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掲載:2020年10月30日更新:2020年10月30日

「音」に注目して、住環境をもっとストレスフリーにしよう

2020年の新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、「在宅」というキーワードがよく聞かれるようになりました。 不本意な自粛を強いられる状況ではあるものの、家で過ごす時間をより快適にするために「騒音」と「防音」について知り、暮らしの音環境を改善することには多くのメリットがあります。
この記事では、

・生活の中の音や騒音レベルに関する基礎知識
・騒音が私たちの生活に及ぼす影響
・騒音をカットしてストレスフリーな住環境を作るアイデア

についてご紹介します。

覚えておきたい住環境における音の基本

音の指標となる「音圧レベル(dB)」とは?

音の大きさを示す「デシベル(dB)」という単位は広く知られているでしょう。 デシベルは「音量」の単位ということもできますが、正確には「音圧レベル」を示す単位で、「音圧」のみを示す単位としては、気圧などと同じ単位「パスカル(Pa)」が使用されます。

微かな音から聴覚に異常をきたすような大音量まで、人間の耳で感知できる音をパスカルという単位で表そうとすると、数値には6桁(倍率で100万)もの開きが生じてしまいます。 それだと桁数が大きく分かりにくいものになってしまうため、人間の聴覚を基準にして音の大きさを3桁以内の数値で表現できるようにしたデシベルという単位が用いられているのです。

環境省が示す、生活における音圧レベルの基準

騒音レベルのおおよその目安

わたしたちの耳には何デシベル以上の音がうるさく、また何デシベル以下であれば静かに感じられるのでしょうか。 環境省が2019年に発行した「生活騒音パンフレット」によると、大まかな目安は下記のようになります。

・30dB:かなり静か。例)ホテルの室内
・40dB:静か。例)図書館内、深夜の住宅地
・50dB:普通。例)昼間の高層住宅地
・60dB:ややうるさい。例)銀行窓口、博物館内
・80dB:かなりうるさい。例)飛行機内、セミの声
・90dB:非常にうるさい。例)パチンコ店内。

環境省による、音の「環境基準」

音はわたしたちの生活に大きく影響する要因の一つであるため、環境省は「騒音に係る環境基準」を設け、生活環境ごとに「何dB以下であれば快適か」を示しています。 その基準によると、

特に静穏であることを要する地域(療養施設や社会福祉施設などが集合している地域)
 →昼間50dB以下、夜間40dB以下
一般的な住宅地
 →昼間55dB以下、夜間45dB以下
住宅に加えて商業・工業の行われる
 →昼間60dB以下、夜間50dB以下

と指定しており、さらに2車線以上の道路に面しているかどうかなどの条件がこの基準に加味されます。

生活の中の“音”に注目すべき3つの理由


わたしたちが生活の中の音に気を配るべきなのは主に下記のような3つの理由によります。

1.騒音は病気の原因になることがある

世界保健機関(WHO)が2018年に発表した「欧州騒音環境ガイドライン」では、騒音と高血圧や心疾患の因果関係が指摘されています。 また、昼間の騒音ストレスが蓄積し、夜間の静かな環境下でも睡眠不足に陥ってしまうというケースもあるようです。 生活に関する騒音のほとんどは聴覚に異常をきたすような大音量ではありませんが、不快と感じる音であれば大きな音でなくても強いストレスの原因になり、上記のような健康上の問題を引き起こしかねません。

2.集中力・作業効率が低下する

多くの人が経験を通してよく知っている通り、騒音の中では集中力・作業効率が低下してしまいます。 オフィスのように作業に集中しやすいように作られているスペースでは問題になることは少ないかもしれませんが、2020年以降定着しつつあるテレワークにおいて、自宅だと作業が捗りにくいと感じる一つの原因は音にあるかもしれません。 この点に関しては、必ずしも静かであればあるほど集中力が高まるというわけではなく、同じレベルの音でもエアコンや時計の音よりも会話の声や工事音の方が集中力を阻害する傾向にあります。

