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建築家インタビュー
  • 掲載:2024年05月07日 更新:2024年11月22日

四季を楽しむ「土間の家」
A&D 遠藤設計

A&D 遠藤設計(ARCHITECT & DESIGNER) 遠藤 知世吉設計「土間の家」
「土間の家」のクライアント一家は、結婚9年目の夫婦と3人の子供(長女・次女・長男)の5人家族です。ご主人の仕事の関係で結婚後6回ほど引っ越しをし、私と出会う直前までは2年半ほどアメリカで暮らしていました。子供たちの成長に伴い拠点となる家を持つことを決断したそうです。

設計士プロフィール

A&D 遠藤設計
遠藤知世吉 | Chiyokichi Endo
一級建築士/インテリア高校教員免許/宅地建物取引士/第3種放射線取扱主任者/ヘリテージマネージャー(歴史文化遺産保全活用推進員)/応急危険度判定士

〒960-8003
福島県福島市森合字西養山15-1
TEL:024-536-4464


<プロフィール>
1958年福島生まれ。日本大学工学部建築学科卒業。大学副手をへて建築修行ののち、1989年に「遠藤知世吉・建築設計工房」を開設。福島を中心に活躍しており、これまでもさまざまなコンペで最優秀賞・入選を獲得している。2019年に総合デザイン事務所「A&D 遠藤設計(ARCHITECT & DESIGNER)」としての活動も始め、建築設計と共に商品開発やプロダクト・グラフィックデザインを行っている。

新興住宅団地内の最南端に位置する家

ファザード、左側はカーポート付き外物置

敷地検討段階から相談を受けており、最終的には市街化調整区域を土地区画整理した新興住宅団地内の最南端の敷地に住宅建設をすることとなりました。 北側道路の敷地は南に田園が続いており、四季折々に変化する田園を眺めながら暮らすことができます。田園側は市街化調整区域のため今後も住宅が建つことはありません。さらに北側には山並みを望むことができます。
しかし、周辺に建物が建つと山並みが見える部分は限られてしまいます。 この南に続く田園と北の山並みをいかに活かすかが課題となりました。 さらに一般的に北側道路は北側に水周りを並べると閉鎖的な住宅になりやすいとされています。プライバシーを保ちつつ閉鎖的にならず、北側道路に続く地域にどう溶け込むかがテーマとなりました。

本プロジェクトの課題の一つは「施主の拘りをローコストで仕上げる」ことです。
ところが実施設計完成後の設計書(設計事務所の積算書)作成時点で予算オーバーし、その後の工務店見積でもオーバー。そこで工務店さんにも入ってもらい施主・設計者の3者で知恵を絞りました。見積書を4回修正して頂くなど工務店さんにはご苦労を掛けました。その結果、施工方法見直し等によりコストダウンを計り、北側の一部木製サッシュはアルミに変更しましたが、その他は大きな設計変更をすることなく予算内で納めることが出来ました。この見積段階での3者の協力が連帯感を育て、工事期間中の様々な問題を解決することが出来たと思っています。契約時は別途工事だった細々なことも工務店さんに引き受けてもらいました。引っ越し前日に撮ったやり切った姿の3者集合写真は私の宝物です。


家の中でも外を感じることができ、懐かしさを感じる空間

造作流し台と食器棚のキッチン、奥が全開放窓とデッキ、田園と続く

窓から緑が見えるキッチンや外部の空気を感じるお風呂など、「家の中でも外を感じることができる懐かしい感じの住まい」をご希望でした。さらに、居間に面して客用和室があり、居間の薪ストーブで家全体を温めたい、子供室は小さくてもよいが3室は欲しい、寝室前にはサンルームが欲しい、そしてそこで洗濯物を干すので暖炉煙突から暖気が取れるようにしたい、と多種多様な要望がありました。

地域と接する北側はコミュニティと外作業の場として、田園に接する南側は四季の移り変わりを楽しむ場とするため、南と北側に木製デッキと土間を設けております。 屋内から屋外のグラデーション(段階を追って変化する)空間により地域にも自然にも開かれた空間をプライバシーを考慮しながら、地域にも自然にも開かれた空間を目指しました。
また、北の道路側アプローチと駐車スペースの一角に自転車競技の練習場も兼ねた外物置を設け、ポーチと外物置を軒下空間でつなぎました。軒下は作業空間にもなり、雨の日でも、駐車スペースから外物置前を通り玄関まで濡れずに行くことができます。


