- 掲載:2015年03月06日 更新:2024年12月06日
地球にも人にも優しい自然素材でオシャレなデザインの健康住宅の供給 株式会社アンビエックス 相根昭典
東京都目黒区中根1-10-18
1980年、「自然に学び、そのまま生きる」を提唱し、住まいの相談室として設立しました。自然素材で体に優しく、「暮楽の家」として暮らしが楽しく、趣味が楽しく、家事が楽になる家を、お金に安心な「定額で」建てています。
健康住宅の先駆者としてTV、新聞、雑誌などマスコミに数多く登場。安全な素材にこだわり、独自に研究開発を行い、化学物質を極限まで使わない健康住宅を提供し、循環型社会を現実にするエコヴィレッジを展開中。全国で健康住宅セミナーの開催、学会での講演など、活動は多岐に渡る。
著書:
「健康な住まいを手に入れる本」
「天然住宅から社会を変える30の方法」
「"サステナブル"で"オルタナティブ"な暮らしをしよう」という標榜で事務所をつくりました
私は「持続する、循環型の暮らし」に取り組むという目的でアンビエックス設計事務所を25年前に作りました。持続する循環型の暮らしとは、その頃はあまり聞かなかったと思いますが、サステナブル(Sustainable)で、オルタナティブ(Alternative)な暮らしをしようということを標榜して作った事務所なのです。
最初はそのためのマーケットも何もない、誰も知らない、という状況でした。当時は、シックハウスのことを「家元病(かげんびょう)」と言っておりました。アメリカでも、シックビルシンドロームが大騒動になり、家が原因で病気になるのだということが世界中に広がり、特に化学物質が多かった日本でも、建築や住宅における「シックハウスシンドローム」という言葉で周知されはじめたころ、私たちが一緒に言いだしたという感じだったのですね。
その頃から一生懸命啓蒙してきたのですが、徐々に理解してくれた人々がインタビューを受けたり、雑誌に発信したり講演をしたりするうちに、テレビなどのマスコミにも取り上げられるようになりました。
シックハウス症候群では、それが原因で亡くなる方さえあります。特にホルムアルデヒトという物質は、発がん性があると言われているのに、一般の方でご存知の方はほとんどいらっしゃらない。知っている人といえば、病弱でアレルギーもあるような人が、特に免疫力が消耗した状態で、新築の家に引っ越した時などに発症してしまったような経験がある人ですね。皆さん気付いていないかもしれませんが、シックハウス症候群には建築の建材がかなり影響していると思います。
住まいによって人生が変わると言っても過言ではありません
病気というより、健康に気を使い、健康への意識が高い人が8割ほどに上り、お金はなくても何とかしたいというご相談も多くなっています。自然素材にこだわった家に住んでみると、健康な人でも寝付きが良くなり、深く眠れるので、たとえ3時間しか寝られなかったとしても、結構すっきり深く眠れます。すると翌朝の目覚めも良く、お母さんも朝から子どもをガミガミ怒らなくて済んだりするわけです(笑)
以前、NHKの取材で、シックハウスのない家に住むようになってから「お母さんが最近優しくなった」という子どもさんのインタビューがありましたが、お母さんいわく「イライラしなくなったから、そうよね・・・」と答えていたのが印象的でした。
住まいによって人生が変わるといっても過言ではありません。御主人だって、リラックスできていたら仕事のアイデアも次々に生まれ、クライアントとの関係も良好、全てが順調に廻るようになります。それに、例えば、体の中に化学物質を取り込む割合からいくと食べ物の場合は15%くらいですが、家の中の場合は約56%、外気が25%なので、合計すると約80%、空気のほうが化学物質を直接取り込んで中に残留する確率が高いことになります。玄米菜食で自然食とかで頑張っている人がシックハウスに住んでいたらぶち壊しになるというわけなのです。
すべて改善しようとせず、まずは「床」からリフォームすることをオススメします
住宅の知識をつけることは一気に全部やる必要はありません。例えばリフォームでも、寝室の床だけやってあげると……。空気は7割が床にあります。だから、皆さん立っていても、体温があるから上昇気流でこう上がって来ます。そうすると、こんな状態で立っていても、60%~70%の床の空気を吸っています。寝てしまったらもう9割くらい床の空気の影響を受けるわけです。赤ちゃんがハイハイしていたら、同じ状況です。
うちにコンサルティングに来られた方の話ですが、家の建て替えのために一時的にアパートに越したとたん、子どもさんがぜん息の発作を起こすようになってしまいました。そこで、私の方で大家さんを口説き、床を安全な無垢板に、防カビ処理もしていない産地のスギ板に張り替えてもらいフローリングにしました。すると、子どもさんはその夜からスヤスヤと発作もなく安眠できたのです。つまり、そのくらい住む家が人の健康に及ぼす影響が大きいということです。
