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掲載:2021年04月22日更新:2021年04月22日

建築士の自宅は本当にオシャレなのか?

建築士の自宅は本当にオシャレなのか?

「建築士」は時々ドラマにも登場し、世間一般的なイメージとしては「格好良い仕事」のイメージが強い職業だと思います。

子供がなりたい職種にも常に上位ランキングし、大人でも建築士に対する憧れを持つ人は多いようです。 格好良くバリバリ仕事が出来るイメージがあり、センスが飛び抜けて良く、オシャレな自宅に住んでいると言うイメージがあるのではないでしょうか。

私は長年建築業界に携わり、一級建築士も取得し、設計事務所も立ち上げています。

想像と現実が乖離する職業はたくさんありますが、建築士の現実はどうでしょうか?
はたして、建築士はステキな仕事か?建築士はどんな仕事をしているのか?建築士としてあるべき理想の姿とは?
そして「建築士の自宅は本当にオシャレなのか?」について、気になる建築士と言うお仕事の現実を紹介させて頂きます。

1. 世間一般的な建築士のイメージ

建築士の自宅は本当にオシャレなのか?

どのような仕事でもイメージと現実のギャップは存在しているでしょう。特にドラマに登場する職種や仕事はその傾向が強いようです。医者、医療関係者、弁護士、刑事、教員と言った職種は美化されたイメージが定着しているかも知れません。

最近放映されていたドラマ「恋する母たち」には建築士が登場していました。
世の中にはドラマ以上にすごい人材も実在しますが、大半はドラマほどキレイでもなく、イメージ通りではありません。

建築士も美化された強いイメージのある職種の一つでしょう。
現実にこの業界に携わっていると、「世間の想像とは違うなあ」と感じる事が多々あります。
世間一般的な建築士のイメージと言えば「オシャレ」「高所得」「威厳がある」「芸術家」「取っ付き難い」「独創的」「ステキな自宅」このような感じではないでしょうか。

以前私が知り合いから耳にした話では、開業した建築士は年収数千万円と言うイメージがあるそうです。 テレビ出演される有名な建築家の先生のイメージが定着している影響でしょうか、世間一般的な「建築士」のイメージはかなりハイレベルのようです。

そんな建築士に憧れて建築業界に足を踏み入れる人も居ますが、建築士と言う仕事の現実の姿をもう少し詳しく見てみましょう。


2.「建築士」と「建築家」と「設計士」の違い

建築士の自宅は本当にオシャレなのか?

「建築士」と「建築家」と「設計士」を混同される人も多いのですが、実際この3つは異なります。まずこの違いを説明します。

「建築士」とは、資格の名称を表します。 建築士には「一級建築士」「二級建築士」「木造建築士」と言った資格分類があり、資格を取得して実務に就いている人を総称して「建築士」と呼びます。
余談になりますが、設計事務所を開設する場合、管理建築士として有資格者を置かなければならず、代表者が建築士資格を所有して開業する場合が通常です。しかし、無資格者でも管理建築士を置くことで設計事務所を開設することが可能です。

「建築家」は資格の有無は関係ありません。建築の仕事を生業とし、特にデザインに強いこだわりを持ち、センスがある人であれば名乗る事が出来ます。日本では安藤忠雄氏や隈研吾氏、海外では、ル・ゴルビジェやガウディと言った建築家が有名です。
ただし、客観的な基準として「建築家協会(JIA)」に所属する会員であれば正式な建築家と見る場合もあるようです。

「設計士」とは、間取りを考える人や図面を描く人を総称して呼びます。
特に明確な定義があるわけではありませんが、設計の仕事を生業とする人を総称して「設計士」と呼ぶようです。
建築士の資格を持っていない人も「設計士」に含まれます。CADオペレーターやプランナーも設計士に該当するでしょう。


3.建築士が抱える実際のお悩みアレコレ

建築士の自宅は本当にオシャレなのか?

昔から建築業界は3K(キツイ、危険、汚い)と言われます。現場に直接赴かない建築士でも「キツイ」は必ず経験します。

私自身も設計事務所に勤めている頃に何度も経験していますが、とにかく長時間労働が多いのが建築士と言う仕事の問題点です。
設計には締め切りがあり、締め切り直前の追い込みは特に大変です。地獄絵図と言っても過言ではありません。徹夜作業が続き、間に合わなければ信頼を失い、今後の業務に大きな支障をきたします。こうなれば業界で生き延びていくのは難しくなる為、必死に期限厳守の仕事を行ないます。

お客様への説明もきつい業務の一つでしょう。建築のプロ同士であれば説明も簡単なのですが、建築知識の無いクライアント様に対して、分かるように説明を行うのは容易ではありません。中には法的な問題に対しても無理難題を押し付けてくるお客様もいらっしゃいます。どうやって説得するのか、そして納得してもらえるのかは、心身共にかなり疲れる業務になります。

また、建築業界はクレームが多い分野です。クレーム対応を誤ると大きな問題に発展しかねません。下手をすると裁判沙汰になり、予想外の時間も労力も必要になります。出来るだけクレームの初期段階でしっかりとした対処をしなければなりません。

報酬面においても建築士は苦労が耐えません。景気の良い時代はたくさんの報酬を請求できたのですが、近年は不景気の為に低価格志向が強くなっています。デザイン料や設計料も例外ではありません。建築工事は規模が大きい為に高額になりやすく、多くの人件費が発生します。設計業務は実際の工事とは異なり、経費や費用を客観的に評価し難い為、値切りの対象になる場合があります。


4.見た目よりもやりがいが重要になる仕事

建築士の自宅は本当にオシャレなのか?

