COLUMN
コラム
ご存知ですか?「近代照明の三原則」
近代照明の父と呼ばれる人物が提唱した「三原則」とは?
ル・コルビュジエの「近代建築の五原則」は建築に関係する人の間ではあまりにも有名ですが、実は今から100年ほど前、照明に関しても「近代照明の三原則」とも言えるものを提唱した人物がいました。
その人物とはデンマーク生まれの建築家兼照明デザイナー、ポール・ヘニングセンです。
その人物とはデンマーク生まれの建築家兼照明デザイナー、ポール・ヘニングセンです。
ポール・ヘニングセンとはどんな人物か
照明の歴史を簡単に振り返ると、1879年にトーマス・エジソンがフィラメントによる電球を発明して以降、照明の存在意義は劇的に変わりました。
一般市民の間で電球がランプやガス灯にとって変わって定着し始めた20世紀の初め、1920年ごろからポール・ヘニングセンは建築家としてキャリアをスタートさせます。
建築とあわせて照明・光にも強い関心を抱いていたヘニングセンは、まだ良質な照明器具が無かった当時、新時代の基準となる照明器具を理論から自分で作るという偉業を成し遂げました。
一般市民の間で電球がランプやガス灯にとって変わって定着し始めた20世紀の初め、1920年ごろからポール・ヘニングセンは建築家としてキャリアをスタートさせます。
建築とあわせて照明・光にも強い関心を抱いていたヘニングセンは、まだ良質な照明器具が無かった当時、新時代の基準となる照明器具を理論から自分で作るという偉業を成し遂げました。
ポール・ヘニングセンの「近代照明の三原則」と照明哲学
ポール・ヘニングセンが自ら提唱した照明の原則と哲学に基づいてデザインした照明器具は、「PH」という彼のイニシャルが冠されたプロダクトシリーズとして現在でも世界中で愛されて、利用されています。そのことからもヘニングセンの業績の重要性を測り知ることができますが、彼の照明デザインの背後には、
ポール・ヘニングセンによるこの「近代照明の三原則」は、人間の生活そのものに対する彼の考え方が現れていると言えるかもしれません。
電球の登場は当時の世界にとって、夜にも昼間のような明るさを作り出す大きなイノベーションでしたが、「照明によって夜を昼にする必要はない」というのが、ヘニングセンの照明に対する考え方でした。昼の明るい光の中では活発に活動し、黄昏時から夜にかけては強い光を必要としない安らぎの時間とすることが、人間本来のリズムに合っているということをヘニングセンは気づいていたようです。
もちろん、ヘニングセンが生まれ育った北欧と私たちの暮らす日本では、緯度・気象条件・国民性など照明を考える上で条件の異なる部分もありますが、「近代照明の三原則」を理解しておけば、適切な照明とは何かをシンプルに理解し、また応用方法を考えるのも容易になります。
● グレアを避けること
● 必要な場所に適切な光を配置すること
● 用途に応じた、適切な色の光を用いること
という、シンプルかつ重要な三つの原則があります。● 必要な場所に適切な光を配置すること
● 用途に応じた、適切な色の光を用いること
ポール・ヘニングセンによるこの「近代照明の三原則」は、人間の生活そのものに対する彼の考え方が現れていると言えるかもしれません。
電球の登場は当時の世界にとって、夜にも昼間のような明るさを作り出す大きなイノベーションでしたが、「照明によって夜を昼にする必要はない」というのが、ヘニングセンの照明に対する考え方でした。昼の明るい光の中では活発に活動し、黄昏時から夜にかけては強い光を必要としない安らぎの時間とすることが、人間本来のリズムに合っているということをヘニングセンは気づいていたようです。
もちろん、ヘニングセンが生まれ育った北欧と私たちの暮らす日本では、緯度・気象条件・国民性など照明を考える上で条件の異なる部分もありますが、「近代照明の三原則」を理解しておけば、適切な照明とは何かをシンプルに理解し、また応用方法を考えるのも容易になります。