長持ちで頑丈な開放的空間を持つ家

食堂からキッチンを見る、左は収納作業台、正面は家事コーナー、右側がデッキ

東日本大震災を経験した福島県での住まいづくりは、長持ちで頑丈な家としました。
構造には特に注意を払い屋根は軽量なガルバ鋼板(日鉄住金鋼板)を使用し、法律の定める基準の200%の壁量とし耐震性を高めています。さらに耐震壁位置を4隅に確保するなど家全体の構造バランスにも配慮しました。また湿気と経年劣化を考慮し、すべて耐震壁を木材筋交いとしています。

居室全部の入口を引き戸にするなど家全体を開放的な空間としたことから、ZEH (ゼロ・エネルギー・ハウス)基準の断熱性能としています。さらに万が一火災発生時の煙対策も考え、壁・天井断熱材は高性能グラスウール14kgを選択し壁に105mm、天井に155mm厚の断熱材で包み、壁内結露対策として外壁に通気層を設けました。 設備配管等の維持管理や害虫対策から1階床下は基礎断熱を避け床下換気型とし、床に断熱性の高いフェノールフォーム60mm厚を設置しました。さらに外部開口部も玄関戸が木製断熱戸(キムラ)、窓がアルミ樹脂ペアガラスサッシュ(トステム)と内側木製のトップライト(VELUX)と断熱性を考慮したものとしています。 


メンテナンスが少ない外壁材と室内湿度を調節する内装材

ポーチ部ベンチで自転車整備、奥が外物置

メンテナンスが少なく済む外壁材との観点から主にガルバ鋼板(日鉄住金鋼板)とラムダ―サイディングを使っております。またクライアントの「懐かしい感じの家」の希望から道路側外壁のアプローチ・ポーチ部分をパイン板張りキシラディコール塗としました。

内装材は吸放出材料としました。1階の主な床材は厚さ21mm幅160mmの無垢ナラフローリング(オスモ)、2階は21mm厚さのパインフローリングの自然ワックス仕上げです。
さらに壁は水回り以外を漆喰塗と珪藻土クロス(サンゲツ)、天井は珪藻土クロスとパイン板張りとし、湿度の高い時に湿気を吸い、乾燥している時に湿気を放出してくれる呼吸する材料を使用しました。


家の中を回遊できる動線

玄関にはトップライトと掃き出し窓を設け、北側に位置していますが開放的で明るい空間です。また、玄関脇にクロークを設け、その奥を勝手口のある食品庫とし、住宅内部にも北側デッキと平行して土間空間を設け、屋外に続くキッチン隣接の家事空間としました。ダイニングキッチンは居間の間の引き込み戸によりLDKを一体でも単独でも使用可能です。 居間は予備室と和室に接しており、予備室には父母同居を見据えミニキッチン、隣接してトイレと洗面コーナーを設けております。そして一階各部屋は、すべて2方向屋内移動ができ、家の中を回遊できる廻れる動線にしました。


すべての居住空間から四季を眺められ、そよ風が巡る住まい

居間内土間と階段、右奥が食堂、正面が玄関

居間の土間部分に薪ストーブを置き、階段・吹き抜けを通し、2階に暖気を送るようにしています。奥のサンルームとバルコニーのある寝室の前面に洗面・脱衣洗濯室と北の山並みを望む浴室を設けました。すべての家族居住空間から南側田園の四季の移ろいを眺め、家中をそよ風が駆け巡る住まいとしました。


「土間の家」の写真集









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「A&D遠藤設計」の建築への思いと建築作品

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設計士プロフィール

A&D 遠藤設計
遠藤知世吉 | Chiyokichi Endo
一級建築士/インテリア高校教員免許/宅地建物取引士/第3種放射線取扱主任者/ヘリテージマネージャー(歴史文化遺産保全活用推進員)/応急危険度判定士

〒960-8003
福島県福島市森合字西養山15-1
TEL:024-536-4464

<プロフィール>
1958年福島生まれ。日本大学工学部建築学科卒業。大学副手をへて建築修行ののち、1989年に「遠藤知世吉・建築設計工房」を開設。福島を中心に活躍しており、これまでもさまざまなコンペで最優秀賞・入選を獲得している。2019年に総合デザイン事務所「A&D 遠藤設計(ARCHITECT & DESIGNER)」としての活動も始め、建築設計と共に商品開発やプロダクト・グラフィックデザインを行っている。
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シーズン毎で取材させて頂いている建築家へのインタビュー記事です。2007年秋にスタートして四半期毎に新しい記事の更新をしています。住宅、集合住宅、商業施設、公共施設など建築家の体験談をお楽しみください。