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掲載:2025年04月04日更新:2025年04月07日

積水ハウスの「循環する家」。2050年に向けたサーキュラーエコノミーの実現

現代の住宅業界では、環境負荷の軽減と持続可能な住まいづくりが重要視されています。積水ハウスはこの課題に対応し、「循環する家(House to House)」というコンセプトのもと、建材のリサイクルやエネルギーの自給自足を通じたサステナブルな住宅開発を発表しました。

本記事では、積水ハウスが2050年に向けて推進する「循環する家」のコンセプトと、実現に向けた取り組みを解説します。建材のリサイクル・住宅の長寿命化・ゼロエミッションシステムの導入などを通じ、サーキュラーエコノミーの理念がどのように具体化され、建築業界に影響するのかを見ていきましょう。

1.2050年に向けた積水ハウスの「循環する家」宣言

積水ハウスの「循環する家」|2050年に向けたサーキュラーエコノミーの実現
積水ハウスは、2050年までを目標に、環境宣言の一環として「循環する家」を目指します。建築時や解体時に発生する部材を次世代の住宅に再利用することで、廃棄物の大幅な削減と資源の有効活用を実現するプロジェクトです。
この活動により、環境負荷を減らしながら、持続可能な社会の実現に向けた新しい住宅モデルが確立すると期待されています。


2.積水ハウスが実現する循環型住宅|サーキュラーエコノミーの推進

積水ハウスの「循環する家」|2050年に向けたサーキュラーエコノミーの実現
ハウスメーカー特有の大量生産・大量廃棄の仕組みを変えるため、積水ハウスはサーキュラーエコノミー(循環型経済)の理念を取り入れた住宅建築を進めています。住宅1棟に使用される部材は3万点以上にのぼりますが、積水ハウスでは、それらをできる限り無駄にせず、再利用・リサイクルする取り組みを進めています。

サーキュラーエコノミーとは?

サーキュラーエコノミーとは、製品や資源の価値を維持・回復し、循環的に利用する経済システムです。設計段階から修理、再利用、リサイクルに至る一連のプロセスを通じ、天然資源の使用量を抑えるとともに、廃棄物の発生を最小限にする仕組みが特徴です。積水ハウスはこの理念を住宅建築に落とし込み、環境に優しい循環型モデルの実現に挑戦しています。

参考:循環経済への移行 (環境省)



3.サーキュラーエコノミーへの移行に向けた取り組み

積水ハウスの「循環する家」|2050年に向けたサーキュラーエコノミーの実現
積水ハウスの「House to House」プロジェクトは、解体された住宅の建材を再利用し、新しい住宅へとつなぐ取り組みです。全国に設置された資源循環センターでは、建築現場で発生する廃材を細かく分別・再加工し、リサイクル率の向上を図っています。

例えば、建築現場で発生する廃材は、多い場合で80種類に分別され、水平リサイクル(同じ用途での再利用)やクローズドループリサイクル(製品を循環的に再生する仕組み)を活用することで、環境負荷の低減と資源の有効活用を両立しています。2050年を目標に、新たな資源採掘を抑えつつ、建築資材としての価値を最大限に引き出す取り組みがスタートしました。

具体的な取り組みとして、以下の3つを紹介します。

①住宅部材と原材料の循環利用

従来は廃棄されていた木材、鉄鋼、コンクリートなどの住宅部材が、最新の技術によって再生・再加工される仕組みを構築しています。これにより、新規資源の採掘を抑制し、既存資材の価値を最大限に引き出す持続可能な社会を目指します。

②住宅の長寿命化

耐久性を重視した設計と、定期的なメンテナンスを前提とした構造設計により、住宅の長寿命化が実現できます。部材の互換性を考慮した設計は、将来的なリフォームや改修を容易にし、住宅資産としての価値を持続させるための鍵と言えるでしょう。

③自然資本の持続可能な利用

再利用可能な建材の活用は、天然資源の採掘負荷を軽減するだけでなく、森林資源や鉱物資源の保護にもつながります。循環型住宅の普及で、環境負荷の低減とともに、地域社会における自然資本の持続的利用を促進します。