原則①:眩しさを避ける
三原則の一つは、「グレア(眩しさ)」を避けることです。
日本の環境省による「光害対策ガイドライン」でも、眩しい人工光は時に人間に不快感・いらだち感・注意散漫、条件によってはグレアで逆に物が見えにくくなるという視認性低下などの悪影響が挙げられています。
このガイドラインは屋外環境を念頭に置いたものかもしれませんが、人間によくない影響があることは居住環境に関しても当てはまるでしょう。
実際、良質な睡眠のためには脳内で生成されるメラトニンが重要な役割を果たしますが、本来であれば日没以降徐々に分泌量が増えていくメラトニンが、グレアを含む明るい光の下では分泌量が低いままとなり、睡眠に悪影響を及ぼすということがわかっています。
ヘニングセンのデザインした照明では電球(光源)が基本的には目に入らない間接照明の要素が巧みに使われていますが、グレアを避けるには、そのように間接照明を活用するのが理想的です。
また、新築やリフォームの際に照明を検討する場合には、壁・天井に反射する光にも注目し、照明と内装材をセットで計画するなら、グレアを避けつつ効率的な照明とすることができるでしょう。
日本の環境省による「光害対策ガイドライン」でも、眩しい人工光は時に人間に不快感・いらだち感・注意散漫、条件によってはグレアで逆に物が見えにくくなるという視認性低下などの悪影響が挙げられています。
このガイドラインは屋外環境を念頭に置いたものかもしれませんが、人間によくない影響があることは居住環境に関しても当てはまるでしょう。
実際、良質な睡眠のためには脳内で生成されるメラトニンが重要な役割を果たしますが、本来であれば日没以降徐々に分泌量が増えていくメラトニンが、グレアを含む明るい光の下では分泌量が低いままとなり、睡眠に悪影響を及ぼすということがわかっています。
ヘニングセンのデザインした照明では電球(光源)が基本的には目に入らない間接照明の要素が巧みに使われていますが、グレアを避けるには、そのように間接照明を活用するのが理想的です。
また、新築やリフォームの際に照明を検討する場合には、壁・天井に反射する光にも注目し、照明と内装材をセットで計画するなら、グレアを避けつつ効率的な照明とすることができるでしょう。
原則②:場所ごとの適切な配光
二つ目の照明の原則は「適切な場所への配光」というものです。
照明は、
主にくつろいで過ごすことが目的の部屋であれば、部屋全体が均一に明るい必要はないため、部分照明を利用するのが良いかもしれません。
例えば、ワンルームの生活であればデスクワークも就寝も同じ部屋で行う必要があるかもしれませんが、部屋をデスクワーク向きの全般照明にしてしまうと睡眠やリラックスして過ごす時間の質が低下してしまうかもしれません。
そのような場合には、メインになるシーリングライトの明るさを抑え、デスクワーク時には明るめのデスクライトを使用するなど、複数の照明を組み合わせるなら部屋で過ごす時間はより快適にすることができます。
この点で有名なビジネスホテルにおける客室の配光はよく考えて設計されており、デスクまわり・ベッドまわり・ドアまわり・化粧鏡まわりなど、それぞれ用途に応じた照明器具が設置されています。
ホテルの照明は一般家庭の照明より暗めに感じられるかもしれませんが、実はこのような計画的な照明設計によって、滞在する人は大抵のことを適切な光量のもとで行うことが可能になっているのです。
次にホテルを利用する際には、照明の配置にも注目してみると、参考になる配光のアイデアを発見できるかもしれません。
照明は、
● 全体を均一に明るくする「全般照明」
● 部分的に明るくする「部分照明」
の2種類に分けて考えると計画しやすくなります。● 部分的に明るくする「部分照明」
主にくつろいで過ごすことが目的の部屋であれば、部屋全体が均一に明るい必要はないため、部分照明を利用するのが良いかもしれません。
