COLUMN
コラム
なぜいま国産木材が大きく注目されるのか?利用するメリットや新技術も解説
建築において木材は切っても切れない大切な材料の一つです。
柱や梁と言った重要な構造部分、そして仕上材としても様々な箇所に利用されています。
住まいを探すユーザーの木造住宅への関心は非常に高く、内装材としても常に注目を集めています。
この木材、単純に一括にされますが、実は大きく分類すると国内産と外国産になります。
価格や供給量を重視し、今までは外国産木材が主流として流通してきました。
ところが最近、国産木材が再び強い注目を集めています。
国産木材に注目が集まり始めた理由、その背景、さらには国産木材を利用するメリットについてわかりやすく解説させて頂きます。
また、国産木材を活用した新技術についても紹介させて頂きます。
1.国産木材の価値
人類と木材の関わりは非常に古く、日本では3万年以上も昔から住宅の材料として活用されてきました。
国土の7割近くが森林の日本は、古くから木や森と密接な関係のもとで生活が成り立ってきました。
森林は木材の供給だけでなく、木の実やきのこ類と言った食料、落ち葉や樹皮は燃料としても活用されてきました。
7世紀頃には大規模な木造建築物が作られるようになり、急激に建築用資材としての利用価値が高まりました。 軽くて強い、そして加工性が良く、耐久性も十分な木材は理想的な建築材料です。
木材は構造材としての利用だけでなく、内装材としても高い利用価値があります。 桧の香りは鎮静作用と強壮作用があり、 気持ちが落ち着き、癒やし効果があることでも有名です。 フローリング材も天然木材に人気があり、温かみのある柔らかいイメージが常に人気を誇る材料です。
木材は、大きく分けると国産材と輸入材があります。 日本の風土や気候は諸外国とは異なり、ハッキリと別れた四季、高温多湿で雨量の多い夏などの独特の条件があります。
建築材料として利用する場合、この風土や気候に適した材料を使うことが好ましいと言われます。 特に構造材として使う場合は長期間の健全保持が大切なポイントとなります。 独特の気象条件で育った国産木材だからこそ、建築材料として最も適合した材料であると言えます。
7世紀頃には大規模な木造建築物が作られるようになり、急激に建築用資材としての利用価値が高まりました。 軽くて強い、そして加工性が良く、耐久性も十分な木材は理想的な建築材料です。
木材は構造材としての利用だけでなく、内装材としても高い利用価値があります。 桧の香りは鎮静作用と強壮作用があり、 気持ちが落ち着き、癒やし効果があることでも有名です。 フローリング材も天然木材に人気があり、温かみのある柔らかいイメージが常に人気を誇る材料です。
木材は、大きく分けると国産材と輸入材があります。 日本の風土や気候は諸外国とは異なり、ハッキリと別れた四季、高温多湿で雨量の多い夏などの独特の条件があります。
建築材料として利用する場合、この風土や気候に適した材料を使うことが好ましいと言われます。 特に構造材として使う場合は長期間の健全保持が大切なポイントとなります。 独特の気象条件で育った国産木材だからこそ、建築材料として最も適合した材料であると言えます。
2.国産木材と輸入木材
国産木材は建築材料として最も適合した材料であるにもかかわらず、日本の建築物には輸入木材が多く利用されてきました。
その背景には昭和39年の木材輸入の自由化があり、外国産木材が安価で大量に入手できるようになったためです。
この時代は経済成長と人口増加による住宅供給が増え、木材の需要量がピークに達しました。
より安く、より多くの住宅を供給する目的があり、コスト面で優れていた輸入木材を主流とした木造住宅供給が進みます。
やがて住宅着工戸数の減少から木材供給量が減少し、現在では長期的に右肩下がりの市場となっています。
木材の輸入量は1996年を頂点にして減少していますが、実は国産木材の供給量は増加傾向にあります。 2002年には18.8%だった木材自給率が2017年は36.1%まで上昇しています。 これは30年前の水準とほぼ同じ割合です。 木材自給率上昇の大きな原因は輸入木材の価格高騰です。 現在はハウスメーカーさえも高騰する輸入木材から国産木材の利用に移行しつつあります。
建築に利用される木材のうち、特に合板は外国産輸入丸太の供給の不安定から国産材利用の割合が急上昇しています。 また人工乾燥材(KD材)や集成材の技術も進み、国産木材の有効活用に注目が集まっています。
ちなみに木材需要の内訳は、2017年の記録によると
となっています。
木材の輸入量は1996年を頂点にして減少していますが、実は国産木材の供給量は増加傾向にあります。 2002年には18.8%だった木材自給率が2017年は36.1%まで上昇しています。 これは30年前の水準とほぼ同じ割合です。 木材自給率上昇の大きな原因は輸入木材の価格高騰です。 現在はハウスメーカーさえも高騰する輸入木材から国産木材の利用に移行しつつあります。
建築に利用される木材のうち、特に合板は外国産輸入丸太の供給の不安定から国産材利用の割合が急上昇しています。 また人工乾燥材(KD材)や集成材の技術も進み、国産木材の有効活用に注目が集まっています。
