- 掲載:2010年12月30日 更新:2024年08月07日
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東京都大田区東糀谷 2-1-12 SILVER WAVE-2_301
1961年 東京都出身
1984年 東京理科大学工学部建築学科 卒業
1988年 一級建築士資格取得
1992年 株式会社ソキウス 代表
2002年 SOCIUS一級建築士事務所 管理建築士
<職歴>
建設会社現場監理
設計事務所勤務
1992年~2010年 株式会社ソキウス/SOCIUS一級建築士事務所
ソキウス「SOCIUS」とは ラテン語で“仲間・相棒”の意味。
~取材にあたり~
新しい年を迎え、そろそろ住まいの購入やリニューアルを計画していらっしゃる方々も多いことでしょう。国交省が行う昨今の「住環境総合調査」では、5年前、10年前に比べると人々の住環境への満足度はかなり高まっているとのこと。
これは、やはり住まいに関するプロフェッショナルのたゆまぬ努力が実を結んだ結果といえるかもしれません。
反面、省エネ対策やバリアフリー対策については60%の居住者がまだまだ不満を抱いているそうで、今後ともこのあたりに需要の見込みが引き続き高いことが想定されます。
今回のスペースデザインでは、制約の多い「都市生活に対応した豊かな住まいづくり」の実現を目指し、造形美としての機能性とシンプルさで良好な住環境を追求する建築家、岩間隆司氏にお話を伺います。
機能的なものこそ美しい(Le Corbusier ル・コルビジェ)
これまで都市生活に対応した住宅を実現させてまいりました。
制約があるなかでの住宅の計画は おのずと機能的でシンプルな造形の構成となっていきます。
それは 普遍的な住まいの美しさを追求しているようでもあります。
厳しい敷地条件などでの、都市型集合住宅の計画もおこないます。
事業性の追求は、良好な住環境の構築と同じ方向にあるはずです。
*Le Corbusier ル・コルビジェ
(1887-1965 フランスを拠点に活躍。モダニズム建築の提唱者として、近代建築の基礎を創設した巨匠に位置づけられている)
敷地の視点から生活のあり方を考える。
市街地での住宅は、自然につつまれた郊外での住宅にくらべると生活環境として劣る、と考えられがちですが、私は、ちょっとちがった見方をしています。
たしかに郊外の住宅の計画では、建物が密集した市街地にくらべれば採光や風通しが得やすい。
しかし、市街地ではどんな町でも街灯は一晩中ともり、コンビニまでサンダルで行ける利便性をもちあわせています。目の前の広大な自然はなくとも、木々に触れ合える公園も意外と多い。
市街地での住宅と郊外での住宅。
どちらの生活環境が優れているのかではなく、それぞれでの生活スタイルが違うということ。そこは、ちゃんと意識しないといけないと考えています。
狭小住宅ではない。コンパクトな生活空間。
市街地の小さな敷地での住宅がよく『狭小住宅』とよばれます。
私もよくこの『狭小住宅』という言葉を使いますが、本音では好きな言葉ではありません。物理的な建築家の計画テクニックの部分ばかりが強調されている言葉だな、と感じています。
住宅は、そこで住み手の方々が生活を営まれ、はじめて『住まい』となります。その住まいの豊かさとは、必ずしも住宅の広さには比例しないはずです。
むしろ、コンパクトにまとめあげられていてこそ成り立つ生活の豊かさもあると思います。
そんな、住まいとしてのソフトの面も含めた意味の呼称はないものでしょうか‥。
機能や事業性の追求こそ、デザインの原点。
事業を基本とした都市型集合住宅の計画も行なってきました。厳しい法規制やコストのうえでの計画では、必然的に造形はシンプルで説得力のあるものになり、個性やデザインとしてのクオリティーが高まる‥。というのが、私の実感です。
デザインとは、事業性やコストコントロールと対峙するものではく、むしろ同じ方向を見ているものなのだ、ということですね。
私がル・コルビジェの言葉『機能的なものこそ美しい』をよく引用するところがここです。
いつかこんな仕事を‥。
よく、多くの皆さんに 意外!といわれるのですが‥。
木造住宅 ‥それも木の温もりを存分に感じる住宅をつくってみたい。
郊外で、光や風、自然に触れ合える住宅を実現させる、ということですね。こんどは…。
~取材後記~
都心に住む私にとっては、郊外を訪れた時によく見かける大きな敷地にゆったりと建つ家々よりもむしろ、小さいけれど様々な工夫が成された建物に魅力を感じる部分が多くあります。
無駄を削ぎ落とした究極のデザイン性と機能性に洗練された現代建築技術が凝縮されているからでしょうか。造形的に見ても確かに、美しさは、大きさに比例するものではありません。
住む人の価値観によって選ばれる最大の買い物である「マイホーム」が、多種多様なニーズに対応してくれる、岩間先生のようなプロフェッショナルの技術や工夫によって、多くの選択肢が用意されるようになったことは、私たちにとって喜ばしいことであり、建築技術の進歩という時代的背景の恩恵ともいえそうです。
取材・文 建材ナビディレクター 中島