例えば、ワンルームの生活であればデスクワークも就寝も同じ部屋で行う必要があるかもしれませんが、部屋をデスクワーク向きの全般照明にしてしまうと睡眠やリラックスして過ごす時間の質が低下してしまうかもしれません。
そのような場合には、メインになるシーリングライトの明るさを抑え、デスクワーク時には明るめのデスクライトを使用するなど、複数の照明を組み合わせるなら部屋で過ごす時間はより快適にすることができます。
この点で有名なビジネスホテルにおける客室の配光はよく考えて設計されており、デスクまわり・ベッドまわり・ドアまわり・化粧鏡まわりなど、それぞれ用途に応じた照明器具が設置されています。
ホテルの照明は一般家庭の照明より暗めに感じられるかもしれませんが、実はこのような計画的な照明設計によって、滞在する人は大抵のことを適切な光量のもとで行うことが可能になっているのです。
次にホテルを利用する際には、照明の配置にも注目してみると、参考になる配光のアイデアを発見できるかもしれません。
原則③:適切な色の光を用いる
朝・昼・夕と、太陽は明るさだけでなく色温度も変化していくことに注目したヘニングセンが導き出した3つ目の原則が、「用途・目的にごとの適切な色の照明を使用すること」です。
光は、色温度が低いほど赤く(例:焚き火の赤い炎)、色温度が高ければ青白く(例:昼光色の蛍光灯)なります。
色温度ごとの光のイメージとしては、
例えば、高級レストランはゆっくりと食事を楽しむのが目的のため色温度が低い照明が好まれ、ファストフード店などでは多くの利用客が短時間で食事を済ませるため、高めの色温度が好まれる傾向にあります。
ちなみに欧米と比べると、日本では色温度の高い照明が好まれるようです。
光は、色温度が低いほど赤く(例:焚き火の赤い炎)、色温度が高ければ青白く(例:昼光色の蛍光灯)なります。
色温度ごとの光のイメージとしては、
● 色温度が低い:歴史のある、リラックスできる雰囲気の照明
● 色温度が高い:近代的・活動的・生産的な照明
となります。● 色温度が高い:近代的・活動的・生産的な照明
例えば、高級レストランはゆっくりと食事を楽しむのが目的のため色温度が低い照明が好まれ、ファストフード店などでは多くの利用客が短時間で食事を済ませるため、高めの色温度が好まれる傾向にあります。
ちなみに欧米と比べると、日本では色温度の高い照明が好まれるようです。
身の回りの照明に当てはめてみると、ダイニングキッチンでは食事をゆっくり楽しむためには色温度が低めの照明が理想的ですが、調理の際に食材の鮮度を確認したり火の通り具合を確認したりする際には色温度が高い方が好ましいため、ダイニング部分とキッチン部分の照明は分けて計画すると良いでしょう。
まとめ
私たちの心理や健康に、光・照明が大きく影響を与えていることは広く知られるようになりました。
現代人はパソコン・スマートフォン・明るいオフィスで夜遅い時間までの勤務など、多くの人がいまだかつてないほど光にさらされ続けています。
今いちど、ポール・ヘニングセンの「近代照明の三原則」を参考に身の回りの光・照明のあり方を省みるなら、生活のオンとオフのメリハリをつけ、暮らしをより生産的・健康的にするヒントを発見することができるでしょう。
現代人はパソコン・スマートフォン・明るいオフィスで夜遅い時間までの勤務など、多くの人がいまだかつてないほど光にさらされ続けています。
今いちど、ポール・ヘニングセンの「近代照明の三原則」を参考に身の回りの光・照明のあり方を省みるなら、生活のオンとオフのメリハリをつけ、暮らしをより生産的・健康的にするヒントを発見することができるでしょう。
著者(澤田 秀幸)プロフィール
CAD利用技術者1級、CADアドミニストレーター
住宅メーカの下請けとして木造大工作業を担当。
注文家具の製造と設置。製図補助を担当。
国内最大手インテリアメーカーの店舗で接客・販売を担当。
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