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建築家インタビュー
  • 掲載:2024年08月30日 更新:2024年12月12日

持ち主が変わっても空間の持つ魅力を損なわない。そういう建築をつくりたいと思っています。
IGArchitects一級建築士事務所 五十嵐理人

IGArchitects一級建築士事務所
五十嵐 理人
IGArchitects一級建築士事務所
五十嵐 理人(いがらしまさと)
一級建築士・管理建築士

〒336-0025
埼玉県さいたま市南区文蔵3-18-3-309
1983 年東京都生まれ
2008 年 工学院大学大学院建築学専攻修了
~ 2013 年清水建設株式会社設計部
~ 2018 年 SUPPOSE DESIGN OFFICE
2020 年 IGArchitects 設立

受賞歴
2020年 空間デザイン賞2020 Longlist(入選)( 宇品のカフェ)
2020年 ap賞 2020 大賞( 宇品のカフェ)
2023年 空間デザイン賞2023 Shortlist 入賞( 一本足の家)
2024年 Archi-Neering Design AWARD 2023 入賞( 一本足の家)
2024 年ASIA ARCHITECTURE DESIGN AWARD INTERIOR DESIGN 最優秀賞(柱群の家)

主な掲載誌
KJ 2020.06
INRTERIORS(韓国)
住宅特集 2024 年1月号
À Vivre HS#60(フランス)
モダンリビング No.274
住宅建築 No.507 2024 10月号


五感をもって感じることが自身のプロジェクトの大きな糧になる

デザインや設計力を磨くためには、たくさん良いものを見て、体験することです。
本を読んだり、図面を見たり、実際に訪れて、その建築がもつスケール感や空気感を、五感をもって感じることが自身のプロジェクトの大きな糧になっていると思います。
最近はsnsを通じて気軽にいろんな場所の建物を簡単にみられるようになりました。いいな!とおもったら、snsで、「見せてください!」って連絡したりすることもあります。
常にいろんなものを見て、自分がいいなと思うものを確認、アップデートするようにしています。


こちらの意図通りにいかないことも建物が良くなるフェーズ

設計する建物は、難易度の高い、施工者さんや職人さんにとっては未経験の事が多いので、「できない!」といわれることがしばしばです。 ただ、施工者さんや職人さんたちも別に意地悪しようとしているわけではなく、「できない!」には何かしらの意図があります。
なので、作り手の意図を汲んで、図面やパース、スケッチをたくさん書いて、どうしたらできるか、をしっかり打合せするようにしています。
もちろんこちらの意図通りにいかないこともありますが、本当に大切なものが何なのかがしっかり浮き彫りになるので、困ったその過程も、建物が良くなるフェーズと考えて取り組むようにしています。
施工者さんや職人さんたちもお付き合いしていくうちに、「前よりは簡単だ」、とか「またおかしなこと考えたな」とか楽しんで取り組んでくださるようになって、回を重ねるごとに、現場は楽しくなります。

宇品のカフェ
広島に設計した「宇品のカフェ」は縁あって木造を主に手がけられる施工者さんに工事をお願いしました。経験が少ない分、丁寧にしっかり施工して下さったおかげで、とても精度よくつくられていて、このプロジェクトが縁で、新しいプロジェクトのお話や、また一緒に仕事したいねと言っていただけるようになりました。


要望の裏にあるクライアントの想いを計画に反映する

建築はクライアントと施工者さんとチームでつくるものだと思っています。だから「対応する」のではなく、僕より詳しいことは詳しい人に教えていただいて、一緒につくるように意識しています。クライアントの暮らしぶりや、持ち物、趣向や要望があるからこそ魅力的な空間が実現できると思っているので、一方的にこちらのデザインを押し付けるようなことはありません。
ただし、クライアントの言いなりになるわけではなく、変なものはヘン、格好悪いものはカッコ悪いとしっかり伝えるようにしていますし、なぜそうしたいのか、要望の裏にあるクライアントの想いをしっかりお伺いして、計画に反映するようにしています。
出来上がる建築やクライアントのためになることなので、少しでも良くなるためなら労力は惜しまないようにしています。

柱群の家
福島に設計した「柱群の家」はクライアントや施工者さんとのチームワークの上でつくられた住宅です。クライアントの要望に対して鵜呑みにするのではなく、何故そうしたいのか、どうしたらできるかをじっくり議論しながらつくっています。施主工事もたくさんあり、みんなで塗装工事をしたり、あとからDIYでクライアントが住まい方に合わせてカスタマイズされるなど、竣工後もコミュニケーションが続いています。


⻑く使い続けられる、力強く大らかな建築に魅力を感じている

建築は1度つくったら簡単には変えられません。お金もかかるし、もしかしたら壊して作り直さないといけない。そして、住まい手や使い手より⻑くその場にあり続ける可能性があります。
なので、特定の⽤途に合わせてつくられたものよりは、他の⽤途に変えられる可能性がある空間や、そうなっている空間に魅力を感じています。
持ち主が変わっても空間の持つ魅力を損なうことなく、⻑く使い続けられる、力強く大らかな建築に魅力を感じていますし、そういう建築をつくりたいと思っています。

一本足の家
沖縄に設計した住宅「一本足の家」は依頼いただいた当初、倉庫のような家が良いと言われていました。長く住むつもりだけれど、お店もやりたいし、もしかしたら人に貸すかもしれない、と。そのお話を伺っているうちに、住宅として設計するのだけど、使い方や持ち主が変わってしまったとしても、建物の良さや空間の心地よさは変わらない、そんな建築をつくれないか、と考えるようになりました。この一本足の家は柱が一本しかなく、外周の壁はすべてガラスで、交換可能です。だからガラスや壁の位置も住に変えられるし、室内のレイアウトも如何様にでもなります。


自身の価値観を大切につくることで、建築に愛着が湧いて手入れも楽しくなる

気密性、断熱等性能等級、耐震性など、数値の要望をよく聞くようになりました。
○○坪、○○㎡というのは広さを表す指標ですが、同じ数字でもつくり方次第で広く感じられるようになります。こうした数値は目標であって目的ではありません。住宅は住まい手の数だけ答えがあります。だから数字に振り回されず、自分が心地よく、楽しく暮らすということをしっかり考える必要があると思います。

誰かが決めた価値基準によらず、自身の価値観を大切につくることで、建築に愛着が湧いて、手入れも楽しくなりますし、⻑く住み続けることができるはずです。
2700
埼玉に設計した住宅「2700」は土地の幅がわずか3m程度の狭小地。クライアントも購入を躊躇う特殊な敷地でしたが、制約をポジティブに変換し、数字以上の広がりのある空間を実現しています。クライアントと理想の住まい方をじっくり議論することで、理想の暮らしを実現することができています。この家には家の規模に対して不釣り合いなサイズのバスルームがあるのですがこれがクライアントのこだわりです。







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シーズン毎で取材させて頂いている建築家へのインタビュー記事です。2007年秋にスタートして四半期毎に新しい記事の更新をしています。住宅、集合住宅、商業施設、公共施設など建築家の体験談をお楽しみください。