建材情報まとめサイトすまいリング
ARCHITECT
建築家インタビュー
  • 掲載:2010年09月06日 更新:2024年08月07日

良い意味期待を裏切る予想以上の空間を提供できるかどうか

海辺の家
廣部 剛司
株式会社 廣部剛司建築研究所
廣部 剛司(HIROBE TAKESHI)
〒213-0004
神奈川県川崎市高津区諏訪1-13-2
TEL:044-833-9798
<経歴>
1968年 神奈川県出身
1991年 日本大学 理工学部 海洋建築工学科 卒業
1991~98年 芦原建築設計研究所
1998年 建築を巡る8ヶ月の旅
1999年 廣部剛司建築設計室 設立
2009年 株式会社 廣部剛司建築研究所に改組
<現在>
日本大学理工学部 海洋建築工学科 非常勤講師
日本建築家協会 登録建築家
<著書>
『サイドウェイ 建築への旅』(TOTO出版)


~取材にあたり~

10年ほど前のハリウッド映画に「海辺の家」(原題・Life as a House) という作品があります。余命が無いことを知ったひとりの建築家が、最後の力を振り絞り、海辺の家を建て直すことで失われた家族の絆を取り戻すというストーリーでした。「海辺に建つ家」はいつの世も多くの人々の憧憬の的として、それぞれの心の奥底に秘められているような気がします。

今回のシーズンインタビューでは、そんな憧れの「海辺の家」を非常に難易度の高い建築構造といわれるシェル構造で見事に完成させてしまった熱血建築家、廣部剛司氏にお話を伺ってまいりました。



住宅 上野毛T

――施工画像


――デザイン・コンセプト

写真の実例は『上野毛T』での使用例です。中庭との間に建具が出てくるのですが、レールを見せない納まりにしていることもあって、内外の境界線が分からなくなっています。

――建材の感想

まるでもともとそこには建具がなかったかのように、内外を一体化させたい空間でよく採用しています。ある程度の気密性を保ちながら、その建築の納まりにあった方法を提案してくれるので、設計中から採用する場所についてのディテール打合をお願いしています。
それによって生まれる空間の不思議な開放感は、逆説的ですが建具がしまい込まれてその姿が「見えなくなってしまったとき」に真価を発揮します。




興味が持てた・非常に面白かった・やりがいがあったなどと思われた案件はありますか?

木造シェル構造に挑戦した『海辺の家』は非常にチャレンジングなプロジェクトでした。海岸線から10mも離れていない立地にポンと貝殻を置いたような週末住宅を設計したものです。

これは、文字通りシェル構造という貝殻と同じような力の流れになるよう構造解析をし、木材でつくれる形に抽象化しながら設計していったものです。設計の難易度と共に施工上も高度な技術が必要とされる建築でした。関係した方々すべての力が集積して出来た空間です。




設計士・デザイナーとして建築に携わられて、仕事にやりがいや喜びを感じられるのは、どんな時でしょうか?

やはり、設計を依頼して下さるクライアントはある程度の完成イメージを持っておられることが多いと思います。
それをそのまま、ではなくて、良い意味期待を裏切る、そして予想以上の空間を提供できるかどうか?ということを常に課しています。だから、基本デザインから設計が進み、完成に至るまできちんと階段を上るように積み上げられた仕事すべてに対して、建築家としての喜びを感じています。




将来的に、こんな仕事を手掛けてみたいというご希望はございますか?

個人的には楽器を演奏したり、コンサートに出掛けたりと音楽にずっと興味を持ち続けていますので、いつかコンサートホールやライブハウスなど音楽と共にある空間のデザインをしてみたいと思っています。東京芸術劇場などコンサートホールを手掛けられていた芦原義信先生の事務所で修行を積んだのも、それが一つのきっかけとなっていました。また、そんなこともあり普段から「建築」を「音楽」としてとらえるということを実践しています。
これは、音楽に時間軸があるように空間の繋がり(シークエンス)のなかで人が体験することを作曲のように組み上げていくこと。光や風の動きをその場所にいながらにして変化していくものとして捉えること。素材を和声の響きのように組み上げていくこと、です。これらを意識してつくっていく空間には、独特の響きが生まれているように感じます。

現在は住宅の依頼が多いですが、この手法で美術館や商業施設など誰もが訪れることの出来る空間をつくってみたいという気持ちは常にあります。






SHARE


RELATED ARTICLE

ジャパンホームショー&ビルディングショー
アクセスランキング(ARCHITECT)
moca design office 岡本 大
魅力的な空間や街とプラスの未来をどうつくっていくかを考えた先に社会貢献がある。
MIRAICRAFT
子どもの建築との関わりは、子どもの豊かな育ちに関係する
竹本卓也建築研究所 (Takuya Takemoto Architects)
コンセプトの普遍性をより重視して設計する
上西徹建築設計事務所
景観を切り取ることで、敷地そのものが持つ魅⼒を⽣活に取り⼊れる
IGArchitects一級建築士事務所
持ち主が変わっても空間の持つ魅力を損なわない。そういう建築をつくりたいと思っています。
SumaiRing最新記事
SPECIAL
東 環境・建築研究所 / 代表取締役 東 利恵|すまいリング(Special Interview)
高層ビルが建ち並ぶ 大都会に佇む 「塔の日本旅館」
STORY
豊泉家(SCM株式会社)×大和金属工業株式会社
ヨーロッパスタイルのアイアン門扉が 「確かなセキュリティ」を提供
ARCHITECT
株式会社 studio acca
hotel norm. air
MANUFACTURER
SANEI株式会社
感性に心地よく訴える「水栓」製品をご提供
COLUMN
内装材選び方【床材】 選定ポイントとオススメメーカーを紹介
ARCHITECT
建築家インタビュー
シーズン毎で取材させて頂いている建築家へのインタビュー記事です。2007年秋にスタートして四半期毎に新しい記事の更新をしています。住宅、集合住宅、商業施設、公共施設など建築家の体験談をお楽しみください。