ちなみに木材需要の内訳は、2017年の記録によると
・製材用として32%、
・合板用が13%、
・パルプ・チップ用が40%
・合板用が13%、
・パルプ・チップ用が40%
となっています。
3.山林が整然だとメリットが多い
国産木材を利用するメリットは建築材料としての経済面だけではありません。
豊富な森林資源を有効活用し、山林を整然と維持管理することは洪水や土砂災害の防止にも繋がります。
また森林は二酸化炭素の吸収効果があり、近年問題視される環境保護問題にも大きく関与しています。 国産木材市場の活性は雇用創生の場としても重要視されています。
こうした背景から政府は国産木材の活用に力を入れ、農林水産省は平成21年に「森林・林業再生プラン」を策定しました。 木材自給率50%以上にする大きな目標を掲げたのですが、残念ながら木材自給率50%の目標が2020年には届かず、目標達成時期は先送りされることになりました。
しかし今後も政府は木材自給率50%以上を目指して様々な対策を講じると予測されています。 いま国産木材市場に注目が集まる大きな理由がここにあります。
また技術面でも林業は大きな変化を遂げています。 従来の林業は人間の手作業に委ねる部分も多かったのですが、近年はICT活用で新たな仕組みが構築されています。 航空レーザ計測による立木や地形情報の把握、森林GISやクラウドによる資源や需要情報の共有など、最先端技術を利用した「スマート林業」が進みつつあります。 安定した木材供給体制ができると、さらにリーズナブルな国産木材が市場に流通し、良い循環が生まれるでしょう。
また森林は二酸化炭素の吸収効果があり、近年問題視される環境保護問題にも大きく関与しています。 国産木材市場の活性は雇用創生の場としても重要視されています。
こうした背景から政府は国産木材の活用に力を入れ、農林水産省は平成21年に「森林・林業再生プラン」を策定しました。 木材自給率50%以上にする大きな目標を掲げたのですが、残念ながら木材自給率50%の目標が2020年には届かず、目標達成時期は先送りされることになりました。
しかし今後も政府は木材自給率50%以上を目指して様々な対策を講じると予測されています。 いま国産木材市場に注目が集まる大きな理由がここにあります。
また技術面でも林業は大きな変化を遂げています。 従来の林業は人間の手作業に委ねる部分も多かったのですが、近年はICT活用で新たな仕組みが構築されています。 航空レーザ計測による立木や地形情報の把握、森林GISやクラウドによる資源や需要情報の共有など、最先端技術を利用した「スマート林業」が進みつつあります。 安定した木材供給体制ができると、さらにリーズナブルな国産木材が市場に流通し、良い循環が生まれるでしょう。
4.国産木材の自治体やメーカーの取り組み
木材自給率50%以上を目指して頑張っているのは政府だけではありません。
自治体やメーカーも、経済対策・災害防止・雇用創生のために様々な取り組みを実施しています。
各都道府県では、それぞれが国産木材の需要拡大に向けて活発的に独自の取り組みを行っています。 平成22年に施行された公共建築物等木造利用促進法に伴い、国産木材を積極的に利用する自治体も多くあります。
ブロック塀の倒壊で大惨事を引き起こした大阪北部地震のあと、全国の国公私立の小中高校と幼稚園で危険なブロック塀を調査し、問題のあるブロック塀の整備が進んでいます。 この塀の材料にも軽量でメリットの多い国産木材が積極的に活用されています。 また木造に強い建築士の育成や、海外への輸出販路拡大、そして間伐材の活用にも様々な取り組みが始まっています。
その他、国産木材を利用することで助成金や補助金を支給している自治体もあります。
北海道木材産業協同組合連合会は、道産建築材利用支援事業として道産材を使った家づくりの助成金を支給しています。
各都道府県では、それぞれが国産木材の需要拡大に向けて活発的に独自の取り組みを行っています。 平成22年に施行された公共建築物等木造利用促進法に伴い、国産木材を積極的に利用する自治体も多くあります。
ブロック塀の倒壊で大惨事を引き起こした大阪北部地震のあと、全国の国公私立の小中高校と幼稚園で危険なブロック塀を調査し、問題のあるブロック塀の整備が進んでいます。 この塀の材料にも軽量でメリットの多い国産木材が積極的に活用されています。 また木造に強い建築士の育成や、海外への輸出販路拡大、そして間伐材の活用にも様々な取り組みが始まっています。
その他、国産木材を利用することで助成金や補助金を支給している自治体もあります。
・奈良県:奈良の木を使用した住宅への助成制度
・大阪府:和泉市では和泉市内産木材の利用による補助金を支給
・兵庫県:県産木材利用木造住宅に対する特別融資制度
・大阪府:和泉市では和泉市内産木材の利用による補助金を支給
・兵庫県:県産木材利用木造住宅に対する特別融資制度
北海道木材産業協同組合連合会は、道産建築材利用支援事業として道産材を使った家づくりの助成金を支給しています。
5.新技術CLTが国産木材の新時代を築く
