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ARCHITECT
建築家インタビュー
  • 掲載:2024年11月21日 更新:2024年12月12日

空中に浮いた感覚で河口湖の空気を感じられる、チルとアートがテーマの「hotel norm. air」
株式会社 studio acca 石井勇人

株式会社 studio acca

河口湖にあるチルとアートがテーマのhotel norm. airは、宿泊者にラグジュアリーなチル体験の提供を目的として計画されました。景色を楽しむためのバルコニーを設けairの名の通り空中に浮いた感覚で河口湖の空気を感じられます。建物の意匠と自然環境の調和を目的に外観を黒一色でまとめ自然環境に溶け込むように配慮しました。仕上には木材を使用せず自然の木々を借景として取り入れました。

<建物概要>
主要用途: 旅館
工事種別: 新築
構  造: 木造2階建て
面  積: 敷地面積 921.06㎡/建築面積 131.62㎡/延面積 1,727.31㎡/最高高さ 9.732m

設計士プロフィール

株式会社 studio acca
石井 勇人 | いしいはやと
一級建築士|インテリアプランナー

〒166-0004
東京都杉並区阿佐谷南3-49-2 201
TEL:03-6913-8189

<経歴>
日本大学生産工学部建築工学科卒
(株)アルフレックスジャパン勤務を経て渡伊
2002年~2003年 Istituto Europeo di Design (イタリア・ミラノ)
2002年~2004年 イタリア人建築家Daniela Puppa事務所 (ミラノ) 勤務
2004年 Bormioli & Rocco (イタリア・フィデンツァ)ワークショップ参加
2004年 studio acca 一級建築士事務所 設立
2017年 株式会社 studio acca 設立


<賞歴>
2003年 "MADE IN TUSCANY"(SALONE DEL MOBILE FIRENZE) 入選
2008年 "ディスプレイデザイン賞2008" 入選 (GMK本社ビル)
2023年 A’ Design Award & Competition 2022-2023 シルバー賞 (hotel norm. air)
2024年 A’ Design Award & Competition 2023-2024 ブロンズ賞 (hotel norm. fuji)



周辺環境との調和を目的に黒一色でまとめた外観

隣接する関連施設の特徴的な建物形状を踏襲しつつ、自然環境に溶け込むように黒を主体とした外観とすることで、自然の中でも自己主張し過ぎないデザインを目指しました。離れた場所から森に囲まれた建物を視認することは困難で、初めての訪問に不安を感じながら森を進むと突然現れる特徴的な建物。訪れた人達は、一瞬の驚きとこれから過ごすホテルでの滞在を思い、高揚感に包まれます。

人の生みだすアートと周辺の自然を同時に楽しめる空間

室内は全ての場所がアートの展示スペースになるため可能な限り要素の少ない空間とし、自然の美しさを快適な室内で感じてもらえるように、仕上材には木材を使用せずに自然の木々を借景としました。周辺の自然環境を空間内に取り込み、四季折々に変化する天然のアート作品として、人の生みだすアートと周辺の自然を同時に楽しめる空間となりました。

床の高低差や着座時の視点の変化で、感覚的な空間分け

日々の生活において、コミュニケーションの希薄化が社会の課題になっており、norm. airに宿泊すると、知らないうちにコミュニケーションを取っている空間作りを目指しました。宿泊者の気持ちがひとつになるよう空間に物理的な仕切りは作らず、床の高低差や着座時の視点の変化で、感覚的な空間分けを行いました。それにより、リビングダイニングからバルコニー、そしてサウナに繋がるアウトドアバスルームまで、室内外が繋がる一つの広い空間となりました。宿泊者全員が囲み楽しめるように、室内の中央には方向性の無い大きなダイニングキッチンテーブルがあり、料理をする人、お酒を飲む人、カードゲームを楽しむ子供たちがそのダイニングキッチンテーブルで共に過ごすことが出来ます。

日常を楽しくするための、非日常的な空間

近年増加しているグランピング施設やプライベートホテルとの差別化を目的に、冬が寒い河口湖において、天候に左右されずに外で快適に過ごせるアウトドアリビングを設け、『air』の名の通り、空中に浮いた感覚で河口湖の空気を最大限感じられる計画としました。広いバルコニーで河口湖を望みながら、日々の忙しい日常では後回しにされがちな家族や仲間と集まり楽しく食事が出来る喜びを、旅で感じる非日常を通して満喫出来る空間になっています。

自然の中でも自己主張し過ぎないデザイン

この地域は、自然環境を維持するための法律があり、建物の意匠性と自然の環境の調和にとても苦慮しました。黒を主体とした外観にすることで、自然の中でも自己主張し過ぎないデザインを目指しました。さらに、ホテルの周囲を多くの植栽で覆い、遠くから見た時に、異質な印象を与えないように配慮しました。

"チル"と"アート"というテーマをどのように落とし込むか

今回、チルとアートをテーマにデザインしたホテルを設計するに当たり、チルだと感じる空間はどの様な空間か、アートを鑑賞するのに適した空間はどの様な空間か、情報過多の現代において、何もしない、この場所にいるだけで満たされる、自然の中に包まれる贅沢を感じられる場とはどのような環境なのか、様々な事をプロジェクトメンバーで多くの議論の場を持ちました。その議論を通じて、考え方を共有することが出来ました。そこに関わる全ての人の意見を交換した建物は、とても愛おしく、多くを語る事の出来る大切な建物だと感じています。



作品で使用した建材

【外壁】
カラーガルバリウム鋼鈑
株式会社 studio acca
使用建材 :カラーガルバリウム鋼鈑
建材名 :モエンサイディング-M
建材メーカー ニチハ


【天窓】
株式会社 studio acca
使用建材 :天窓
建材名 :ベルックスルーフウィンドウ
建材メーカー :ベルックス


【バルコニー(天井)】
株式会社 studio acca
使用建材 :ケイカル版
建材名 :シポカケンDO
建材メーカー :エスケー化研


【キッチン/リビング】
株式会社 studio acca
使用建材 :タイル600角
建材名 :コットメントPS-X4340
建材メーカー 名古屋モザイク工業


【エントランス】
株式会社 studio acca
使用建材 :壁紙
建材名 :FE6133
建材メーカー サンゲツ


【バスルーム】
株式会社 studio acca
使用建材 :タイル600角
建材名 :アーバンアンスラサイト
建材メーカー アイオーシー株式会社





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設計士プロフィール

株式会社 studio acca
石井 勇人 | いしいはやと
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〒166-0004
東京都杉並区阿佐谷南3-49-2 201
TEL:03-6913-8189

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日本大学生産工学部建築工学科卒
(株)アルフレックスジャパン勤務を経て渡伊
2002年~2003年 Istituto Europeo di Design (イタリア・ミラノ)
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シーズン毎で取材させて頂いている建築家へのインタビュー記事です。2007年秋にスタートして四半期毎に新しい記事の更新をしています。住宅、集合住宅、商業施設、公共施設など建築家の体験談をお楽しみください。