- 掲載:2024年02月07日 更新:2024年08月06日
//= $nameTitle ?>建築におけるSDGs「いつまでも家族が輝ける家造り」
福島県福島市森合字西養山 15-1
1958年福島生まれ。日本大学工学部建築学科卒業。大学副手をへて建築修行ののち、1989年に「遠藤知世吉・建築設計工房」を開設。福島を中心に活躍しており、これまでもさまざまなコンペで最優秀賞・入選を獲得している。2019年に総合デザイン事務所「A&D 遠藤設計(ARCHITECT & DESIGNER)」としての活動も始め、建築設計と共に商品開発やプロダクト・グラフィックデザインを行っている。
<主な受賞歴>
2016年 福島県買取型復興公営住宅(福島市北沢又)プロポーザルコンペ:選定
2012年 富岡町 仮設高齢者等サポート施設プロポーザルコンペ:1位選定
2011年 福島県応急仮設住宅2次募集:1位選定
2011年 住宅建築プロジェクト:「回遊」にてグットデザイン賞受賞
2003年 WH社ネットコンペ「蔵王!」:1位選定
1995年 福島県「ふくしまの家」設計コンペ:最優秀
1993年 建築士会福島支部主催「福島住宅設計コンペ」:最優秀
プロは常に自分を磨くことが定めであり、
怠るときは"プロの世界"から降りるとき
ーデザインや設計力を磨くために努力していることはありますか。
建築のチカラを信じる設計者はより良き建築を求め、良い建築を生み出すためには設計力を磨く必要があります。プロの設計者になってから今までを「設計力アップのプレッシャー」との戦いとも言えます。
一時は建築の本しか読まない時期もあり、多くの講習会・イベント等にも参加してきました。
昨今はネットで情報を簡単に触れることが出来ます。
しかし、設計者は本物を知らなければ本物を造れず、良い建築を知らずして良い発想は生まれせん。そのため直接見て、聞いて、触るなど「五感」で体験することが重要と思い、機会あるごとに旅先での美術館や有名建築を巡りました。
また、設計者は自分の世界に入り過ぎて自己中心的・自己満足になりがちです。そのため自分の能力を客観的に判断してもらうため、多くの設計競技(設計コンペ)に参加してきました。それは1つの題材を通し、多くの設計者がどのように考えるかを知る場にもなりました。
さらに「建築家協会(JIA)」や「建築士会」の活動参加を通し、地域で生きる建築設計者の有様を見つめ、同じ設計者との情報交換を行い。お互いに切磋琢磨してきました。
そしてさらに重要なのは" 現場 "だと思っています。現場は建築関係業者、職人さん達との真剣勝負の場。思った通りにいくことも、そうでないこともあります。新しい技術、設備や材料、匠の技、人間研究等と現場で学ぶ事は数多くあります。
設計者にかかわらず、どの職業でも、プロは常に自分を磨くことが定めであり、もし怠るようであればプロの世界から降りる時だと肝に銘じています。
建築にデザイナーの感性を取り入れる
ー新しいことを取り入れたことがあれば教えて下さい。
地方都市福島で専業建築設計事務所として住宅設計中心に建築活動を行い、35年になります。
3年前からデザイナーを迎え、総合デザイン事務所「A&D遠藤設計(ARCHITECT & DESIGNER)」として再出発しました。建築の中にデザイナーの感性を取り入れたり、家具のデザイン・看板デザイン、その他プロダクトデザインなどを行っていきたいと考えます。
その中で建築に新たな息吹を盛り込めたら良いと思います。
設計者と現場監督の技術の” チカラ ”を
合わせることで、より良い建築が生む
ー現場での職人さんとのコミュニケーションで困ったことはありますか。
専業設計事務所の場合、一般的には現場監督さんとの打ち合わせになります。設計事務所の行う設計監理は「図面通り工事が実施されているかどうかの確認」です。厳密にいえば、工事前や工事中に不適切な工事をさせないよう指導・監督をするのは「現場監督(施工管理者)」の役割です。
そのため、極力、現場監督さん立ち合いの中で職人さんとの打ち合わせをします。
もし急を要するなどで、同席が不可能な場合は、あとで現場監督さんに設計者から内容を報告しなければなりません。それは工程上、施工上、納まり上の現場監督の考えがあるからです。設計者と現場監督さんの技術の" チカラ "を合わせるところに、より良い建築が生まれると信じています。
クライアントの熱心に負けないことが
建築家の" 最低条件 "
ー勉強熱心な施主に対してはどのように対応されていますか。
地方都市建築家のクライアント(施主)の多くは、良く勉強され建築にとても熱心です。
建築家の最低条件は、クライアントの熱心に負けないことで、設計者は日々勉強をしなければなりません。
しかし、時として新商品などを把握できない場面もあります。その場合は率直に話し、詳しく調べ、研究後に内容を再協議することとしています。
難しい要望も、時には新たな建築につながる
ー難しい注文又は無理な注文があった場合どのように対応しますか。
おそらくクライアントにとって、一生に一度である住宅建築。
そこで何十年も暮らすということは家族に様々な影響を及ぼします。例えば、朝陽の中での食事は気分が良く、食欲をそそり、家族の健康にも寄与するでしょう。これほどまでに大事な住宅建築です。
一生懸命になればなるほど無理な注文が出ることは当然と言えます。しかし、法律・構造・周りの環境・コストなどというように制約もあります。それをより良い方向に導くのが設計者の務めです。無謀と思われる要望であっても要望実現のための検討を行い、クライアントととことん話し合い結論を模索します。打ち合わせは1度で終わらず2・3度にわたる場合もあります。
一方、時として建築に携わる私たちは、知らず知らずの内に常識に囚われ過ぎ、クライアントの無茶と思われる要望は、新たな建築に繋がることもあります。
難しい注文や無理な注文こそ、設計者としてやりがいがあり、ファイトが湧きます。
住宅こそ" サステナブル(持続可能) "に
ーこれからの住宅のあるべき姿の考えを教えてください。
「SDGs(持続可能な開発目標)」が国連で採択され8年が経ちますが、住宅こそ、サステナブル(持続可能)とすべきです。それは単にエネルギーの問題だけでなく「家族の幸せを持続できる住まい造り」が使命と考えます。
昨今は工事価格が急上昇、ローン金利も上昇傾向にあり、建築環境が厳しくなっています。それにより住宅の床面積が縮小し、30年住宅ローンから50年ローンが出てくるほどクライアントの建築負担が増価しています。返済期間が延びると、その間に大規模修繕やリフォームが起きた場合、二重ローンの負担が生じてしまう可能性があります。
さらに、火事・地震・洪水などの災害が頻発しています。そんな中での建築の" SDGs "は、「将来を見越した長持ちする家」造りとすべきです。
それは
①災害に強く、地震・突風・火災等の対策を施した住まい
②省エネルギーの高断熱や自然エネルギー利用のパッシブ建築
③100年住み続けられ、将来を見通してフレキシブルに使え、修繕しやすい家
④古民家再生等により新築では出せない味を引き出す
⑤地域のコミュニケーションを作る家
などです。設備機器においては「壊れたら交換する」でなく、「直しながら長く使える」にシフトできれば精神衛生上も良いと思います。
建材においても「手入れをしながら長く使える」「修繕しやすい」「いつまでもある」が住まいの持続可能への道につながります。完成すると数十年以上使い続ける事になる建築物、流行り廃りに左右されず、いつまでも家族が輝き続けれる住まいとしたいものです。