3.ご近所トラブルの原因になる

生活騒音に関して、法律による規制や罰則規定が設けられているわけではありませんが、騒音を原因とするご近所トラブル、ひいては訴訟問題も少なくありません。 訴訟にまで発展するトラブルは、多くがライブハウスやカラオケなど、そもそも騒音が発生しやすい施設に関係するケースが多いものの、集合住宅の生活音によるトラブルも多く報告されています。 近隣との良いお付き合いのためにも音には気を配る必要があります。

快適な住環境のため、コントロールすべき2種類の音

テレワークであれ休息であれ、快適に過ごすためには住環境における音を適切にコントロールしたいところです。 上記の通り、静かと感じる住環境のためには屋内の音圧レベルを50dB以下にしたいところですが、ストレスフリーを目指して音をしっかりコントロールするには、音の種類によって騒音への対処方法が異なることを覚えておきましょう。 音には主に下記の2種類があります。

①空気音

空気音(空気伝播音)とは、空気を介して伝わってくる音のことで、住環境では

・話し声
・テレビの音や音楽など、スピーカーから出る音
・ペットの鳴き声

などが空気音にあたります。

②固体音

固体音(固体伝播音)とは、空気ではなく物体を介して伝わってくる音のことで、住環境では

・ドアを閉める音
・上階を人が歩く音
・車のエンジン音

などが固体音にあたります。
集合住宅であればご近所トラブルにつながるケースが多く、近隣を不愉快にさせないように気を付けたい騒音です。

住まいの防音性能を高める3つのポイント

1.空気音は「窓」の気密性を高めてシャットアウト

生活に関係する騒音の多くは、空気音にあたります。 そのため、家屋や部屋の気密性を高めて空気音をブロックすれば、騒音をかなりの程度緩和することが可能です。 外の騒音の大部分は窓を通して侵入してくるので、騒音対策としては特に窓の気密性を高めることが効果的です。 サッシの防音性能が低いようであれば、サッシを交換するより二重サッシにする、つまり既存の窓の室内側に内窓を増設する方が簡単で、費用もたいていの場合交換より安くなります。

2.固体音には、振動を消す構造で対処する

集合住宅でトラブルになりがちな床の歩行音は固体音であるため、振動自体を緩和する床構造にすると、歩行の騒音はかなり緩和されます。 現在、RC造の集合住宅であれば床スラブの厚さは200〜250mmが一般的で、古いRC造だと床スラブは150mm程度の薄さのものもあります。 床スラブが200mm以上あれば歩行音はかなり響きにくくなりますが、150mm程度しかなければ歩行音はかなり気になるかもしれません。 スラブを介して響く歩行音を緩和するためには、

・直張りでも防音性を持つフローリングにする
・スラブとフローリングの間に床防音マットを敷き込む

などの対策が有効で、もちろんこの方法はRC造だけでなく木造建築の場合にも効果的です。 さらに、スラブの薄いRC造では、束(つか)のような支持脚でフロアを持ち上げ二重床にするという方法でも防音性能を高めることが期待できます。 ドアの開閉音が気になるなら、ドアがゆっくり閉まるようにするドアクローザーの設置が有効です。

3.「壁」を、音をはね返す構造にする

外部の騒音をカットするには、壁の遮音性能を高めることも効果的です。 日本の一般的な木造住宅には外壁内に断熱材としてグラスウールが充填されていますが、このグラスウールは断熱だけでなく音を吸収する働きもするため、たいていの建築物はある程度の防音性能を持っていますが、さらに外壁の防音性能を高めたい場合には、

・外壁の下地に遮音シートを貼る
・遮音性のある塗料で外壁塗装する

などの方法が効果的です。

まとめ

当然、「うるさい」と感じるような騒音は私たちに多かれ少なかれ影響を与えていますが、「うるさい」と感じなくても知らず知らずのうちに騒音の影響を受けている、というケースもあります。 騒音はスマホのアプリなどでも簡易的に計測できますので、一度住まいの音環境をチェックしてみて、改善できる点を探してみるのも良いかもしれません。


著者(澤田 秀幸)プロフィール

CAD利用技術者1級、CADアドミニストレーター
住宅メーカの下請けとして木造大工作業を担当。
注文家具の製造と設置。製図補助を担当。
国内最大手インテリアメーカーの店舗で接客・販売を担当。






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