国内産木材を利用した新たな市場として注目を浴びているのが「CLT」です。
CLTとはCross Laminated Timberの略で、直交集成板を指します。 通常の集成材は同じ繊維方向にひき板を接着接合しますが、CLTはひき板を繊維方向に直交して積層接着したパネルです。 主に杉や桧と言った軽量の木材を主原料とします。
現時点では最大3m×12mの巨大なパネルが作成可能です。
このCLTは欧米を中心に広まりを見せ、マンションや商業施設と言った大型の建築物にも利用されています。 木造ビルが建築可能と言うことで、新たな市場の創造として注目の的になっている新技術です。
CLTは軽量のため、大スパン建築物での利用が可能です。 パネル化されているので施工が早く、コンクリートに比べると遥かに短期間で工事が完了します。 鉄やコンクリートより軽量のため、基礎の簡略化もでき、さらにパネル自体が高い断熱性能を有します。 もっとも心配される耐火性も優れ、今後の大型建築の新しい可能性を生み出すことは間違いありません。
技術面だけでなく、このCLTは国も大きな期待を持って取り組みを行っています。
自民党の有志議員の連盟ですが、CLTで地方創生を実現しようとする議員連盟が2016年に設立され、会長には石破茂氏が就任していいます。
新しい技術が国内産木材の需要をますます加速させると期待が集まっています。
CLTとはCross Laminated Timberの略で、直交集成板を指します。 通常の集成材は同じ繊維方向にひき板を接着接合しますが、CLTはひき板を繊維方向に直交して積層接着したパネルです。 主に杉や桧と言った軽量の木材を主原料とします。
現時点では最大3m×12mの巨大なパネルが作成可能です。
このCLTは欧米を中心に広まりを見せ、マンションや商業施設と言った大型の建築物にも利用されています。 木造ビルが建築可能と言うことで、新たな市場の創造として注目の的になっている新技術です。
CLTは軽量のため、大スパン建築物での利用が可能です。 パネル化されているので施工が早く、コンクリートに比べると遥かに短期間で工事が完了します。 鉄やコンクリートより軽量のため、基礎の簡略化もでき、さらにパネル自体が高い断熱性能を有します。 もっとも心配される耐火性も優れ、今後の大型建築の新しい可能性を生み出すことは間違いありません。
技術面だけでなく、このCLTは国も大きな期待を持って取り組みを行っています。
自民党の有志議員の連盟ですが、CLTで地方創生を実現しようとする議員連盟が2016年に設立され、会長には石破茂氏が就任していいます。
新しい技術が国内産木材の需要をますます加速させると期待が集まっています。
6.まとめ
いかがでしたか?なぜいま国産木材が大きく注目されるのかの理由がお分かり頂けたでしょうか。
コスト面で大きく左右される木材の需要ですが、近年急激に競争力を付けてきました。
しかし国産木材を取り巻くすべての課題が解決したわけではありません。 今後は少子高齢化の影響で新築住宅需要はさらに減ると言われ、新たな市場の開拓が必須です。 リフォーム工事で利用される木材の量は新築ほど多くはありません。 大量の木材を利用するためには、CLTを中心とした木材の普及が大きな鍵を握っているとも言えるでしょう。
また国産木材の輸出による販路拡大も大きな課題です。
今まで以上にコストダウンと技術革新を図る必要性があります。 コスト面だけでなく、技術面においても専門の技術者の育成が急がれるでしょう。 CLTや木材を有効活用する建築計画や設計が今後の主役となる可能性は高いと言えるでしょう。
RC造や鉄骨造と並び、木造ビルが立ち並ぶ景色が見られる日が来るのも遠い未来の話ではないのかも知れません。
コスト面で大きく左右される木材の需要ですが、近年急激に競争力を付けてきました。
しかし国産木材を取り巻くすべての課題が解決したわけではありません。 今後は少子高齢化の影響で新築住宅需要はさらに減ると言われ、新たな市場の開拓が必須です。 リフォーム工事で利用される木材の量は新築ほど多くはありません。 大量の木材を利用するためには、CLTを中心とした木材の普及が大きな鍵を握っているとも言えるでしょう。
また国産木材の輸出による販路拡大も大きな課題です。
今まで以上にコストダウンと技術革新を図る必要性があります。 コスト面だけでなく、技術面においても専門の技術者の育成が急がれるでしょう。 CLTや木材を有効活用する建築計画や設計が今後の主役となる可能性は高いと言えるでしょう。
RC造や鉄骨造と並び、木造ビルが立ち並ぶ景色が見られる日が来るのも遠い未来の話ではないのかも知れません。
著者(田場 信広)プロフィール
・一級建築士、宅地建物取引士
・建築設計、工事監理、施工(大工)、戸建て木造住宅の新築からリフォーム全般、分譲マンションの内装改修、マンションの大規模修繕工事の設計・設計管理、警察署の入札仕事や少年院の特殊な工事も経験
・某資格学校にて2級建築士設計製図コースの講師を6年務める
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