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プロジェクトストーリー
  • 掲載:2025年01月09日 更新:2025年01月15日

美濃和紙の風合いをそのままに不燃化。『ザ ロイヤルパークホテル アイコニック 名古屋』で採用された不燃和紙壁紙
株式会社竹中工務店 ✕ 株式会社アサノ不燃

セルフネン不燃和紙
株式会社竹中工務店 ✕ 株式会社アサノ不燃
株式会社竹中工務店
株式会社竹中工務店
大阪本店設計部 スペースデザイン部門
インテリアグループ長
黒栁 亮
  • 1997 京都市立芸術大学美術学部
    環境デザイン学科卒業
    竹中工務店入社
  • 2022 リッチモンドホテル プレミア京都四条
  • 2024 ロイヤルパークホテルICONIC名古屋
  • 2024 スタジアムシティホテル長崎
東京本店設計部第5部門
インテリア1G
長谷川 裕馬
  • 2016 法政大学大学院
    デザイン工学研究科 建築学専攻卒業
    竹中工務店入社
  • 2021 歳吉屋-BYAKU Narai-
  • 2024 ロイヤルパークホテルICONIC名古屋
大阪本店設計部 スペースデザイン部門
インテリア1G
冨田茉 理奈
  • 2020 大阪市立大学大学院
    生活科学研究科 居住環境学コース卒業
    竹中工務店入社
  • 2024 ロイヤルパークホテルICONIC名古屋
大阪市中央区本町4-1-13
TEL:06-6252-1201
https://www.takenaka.co.jp/
株式会社アサノ不燃
株式会社セルフネン/
株式会社アサノ不燃
福井営業部 所属
相原 利治
東京都江東区東陽5-28-6 TSビル5F
TEL:03-6666-0315 / 福井オフィス 0776-68-0680
https://funen.jp/
ゴルフメーカー、自動車販売FC本部の勤務を経て、2021年8月、東京から福井へ移住を機に同社へ入社。2022年より、同社の建材ロス&端材活用プロジェクト=「たけくらべ製材所プロジェクト」を立ち上げ、不燃木材の営業に加えて、CSR活動も並行。
高い技術力と独創的なデザインで、国内外の数多くのプロジェクトを手掛ける日本を代表する建設会社である竹中工務店の黒栁氏、長谷川氏、冨田氏と、不燃性建材の提供に特化し防火性能を向上させる製品と技術を提供し続ける株式会社セルフネン/株式会社アサノ不燃の相原氏とのコラボレーションです。
名古屋の中心に位置し洗練されたデザインが特徴の高級ホテル「ザ ロイヤルパークホテル アイコニック 名古屋」の客室の美濃和紙を風合いをそのままに不燃するという難関に挑戦したストーリーを語っていただきました。


株式会社竹中工務店

「旅する、チュウブ。」がコンセプトの「ザ ロイヤルパークホテル アイコニック 名古屋」。客室の設計・施工で重視した点、こだわった点について教えてください。

単なる宿泊用途としてのホテルではなく、中部のものづくりの技術や文化・歴史を知る体験がホテルの価値となることを大切にし設計を行いました。それらを実現するために本物を使うことにこだわり、その中の1つとして、千田崇統さんの美濃和紙をプレミアム客室のデザインのポイントとしました。オリジナルの和紙をアートではなく、大きな壁面に内装材として使用することで、客室での特別な体験創出に寄与しています。

ザ ロイヤルパークホテル アイコニック 名古屋(愛知県・名古屋市)の客室内の壁紙を不燃化。国土交通大臣「不燃材料」として認定されている。

アサノ不燃様の「セルフネン不燃和紙」を採用に至った決め手について、重視したポイントや共感する価値などがありましたら教えてください。

日本文化の象徴である和紙をビル建築では使用しにくいという、根本的な問題である法規的な現実に対して、それを可能とする稀有な技術に感銘を受けて採用に至りました。また、千田崇統さんやWashi-naryさんが製作する素敵な美濃和紙の質感や色味を変化させることなく手すき和紙の風合いをそのままに不燃化できることが最大の決め手でした。不燃化された既製品の和紙は他社メーカーにもありますが、オリジナルの和紙を千田崇統さんに製作していただき内装に使用することと、美濃和紙の魅力をそのまま伝えられることがこのホテルだけの特別な宿泊体験に繋がると考えていました。

客室以外ではロビーの壁にWashi-naryさんの美濃和紙を不燃化し使用しています。お客様が必ず通るロビーの壁面に美濃和紙を使用することで、中部の技術を体感していただけます。

不燃和紙については他社の製品もご検討されましたか?

不燃認定が取れている既製品も探しましたが、美濃和紙にこだわり探すと選択肢がかなり少なく、また意匠的な面で満足いくものがありませんでした。美濃和紙は様々な職人さんにより製作されていますが、内装材としての利用は想定されていないため、アートとして利用することも並行で検討しながら、不燃化する方法を模索しました。

ベッドボード上部にあしらわれた不燃認定の和紙壁紙は、織田信長の最大領土である能登半島と中部エリアの地形をモチーフにしている。

「セルフネン不燃和紙」が導入されたことで、客室空間に与えた影響や、宿泊された人々に与えた印象はどのようなものでしたでしょうか?