建築士の仕事内容を紹介すると「建築士って楽しい仕事ではないかも…」と思われるかも知れませんが、そうではありません。

どんな仕事にも苦労があり、そしてそれ以上の「感動」や「やりがい」があります。だからこそ仕事は面白いものであり、大きな成長があります。
建築士には建築士にしかない「感動」や「やりがい」があります。

お客様の要望を聞いて設計し、イメージがリアルな形になった時の喜びは他の何物にも代えられません。 私が若い頃、上司から「我々の仕事は夢を売る仕事だ」と教えられましたが、設計図面が現実の建築物として竣工し、引き渡しになった時の感動は至福の喜びです。
建築士であれば誰もが自分の作品を世に残したいと思うでしょう。完成した建築物に関わったことは人生の誇りであり、建築士の特権です。

また、建築物は完成したからと言って終わりではありません。多くの人の目に触れ、次の感動を生み出す原動力となります。お施主様、関連業者様とのお付き合いも長くなり、人間関係も広く深くなっていくのが建築士という仕事の喜びです。
人間関係が広がると「紹介」「口コミ」が増えます。当然建築士としての認知度も上がり、信頼も大きくなるでしょう。下積み時代は大変ですが、コツコツした努力が大きく報われる仕事と言っても良いでしょう。

建築士自身も、工事の現場監督や関連業者さんも、お客様も、みんなを笑顔に出来る素晴らしい仕事が「建築士」です。


5.建築士のイメージと現実のギャップ

建築士の自宅は本当にオシャレなのか?

大型建築から一般の個人住宅まで、多岐にわたる建築全般の設計業務に携わる「建築士」と言う仕事ですが、世間のイメージと現実の差はかなり乖離しています。
あくまでも一般論ですので、世間には想像以上の素晴らしい功績を持つ建築士さんも存在する事は覚えておいて下さい。

建築士は一人で格好良くデザインや形を考えて図面にするイメージがあるかも知れません。

ところが建築の仕事は意匠設計から構造設計や設備設計、設備でも電気や機械、空調等と多岐に渡るため、一人が独断で仕事を進める事が出来ません。さらに「予算」が決まっている仕事ですから、「建築基準法」に則りながらも関係者と意見を交わして、チーム戦で取り組まなければ完成しない仕事です。
たくさんの人間が関わる仕事は思い通りには行かず、泥臭い人間同士の駆け引きの場になります。技術畑の建築士には交渉を苦手とする人も多く、ストレスを抱え込んでしまうのが悲しい現実です

また、「高所得」のイメージですが、弁護士や医者と比較すると約2倍の差があります。建築士の平均年収は600万円前後と言われますが、弁護士の平均年収が1000万円前後、さらに医者の平均年収1200万円前後で大きな差があります。もちろん会社や仕事の内容によって異なりますが、建築士は一般的なサラリーマンと大差がありません。個人開業や下請け業務が中心の設計事務所であれば、年収300万円と言った低賃金建築士も存在しています。

つまり、世間のイメージのように、オシャレな自宅に住んで、悠々と仕事している建築士はそれほど存在しないのが現実です。


6.まとめ

いかがでしたか。建築士という仕事のイメージとギャップを紹介しましたが、実際は想像からかなり乖離していると感じたかも知れません。
イメージ通りのオシャレな自宅に住み、格好良い仕事をされている建築士も居ますが、大半は世間の想像から乖離した世界の住人です。

しかし、建築士は誇りと夢と希望を作り出せる素晴らしい仕事である事は間違いありません。

建築の専門知識を蓄え、多くの人間と関わりながら夢を現実の形にする仕事です。他の職種には無い「やりがい」をたくさん持った仕事です。
建築物完成の感動は、何度味わっても心地良いものです。苦労した分だけその感動は深いものになって一生記憶に刻み込まれるでしょう。
世間の想像するような華やかさは無いにしても、高い知識と経験、そしてどんな職業よりも誇りを持てる仕事である事は間違いがありません。


著者(田場 信広)プロフィール

・一級建築士、宅地建物取引士

・建築設計、工事監理、施工(大工)、戸建て木造住宅の新築からリフォーム全般、分譲マンションの内装改修、マンションの大規模修繕工事の設計・設計管理、警察署の入札仕事や少年院の特殊な工事も経験

・某資格学校にて2級建築士設計製図コースの講師を6年務める






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