改善の手始めとしては、それほど大げさに考えず、まず床からやってあげればいいと思います。そして徐々に面積の多い壁と天井のリフォームへ。ただ、外壁とか内部にホルムアルデヒドを使った断熱材とか、合板を使っていると、それが中に入って来てしまうので、完璧ではないのですが、それでも、全然違います。有害物質の少ない家に住んで健康になり、良い仕事をしてしっかりお金を貯め、さらに安全な家に建て替えてもらうというサイクルになってくれるのが理想です。
「これではだめだ」と、自分でメーカーをやるぞと腹をくくりました
化学物質の悪影響で病気になった人の例をいやというほど見ているので、そういう建材は絶対使ってはいけないという思いから、最初は無垢の木を山から直接持って来たり、漆喰も自分たちでブレンドしたりして。でないと、漆喰にも樹脂とかボンドが混ざっていますから。そして、国産材の木材もカビが生えないように自動的に防カビ処理してしまうのです。日本で最初にそれを私たちが「中止して!」と告発したのですが・・・。それで、その安全な素材を手作りでやっていたので、やはりコストが高くついてしまうのです。そうすると、富裕層や定年退職間近でお金があるというような人だけが対象となり、子どもが小さくて困っている人たちなど、一番欲しい人には届かないわけですよ。
「これはだめだな」「何をやっているんだ」などと思い、それで、大手メーカーさんに「自然素材の建築材料を作ってほしい」と頼み込んだのですが、大手さんはやっぱり自然素材だとムラがあったり、不均一だから、クレームが来るのが怖い、色がロットによってわずかに違うとか、メンテナンスが大変だろうなどと、ネガティブな心配ばかりでした。
確かに、施工は職人がいやがるくらい難しいのですが、職人がいやがると、大手メーカーさんは引け腰で誰もやってくれなかったのです。仕方ないので、大手さんの下請けの工場を回って口説いて作ったのですが、そこでもやはり毒を少し加えるのですね。例えば漆喰でも、酢酸ビニルって、これも発がん物質なのですが、木工ボンドですよ。あれをちょっと混ぜると、ものすごく塗りやすくなってきれいになる。で、アレルギーがひどい人でなければわからないレベルなのですが、利便性と、それからビジネスで入れるのです。それで、ついにこれでは駄目だと思い、自分で作ろうと腹をくくってメーカーをやるぞと決めたわけです。
メーカーをやることで、経済活動の改善になったり地域再生の一助にもなる
作った人は一生の友達になりますから作ったあとにいろいろな情報をもらえたり、あげたりもできるというので、お仲間みたいになってしまいます。とてもやりがいがありますよね。それに、200~300年もつ家を造っているので、末代までお友達に(笑)。
それに、地方で頑張っている人に、たくさん大メーカーの本社がある東京に資本が集まるのではなくて、自然素材だから地方で作る。その地方にお金を渡せる。そうすると、今の経済活動の改善にもなったり、地域再生の一助になったりします。
また、メーカーをやっているので、ものづくりがわかるということから、「こう作ったら?」とか「こんなリスクがあるから、ここはこういうふうに改良したほうがいい」などの、情報交換でいろいろな場所をつなぐことができます。また、できない時は、「この機能だけこっちで作れるよ」と言って、つないであげたりというのができるようになったので、設計が深くなったというか、いわゆる「おさまり」を生かす設計ができるようになりましたね。
一番届けたい人達に、楽しい暮らしができることを体感して頂きたい
最近は、自治体からの依頼で地域再生の過疎地域対策の町おこしのコンサルタントで入っており、いい町に戻すために林業と林産加工業、農業再生の手法をアドバイスしたりなどの仕事を推進しています。そのために『天然住宅』という社団法人を立ち上げました。
地球にも人にも優しい健康住宅をもっとローコストで供給できるよう、アンビエックスで規格化を進めようとしています。以前は坪あたり百何十万していたのが80万まで落ちたのですが、やはり30過ぎくらいの若い人だと、それでもきついのです。それで、設計はしないけど規格化して、少し組み換えるだけで同じクオリティのものが、もっと割安で供給できるようになりました。
今では50~60万円台が可能となりました。そうすれば、ようやく私がこだわっていた一番届けたい人たち、つまり若くて、子どももできたばかりのような人たちに届けられる。それこそ、ジャンクフードばかり食べていたから子どもの健康を損なってしまったような人達が少なくない現代でも、素直にもっと楽しい暮らしができる事を体感して頂きたいのです。