- 掲載:2024年07月04日 更新:2024年07月09日
//= $nameTitle ?>【シリーズ座談会 後編】都市建築において目指すもの、それは「木材の復権」
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東京木材問屋協同組合
木材業者を支援するため、供給調整、品質管理、販売促進、環境保全、技術研修や、持続可能な森林資源の利用を推進し、環境保全に取り組んでいます。
東京木材問屋協同組合
東京都江東区新木場1-18-8
木材会館
03-5534-3111
2006年より5期の理事を歴任。2016年より常務理事に就任し、4期8年目。
木材の復権に大切な要素は、ユーザーの意識改革
秋葉 問屋組合さんが「木材会館」の周知のため独自で取り組まれている活動などはありますか。
岡田常務理事
この木材会館は、木材利用促進、木材需要拡大の先駆けとなるよう建てられ、造り方はもちろんですが、14年経った最近では、メンテナンスについての問い合わせも多くいただいたりします。そのため、創立111周年時、NHKエンタープライズさんに依頼し、木材の歴史や木場界隈の文化の変遷などをまとめた広報映像を作成しました。それを年々ブラッシュアップして新しい内容を加える他、木材会館のPRにも力を入れています。
昨年は東京メトロ全線の電車内の東京メトロビジョンに木材業界の仕事を知ってもらうための業界PR動画を反復放映しました。このタイトルが「だから木材業界は面白い!」ということで、組合員の事業所で働く101人の従業員にインタビューをした映像です。人材確保の意味もありますが、木材の魅力や木もく力りょくを知ってもらうために、問屋組合が業界PRの一環として行いました。JR新木場駅の構内には、問屋組合が監修したスギ、ヒノキなどの内装木材や産地等を記載した柱が掲示されており、見ていただけますよ。
庄司理事長
木材の良さといえば、以前面白いエピソードがありました。ある時、女性の方がハイヒールで直接木の床を歩いたので、凹みができてしまったのですが、水を少し垂らしておいただけで、何日かするときれいに元通りになっていました。こういうところが木の魅力ですよね。スギやヒノキなど、木によって全然違う香りを持ち、木肌の模様もそれぞれ違う趣きがあり、やはり木には自然のものならではの良さがありますね。
岡田常務理事
天然の無垢材は、無害なので虫が死なないですからね。クモなんか入ってきたらずっと居ますから(笑)。だから私が家を建てたときに内装にクロスを一切使わず、全部無垢の木で作りました。一階がヒノキで二階がスギ、三階が米杉で、床も壁も天井まで全て無垢材です。
庄司理事長
その反面、木の中でもショウノウやクスノキなどの香りの強い木は虫を殺すというか寄せ付けないものもあり、そういう意味では木は色々な用途や効用もあります。
秋葉 問屋組合さんが「木材会館」の周知のため独自で取り組まれている活動などはありますか。
岡田常務理事 そうですね、だから良い面も悪い面も含めて木の味わいなのだとも言えます。 でも無垢は乾燥させなければいけなかったり、縮んだり、増えたりするわけだから、扱いが非常に難しい、そこで加工建材が出てきたわけです
本西常務理事 使う方たちが割れたり、反ったりするのが、それが自然のものだからという感覚で受け入れれば使えるのでしょうが、やはりどうしても工業製品のように完璧なものを求めようとすると、無垢が難しくなり加工建材を選ぶということになりますね。
岡田常務理事 そこに農林規格(JAS)と工業規格(JIS)の違いなのですが、JASはどうしても農林規格だから選別の基準が緩やかですが、JIS の基準は厳しい。やはり建材メーカーさんはJIS 規格を取りたいので、どうしても無垢より加工建材に走ってしまいますよね。
あとは昔と比べ、今は大工さんの腕が違います。昔の大工さんというのは垂木は曲がっている方向を全部外にしたので、年数が経つと自然に納まってきて綺麗になる。ところが今の大工さんはそうではなくて、手に掴むとどちらが木裏か木表かも見ずにそのまま使ってしまうので、後々不具合が出てきてしまいます。
