- 掲載:2011年10月06日 更新:2024年07月26日
//= $nameTitle ?>時にはLOSEしたことすら気づかない設計
1977年 神戸市生まれ
1996年 兵庫県立神戸高等学校卒業
2001年 京都工芸繊維大学工芸学部造形工学科卒業
2003年 京都工芸繊維大学大学院修士課程修了(岸和郎研究室)
2003-6年 古市徹雄都市建築研究所
2006-7年 TY アーキテクツ
2007年 佐久間悠建築設計事務所主宰
『フクザツケイケンチク+力』
「フクザツケイケンチク+ カ」とは、法的な複雑な建物を手がける自身のことを表すために私がつくった造語です。
「フクザツケイケンチク」は文字通り複雑な建築物のことを意味していますが、「+ カ」は「建築家」の「家(カ)」と、「力(チカラ)」の両方の意味を表しています。法的に「フクザツ」な「ケンチク」に、なんらかの力添えができればという思いをこめました。ですが、法規の知識だけで言えば、私は役所や審査機関の担当者の方には全くかないません。
プロジェクトを円滑に進めるチカラ
では、私が得意な事とは何かというと、法的に複雑な建物、違法な建物を、誰が見ても適法な形で完工まで持っていくことです。
お客様が本当に求められているのは法規の知識や現場での経験などではないと思います。要は適法な形で物件がオープンを迎えられれば良いわけで、設計者の知識や経験はプロジェクトをスムーズに進めるための一助にはなりますが、それに秀でた設計者だからといってプロジェクトを円滑に進められるかといえばそうではありません。
それらをバランスよく判断し、コスト、工期等の効率をあげられるかどうかが重要なのではないかと思います。
法的に複雑な建築に挑む日々
私は古市徹雄都市建築研究所で、大型の公共物件から個人の住宅の設計まで経験させて頂き、TY アーキテクツで大手アパレルメーカーの店舗設計を経験させて頂きました。
また、独立後もトウキョウゲストハウスという、そもそもこの土地で賃貸を含んだ住宅が成立するのかというレベルから検討して欲しいと言われた建坪8坪の超狭小住宅の設計や、ファッションの中心地原宿の駅前で、大手アパレルメーカーのフラッグシップショップの設計を行う幸運にも恵まれました。
それらの経験を活かし、法的に複雑な建物を手がけさせて頂いています。
例えば、先述の大手アパレルメーカーのフラッグシップショップは特殊な緩和を使って簡易な構造計算のみで確認申請を提出することにより、スケジュールを大幅に短縮しています。また、池袋で計画したオフィスビルの改修は違法増築していた物件の改修計画で、役所に是正計画を提出することにより、銀行の融資を受けられるような計画をしました。お客様(買主)、売主、役所、銀行と複数の関係者がそれぞれうまく行く様に計画をしていましたが、残念ながら他の買主さんの手に渡り、計画は白紙になってしまいました。
現在は建蔽率オーバーになった物件の改修計画や、検査を受けていないため用途変更でも確認申請が受けられない言われた物件の適法調査、及び改修等を行っています。いずれも法的、構造的に問題ないことを役所や構造設計、及びお客様の会社の担当者と綿密に打合せした上で進めています。
「そもそもこの土地で住宅が成立するのか?」というところから検討して欲しい・・・クライアントの疑念を払拭した、8坪の超狭小建物【トウキョウゲストハウス】
これは先述した、独立後最初に手がけた超極小住宅です。敷地は都内の閑静な住宅地。ミニ開発によって作られた戸建て住宅が立ち並ぶ地域でした。
ミニ開発とは、一つの敷地を建築基準法上最低限必要な「位置指定道路」と呼ばれる私道を設け、それに接道するように極小の敷地に細分化し、小規模の建売住宅を建築する方法をのことです。これにより都心近くでもマイホームを持ちたいという夢をかなえることができるようになった反面、隣地に密接しているため、居住環境の悪さや防災面に関する問題点が指摘されてきました。
今回の計画は、その中の五住戸からなる一団の土地の一部の建替えを行いました。敷地は当然ミニ開発を前提としていたため、建坪は8坪強という極小の敷地でしたが、クライアイントから求められた要望は多く、その上二階を賃貸で貸したいとのことでした。
そこで、地下緩和、ロフトの緩和も利用して、建築可能な最大容積いっぱいに建物を建て、なおかつ通常考えられる寸法より一回り小さい寸法で全てを詰め込むことで、要望に応える方法を考えました。求められた部屋一つひとつの大きさを独り暮らしに十分な規模まで縮小したのです。吹抜けや角地立地を活かした大きな開口を設け、部屋と部屋の緩やかなつながりに注意して配置しました。また東側は道路も広く視界が抜けさらに緑地が広がっていたため、テラスを設けました。
東京にはまだまだ数多く存在する、ミニ開発の更新に対してささやかですが、新しい解答を示せたのではないかと考えています。
クライアントからの要望を叶えて生まれた、非日常的かつ機能的な【GIRLS BAR】
これは法的に複雑なプロジェクトではないのですが、私の設計に対する考え方をよく表しているプロジェクトだと思うのでご紹介します。
クライアントからの要望は光を何か効果的に使い、非日常的な空間が作れないかということでした。そこで、まず、バーカウンターを、横長のスペースを活かし、ぐるりと室内を取り囲むように配置しました。そしてその囲われた部分の床をライトアップすることにしました。真ん中部分を女性バーテンダーが動くことで、客の目線からはダンスフロアを鑑賞しているように見えるのではと考えました。また、カウンターはガラスで透明にし、女性バーテンダーが良く見えるようにしました。
個室部分はカウンターとは趣きを変え、カーテンで仕切られた中はできるだけプライベートな空間となるようにしました。だけれども、店内の天井は全て透過性のある素材で統一しました。
その天井材の上下に照明の位置を変える事で異なった表情を見せるスペースを作り出せないか、そしてかつ、統一感を失わずに、スペースに変化を与えることができるのではないかと思いました。
非日常的で、だけれども機能的な空間が生み出せるのではないかと考えたのです。