき、誠にありがとうございました。
取材
KENZAI-NAVI Media Planner 長谷部 沙織
食事も空間も、おもてなしを堪能できる店舗づくりには、並々ならぬ拘りから生まれていることを伺えました。趣のある入口からお皿などの小物までトータルプロデュースされた空間、厳選された食材の是非に至るエピソードなどもお話いただきました。
株式会社ペッパーフードサービス インタビュー&レポート
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一瀬 健作 | ichinose kensaku
1972年生まれ。静岡地盤でハンバーグ店を展開するさわやか株式会社を経て、1999年ペッパーフードサービス入社。ペッパーランチ運営部長やCFO、副社長などを歴任し、2022年8月から社長。
株式会社ペッパーフードサービス
東京都墨田区太平四丁目1番3号
オリナスタワー17F
03-3829-3210(代表)