本来の木材の良さを理解して使ってもらえれば、例えば法隆寺とか正倉院だとか、何百年という長い年月にも耐える立派な建物が沢山あります。そうやって使ってもらうのが日本の文化なので、我々問屋組合としては難しいですがそれを残さないといけないと思って、いろいろな活動をしているわけです。
本西常務理事 今、マンションを購入時にユーザーご自身が、自分で無垢材を新木場に選びに来る方がいます。いろいろディスカッションした上で樹種を選び、新築の際に無垢材を支給して入居時には全部無垢のフローリングに仕上げたというユーザーさんも増えており、こういうニーズもあるのだと知りました。
岡田常務理事 建材メーカーさんには、無垢の良さをわかった上で、材木問屋から仕入れ、そして販売していただくと非常にありがたいですね。材木問屋はマーケットを持っていないので流通という点では弱いし、一般消費者を相手にしているわけでもないですから、売り方も買い方も下手なんですよね(笑)。
だから我々問屋組合のようなバックボーンがあるところが動いてあげて、一番お金がかかる広報や研究、実験なども個々の会社に代わって行っているわけです。中々目に見える効果が出てこず、難しいのですが地道にやり続けて120 年です(笑)。
これからは建材メーカーさんにも、ぜひ無垢の啓蒙運動に一緒に乗っていただきたいところです。
本西常務理事 時々、建材メーカーさんが無垢材を使った開発試作品を持ってくることがあります。 こういうものを企画しているのですがと持って来てくれた試作品を使ってみるのですが、とても売れそうにないもので……(笑) 。
岡田常務理事 それは結局、木材のデメリットばかりが強調されてしまい、良いところが生かされていないからだと思います。確かに木材には、燃えたり、縮んだり、曲がったりというデメリットもありますが、健康に良いなど他の建材にはないメリットが沢山あるのでそちらに着目した見地から市場を刺激していただきたいですね。
本西常務理事 無垢材のそういうメリットを意識した方々がフローリング用などの無垢材を自分で探しに来てくれることもあります。その際に無垢とはこういうデメリットもありますよと、説明して、それでもやはり無垢が好きだというお客様にしか売らないという販売スタイルが良いと思いますが、建材メーカーさんにとっては、なかなか難しいのかもしれません。無垢のプローリングは、シート物と比べると10倍近いコストがかかりますからね。
岡田常務理事 我々も、需要を喚起するという意味で無垢材の本当の価値を分かってくれるユーザーさんに直接アピールするしかないかもしれません。
木材のプロとして取り組む無垢材への啓蒙活動
秋葉 一般ユーザーさんの意識改革にはこのように取り組もうというプランなどはお持ちですか。
本西常務理事
特に今、小学校や老人ホームといった公共施設の内装材に無垢の材料が使われ始めていますので、それに接している子どもさん達が大きくなった時に模造品ではない本物がいいねという意識改革が行われているような気がしています。
先日、ある大手建設企業の研修センターの見学に行ったのですが、至るところに無垢材が使われており、また後日、大手設計企業さんに取材した際にも、これからのトレンドは無垢材になるでしょうというお話をいただきました。ですから、これからは無垢が見直されていくチャンスが来たなと思っています。その時に我々の業界が残っていないと供給することができなくなるので、頑張らなければ……(笑)。
岡田常務理事
ところで、十月の八日と書いて「木」の日になるのに因み、毎年10月には「木の日」の祭りをやっています。今は都立木場公園でやっており、今年の10月で4年ぶりの第40回の開催になります。そこでは無垢材を使った玩具作りや、木工教室などを開き、子どもさん達に木とふれあい親しんでもらって、将来のユーザーになってもらおうと……(笑)。
庄司理事長
そういう意味で「木育」といいますか、小さいころから木に接してもらって木の良さを知ってもらいたいです。
昔は積み木と言えば木製でしたが、今はプラスティックの積み木ですよね。口に入れたり、かじったりすると化学物質による悪影響が心配ですが、木の積み木や玩具ならそんな心配も要らないので、どんどん使ってもらいたいですね。
我々は木材のプロであり、木の良さを知り尽くしている立場から、これからもさらに木の需要を喚起し、普及やPRに力を注ぐことが重要だと思っています。