千田崇統さんのオリジナルの和紙は、プレミアム客室に使用しています。ライティングされ、より和紙の質感を感じることができる目を引く壁とすることで、中部に興味を持つきっかけとなる大切な役割を担っています。


アサノ不燃様との出会いや共創についての感想をお聞かせください。

和紙を内装に使用できる方法を模索していたところ、ネットでアサノ不燃さんを知りました。その後は、サンプル作成も素早くご対応いただき、初めてサンプルを見た際には和紙の質感が全く変化していないことに驚きました。千田崇統さんやWashi-naryさんとの和紙の授受や作業所とのやり取りもスムーズにご対応いただき、大変満足な仕上がりとなる客室となりました。


株式会社アサノ不燃

今回、「ザ ロイヤルパークホテル アイコニック 名古屋」に採用された「セルフネン不燃和紙」について教えてください。

セルフネン不燃和紙の最大の強みであり特徴は、「極厚2・5㍉厚での不燃材料認定」と「後加工での不燃処理」だと考えています。 防炎和紙市場で流通しているその多くが、厚みが薄く不燃性能も「準不燃」です。 弊社の不燃処理技術により、それまでは困難であった厚みある和紙が「不燃材料」として施工可能になりました。

「極厚2・5㍉での不燃材料認定」は業界唯一であり、不燃和紙壁紙の意匠性を格段に引き上げたという点で画期的だと思います。 また、「後加工での不燃処理対応」が意味するのは、「オーダーメイド不燃和紙壁紙の実現」に他なりません。 従来は、カタログ等で予め定められたラインナップ(ある意味限られた既製品のなか)からしか選択の余地がありませんでしたが、弊社では、持ち込まれた和紙の不燃処理が可能です。「憧れの和紙作家の一点物の作品が、内装制限を気にせず施工できる」そんな時代になったのです。

このように、他社とは一線を画す不燃処理技術とノウハウによって、不燃和紙壁紙の意匠と素材のバリエーションは無限に広がったと言っても過言ではありません。

竹中工務店様で採用された「セルフネン不燃和紙」

施工について、竹中工務店様からどのような要望や条件がありましたか?

施工にあたっては次の2項目へのご要望がありました。

1.風合い・色目を損なわないこと。
2.運搬や施工性を損なわない仕上げ。



「セルフネン不燃和紙」の提案や施工時に、どのようなサポートやアドバイスを行いましたか?

「素材がバリバリに強張らないか」、「不自然なシワができないか」、「人工的な光沢感がでないか」、「色目が大きく変わらないか」…などです。

不燃処理による手漉き和紙本来の素材感の変化を、どのクライアント様も必ず懸念されます。 過度な不燃処理は風合いを損ねますし、風合いを重視しすぎるがあまり、不燃性能を落とすこともあってはなりません。この匙加減は非常にデリケートであるため、薬剤調合のシミュレーションには時間をかけますし、ご納得いただけるものに仕上がるまで、試作サンプルの確認作業は続きました。

おかげさまで、今回はタイトなスケジュールながらもトラブルなく納品に至りました。

「セルフネン不燃和紙」は、東京ミッドタウンのサントリー美術館の壁紙も不燃化している。

設計や施工段階で直面した課題や苦労された点などはございましたか?

作品自体が、不規則な形状の和紙パーツによる組み合わせで成り立つ意匠でしたので、パーツの取扱いと処理後の保管・管理には細心の注意を払いました。 おそらく、施工も大変だったのではないでしょうか。

「セルフネン不燃和紙」が「ザ ロイヤルパークホテル アイコニック 名古屋」に導入された経験は、今後の製品開発や技術向上にどのような影響を与えると思われますか?

今回のプロジェクトには、不燃処理する和紙の「形状とサイズ」に関わる挑戦がありました。 飛騨の山なみを想起させるような、「山脈」のシルエット、水墨画のような濃淡のグラデーション、しっかりとした凹凸がある素材感とスケールの大きさなどです。長方形・一枚ものの手漉き和紙の不燃処理が常だった弊社にとって、この経験は大きな自信に繋がりました。

弊社の強みである「性能」「認定」「品質」に加え、「意匠の自由度」が新たに加わりました。 今後、多くの和紙作家の皆様の作品が「不燃」という障壁を乗り越えて、採用されることに期待しています。

竹中工務店様とのプロジェクトはいかがでしたか?

我々にとって挑戦的な一歩を踏み出せた不燃化プロジェクトであり、建材の枠組みを越え、和紙業界にも大きな可能性と影響を今後与えうる魅力的なプロジェクトだったと思います。これを機に「不燃ソリューション」を共に進められることを願っております。

アサノ不燃様の今後の展開、または将来の展望などをお聞かせください。

セルロース不燃化のパイオニアとして、近年は木材よりも不燃和紙が注目を集めておりますが、次世代の不燃素材は、不燃木粉で出来た不燃塗り壁材「セルフネン木ぬり壁」です。

不燃木材の木工時に生まれる木の粉を塗り壁材にすることで、持続可能な循環型の不燃木材製造の仕組みを実現しますので、「セルフネン木ぬり壁」にご注目いただきたいと思います。






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