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掲載:2023年10月12日更新:2023年10月12日

揺れない家づくり~揺れに弱い家の特長やNGポイントを紹介~

2011年に東日本大震災、2016年に熊本地震が起き、天災はいつか必ずくるもので自らの安全は自らの手で守るしかないと強く感じました。私の故郷は熊本で、自ら被災地に赴き、被害の状況を見て私はそのことを学びました。

「建物さえ壊れなければ大丈夫」という考え方では十分とは言えません。「夜中に突然揺れが始まった時」「部屋の中が倒壊物で埋め尽くされたとき」こうしたときに感じる恐怖、不安を取り除く必要があります。

安心安全な家を次世代に伝えていくため、安心して暮らせる揺れない家づくりの特徴とコツを書いてみました。


1.揺れに弱い家の4つのタイプ

まず揺れに弱い家の4つのタイプを書いていきます。
それは以下の通りです。

(1) 軟弱地盤の上に建つ家
(2) 重さと強さのバランスの悪い家
(3) 古い家
(4) 費用が安すぎる家

それでは、これから順番に詳しく見ていきます。

2.タイプ1|軟弱地盤の上に建つ家

地盤の弱い家に建つ家は、大地震の際に家が傾いたり陥没してしまう危険性があります。こういった土地は軟弱地盤と呼ばれています。
※軟弱地盤とは、泥や大量の水を含んだ常に柔らかい粘土または未固結の砂からなる地盤の総称です

もともと海のあった場所を埋め立ててできた土地や、沼地や田んぼだった土地を埋め立てたケースなどがあります。

もしも軟弱地盤に家を建てる場合には、地盤補強の工事として、「柱状改良」や「鋼管杭」などの工事を行います。柱状改良とは、簡単にいうと土の中にコンクリートの杭をつくって補強する工事です。

しかし、軟弱地盤の上に建てる以上、絶対に大丈夫な対策はないといえます。
深部にまで杭を打ったとしても、地震のエネルギーは地盤自体をずらしてしまう可能性さえもあるからです。

少しでも対策をということであれば、液状化を防止するための地盤補強の施工案もあります。

3.タイプ2|重さと強さのバランスの悪い家

バランスの悪い家とは、家の重さの中心(重心)と強さの中心(剛心)のバランスが悪いということです。

こんな家が危ない

バランスの悪い建物の一例として、まずピロティ形式が挙げられます。ピロティ形式とは、建物を柱だけで支えており壁のない状態を指します。わかりやすい例で、1階部分が駐車場や駐輪場になっている家のことです。
都市部などの限られた敷地内で駐車場などを確保する必要があるため、比較的多いです。

もしくは、キャンティレバー式の建物なども挙げられます。1階部分よりも2階部分が跳ねだしている建物を思い浮かべるとわかりやすいです。
バランスが悪い建物は、大地震のときは大きく揺れて、倒壊の危険性が高くなってしまいます。

デザインにこだわりすぎない

家を建てる際に重要なことは、デザインに凝りすぎない・強度のバランスを確保するということです。
設計士の多くは家の形を美しく整える「意匠設計家」であり、構造計算についてはあまり得意としない方が多いのが一般的です。構造のことはある程度の知識の範囲で深く考慮しないまま設計して、そのデザインに合わせて構造も合わせることが多いのです。

そうした理由で、揺れに弱い家が生まれてしまうリスクが増えます。

「いかに綺麗な建物を建てるか」に注力しがちですが、例えばガラス面を多く見せようと考えると、必然的に壁を少なくするという発想につながります。構造上は無理を強いてしまうことになります。

大切なことは、設計時がどこまで安全性を高いレベルで意識するかどうかです。家を設計する際には、施工業者がどこまで安全を重視しているかを確認する必要があります。

4.タイプ3|古い家

阪神淡路大震災の資料を見てみると、木造・鉄筋・鉄骨といった工法を問わず、古い建物が倒壊する割合が非常に高かったです。特に昭和56年(1981年)以降に建てられた建物の倒壊比率は高いことが指摘されています。

昭和56年がボーダーライン

この年に建築基準法施行令が改正され、耐震設計基準が大幅に改正されたという背景があります。
もちろん、昭和56年以前に建てられた建物の中にも強固なものは存在しますが、一般的にはこの年を基準に耐震性を判断するのが妥当です。

この新耐震設計基準に沿った建物は、阪神淡路大震災でも倒壊しにくいという事実が明らかになっています。
木造住宅の場合には、度重なる地震を経験することで、釘などの結合金物のゆるみが生じ、これにより耐震性が失われてしまいます。

基礎のひび割れにも要注意

基礎のひび割れ(クラック)という問題もあります。ヘアークラックという髪の毛のような、細いひび割れも存在します。構造には大きな問題はないのですが、耐震性が悪化する可能性はあるということは理解しておくべきです。

一方、構造クラックになると、もう少し太いひびになってしまうので、雨水が入り込み、基礎内部の鉄骨がさびる原因となります。このように古い建物については、専門家でなくとも、ある程度危険を判断する材料があることを知っておくとよいでしょう。

5.タイプ4|費用が安すぎる家

建築費や購入の価格が安すぎる家にも注意が必要です。「安すぎる」の理由はいくつか考えられます。
建築業者は契約を取りたいために、思いきった低価格のプランを提案します。その低価格が根拠の的確なものであればいいのですが、実際には職人さんの手間賃を省いているだけというパターンもあります。中には、値段に見合った程度の工事をすればいいだろうと考える職人さんが出てきてもおかしくはありません。

そのため、いい加減な見積もりをさらっと提示してきたり、営業マンが大幅な値下げを提案してくるような場合には注意が必要です。
契約を急いだり、雑な家づくりを行う可能性につながるためです。

このように、無理を強いる家づくりをすると、どこかにほころびが現れ始めます。
安い金額で家を建てることができても、あとで雨漏りを繰り返したり地震に弱いということであれば、元も子もありません。また、過度な値引きを繰り返していたために経営が成り立たず倒産してしまう会社もあります。そうなると当然、アフターサービスなどは期待できなくなります。

業者から極端に安すぎる家を提案されたら、なぜその金額になるのか裏付けをきちんと確認することをお勧めします。

まとめ

いま世界は、大地震の活動期を迎えています。
日本でもいつ巨大地震に見舞われても決しておかしくはない状況が続いています。私たちはこれまで、大地震を経験してその都度、危機意識を新たにするものの時間の経過とともに安全な状況に慣れてしまうという経験を繰り返してきました。

大地震は決して他人事ではなく、どの地域でも過去に起きた巨大地震の痕跡をみれば、こうしているいまも危機に直面している事実は変わらないはずです。震災の経験を忘れずに、新たな災害に備えていくことがこれからの重要な努めであるように思います。
十分な地震対策・環境対策が施された質の高い家が、これから多くの人の手に届くことを願います。





著者プロフィール

建設会社にて2×4工法、RC造の建築物の設計・積算を担当。
住まいでの快適な暮らしや建築に関するニュースを執筆していきます。






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