本西常務理事
木の普及や保護に関連していいますと、今日本の森林はどこも伐採期が来ており、木があるから森林が二酸化炭素を吸収するというのは、成長期の木の話であり、成熟期では光合成量も減りCO2の吸収率が落ちていきます。早く伐採して新たに植樹をしないと持続可能な自然環境が途絶えてしまいます。
職人さんもどうしても高齢化して不足しているのが本当に問題なので難しいのですが、製品メーカーさんにも頑張っていただき、もっと国産木の製品化を進めてもらえばいいのかなという気もします。
秋葉 最近は林業に従事する方が極端に減少していると聞きますが、国産材の製品化には大きな影響がありますか?。
庄司理事長 労働災害が一番多いのがやはり林業のようで、危険な作業のため人材不足となり伐採がなかなか進まないという現実があります。
岡田常務理事 解決するのは、おそらく林業ロボットですよ。 日本の山は海外の山と比べて急峻だから人間には無理なので、ロボットの開発が始まっています。
庄司理事長 最近、政府の方でも花粉の少ない森づくりなどを進めており、今の杉を全部使って、花粉が少ない木を植えようと、そういう運動もしています。
岡田常務理事 木材の総需要が増えないと、それは実現しない問題ですから、どうしても総需要を喚起するためには、建材メーカーさんも木材を使うことに取り組み、マーケットを開拓していただきたいですね。これは日本の国土の問題ですから……。
庄司理事長 木の良さを表現している、本物の木を使っている、そういう製品を開発して頂けたらと思います。
井内理事 木の良さを知ってもらうために、インターネットを駆使して情報を拡散したり、PR誌などの発行といった種まきを積極的に行うことも必要ですね。
庄司理事長 何年か先にもっと良いアイデアが蓄積してきたら第二、第三の木材会館をつくるというプランを持っています。新木場にできるのが理想ですね。
本西常務理事 木材のいろいろな使い方が提案できるような実験棟などを作り、一般の方にもPRしてマーケットを創出して行くことが目標です。
岡田常務理事 とにかく問屋組合はこれからもチャレンジし続けます。そのうち多摩産材の展示場が出来ているかもしれません。どうやって実現するか、いろいろハードルはありますが、我々は試行錯誤を重ね、実現に向けて今はもうチャレンジの段階に入っていますよ。
秋葉 前編、後編に渡りお話を伺い、問屋組合の皆さまの木材の復権へ賭ける熱い思いを感じ取ることができました。皆様の今後のチャレンジに私たちも協力やお手伝いができればと思います。
有難うございました。
親子で楽しめる “ 木のお祭り”「木と暮しのふれあい展」
木材業界では、「木」の字を十と八に分けられることから10 月8 日を「木の日」としている。木の日を迎えるにあたり、木とのふれあいを通じて「木のぬくもり・やわらかさ」や「森の大切さ」を知ってもらい、身近な暮らしの中で木を使っていただく事を目的に、毎年10 月に「木と暮しのふれあい展」を開催。 2023 年は、新型コロナウイルス感染症の影響で4年ぶりの開催となったが、来場者数は約3 万人と大変な賑わいを見せたという。本イベントでは、木工教室や樹種当てクイズのほかにキャラクターショー等、親子で楽しめる展示や催しが行われた。
各団体のブースで行われた木工教室の中には、キットを使って作る木工のほか本格的な棚なども作製できるブースがあり、多くの方が挑戦していた。
~取材後記~
前編に引き続き、後編も座談会形式でお話を伺いました。皆さまにも是非木材会館に足を運んでいただき、木材のプロとして木材の普及やPRにチャレンジし続ける協会の活動にご注目いただきたいと思います。
取材:秋葉 早紀 建材ナビ広報担当
【シリーズ座談会】東京木材問屋協同組合
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東京木材問屋協同組合
木材業者を支援するため、供給調整、品質管理、販売促進、環境保全、技術研修や、持続可能な森林資源の利用を推進し、環境保全に取り組んでいます。
東京木材問屋協同組合
東京都江東区新木場1-18-8
木材会館
03-5534-3111
2006年より5期の理事を歴任。2016年より常務理事に就任し、4期8年目。