4.ゼロエミッションシステムによる資源の最大活用

積水ハウスの「循環する家」|2050年に向けたサーキュラーエコノミーの実現

積水ハウスは、建設現場で発生する温室効果ガスの排出を限界まで抑えるべく、ゼロエミッションシステムの導入をスタートしました。エネルギー効率の向上と再生可能エネルギーの活用により、環境に優しい住宅建設の実現を目指しています。

資源循環センターの役割

全国20カ所に展開する資源循環センターは、建築現場から出る廃棄物を、最新技術で分別・再資源化するために設置されました。分別された再利用可能な建材が次世代の住宅へと供給される仕組みが確立され、持続可能な資源循環が実現しています。

廃棄物実測システムの導入

各現場に設置された廃棄物実測システムで、排出される廃棄物の種類と量をリアルタイムに把握が可能です。データに基づく管理体制の整備により、廃棄物削減の進捗を数値で確認し、効率的なリサイクルプロセスの構築が進められています。



5.建築業界への影響

積水ハウスの「循環する家」|2050年に向けたサーキュラーエコノミーの実現

積水ハウスの「循環する家」の取り組みは、すでに建築業界全体に影響を与え始めています。新たな資源活用の基準が確立されつつあり、住宅の長寿命化やリフォーム市場の拡大が進行中です。また、業界の仕組みや家づくりの考え方にも変化が生まれており、今後どのように広がっていくのかを見ていきましょう。

建築資材のリサイクルと新基準の確立

従来のスクラップ&ビルド型の住宅建設では、使用済みの建材が廃棄され、新たな資源の投入が常態化していました。しかし、建築資材のリサイクルを推進することで、以下のような効果が期待されます。

資源の有効活用と廃棄物削減
使用済み建材の再利用により、新規資源の採掘や製造が抑制され、廃棄物が大幅に削減

環境負荷の低減
再利用によりエネルギー消費や二酸化炭素排出が減少し、環境への影響が軽減

建築プロセスの効率化と品質向上
リサイクル技術の革新が、建築工程全体の効率化とともに、より高品質な住宅建設への新たな業界基準の確立

住宅の長寿命化とメンテナンス市場の拡大

「循環する家」の基本は、住宅を長く使い続けることにあります。この結果、家の価値を保つだけでなく、リフォームやメンテナンスの市場が広がり、住宅関連のビジネスにも影響があり、具体的に以下のような変化が起きています。

耐久性の高い設計の普及
長期間住み続けられるよう、耐震性や断熱性が向上した住宅が増加しており、新築よりも改修やリノベーションが重視される傾向にあります。

メンテナンス需要の増加
住宅を長持ちさせるために、定期的な点検や修繕を行う家庭が増え、修繕サービスや住宅診断の市場が拡大し、メンテナンス業界の成長につながっています。

リフォーム・リノベーション市場の活性化
使い続けることを前提とした家づくりが進む中で、内装のリフォームや設備のアップグレードが一般的になり、新築需要の一部がリフォーム市場へシフトしています。

地域の建築業者・職人の仕事が増加
リフォームやメンテナンスの需要が増えることで、地域の建設会社や職人の仕事が増え、地元経済の活性化にもつながっています。

スマートメンテナンス技術の導入
IoTセンサーを活用し、住宅の状態をリアルタイムで管理するシステムが拡大傾向にあり、異常が発生する前に修理の手配ができるなど、より効率的な維持管理が可能になっています。



まとめ:新たな住宅の標準へ

積水ハウスの「循環する家」|2050年に向けたサーキュラーエコノミーの実現

積水ハウスの「循環する家」は、使い終わった建材を再利用することで、従来のスクラップ&ビルド型から大きく転換し、環境負担を大幅に軽減する新たな住宅建設モデルです。建材リサイクルや住宅の長寿命化を通じて、資源の無駄を削減し、住宅自体の価値を維持・向上させる効果が始まっています。

環境に優しいだけでなく、経済的にも効率の良い住宅建設が実現され、2050年に向けた持続可能な社会の構築に大きく貢献することが期待されます。将来的には、この取り組みが新たな住宅の標準となり、建築業界にとって大きな一歩となるでしょう。





著者(長谷川裕美)プロフィール

建築・インテリアの専門学校卒業後、設計事務所や住宅メーカーに勤務。
現在は建築関連のライターとして活動中。
常に変化する建築業界の話題を丁寧にお届けします。






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