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掲載:2021年06月12日更新:2021年06月12日

【第1回】CADの上手な使い方講座 〜CADの概要〜

【第1回】CADの上手な使い方講座 〜CADの概要〜
建築設計業務を行うにあたり、今やCADは必須アイテムとなりました。30年ほど前の時代はドラフターによる手書き図面が一般的で、CADはおろかパソコンですら大きな設計事務所にしか配置されていませんでした。
インターネットの普及に伴いパソコンが一般市場に急激に配備され、同時にCADも急速に浸透しました。大きなスペースを必要とするドラフターとは異なり、通常の事務所と変わらないデスクスペースで図面を描ける快適さや、図面品質の統一化は建築設計業務に大きな変化をもたらしました。また、CADの出現により、設計士だけでなくCADオペレーターという新たな職種も生まれました。

建築の仕事においてCADは欠かすことのできないパートナーです。この建築CADを上手に使いこなせるように、「CADの上手な使い方講座」を連載で紹介させて頂きます。

1.建築になぜCADが必要なのか?

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図面は決して建築業界だけが利用しているものではありません。設計を必要とする業界では何かしらの図面作成が行われ、その後に製品化の流れに進みます。
現代のようにコンピューターによる3次元解析が容易でなかった時代は、頭の中で描いた構想を元に図面を描きつつ、各部の寸法等を計算しながら整合性を確認していました。特に建築物の設計は規模や複雑さにおいて他の業種よりも高い精度や整合性を求められます。わずか数ミリの誤差が建物全体に大きな影響を及ぼさないためにも、正確な図面作成が必要になります。

精度の高さや整合性の点においてCADは手書き図面よりも遥かに優れ、施工前のさまざまな視点から建築物を検証することが容易になりました。CADは「Comuputer-Aided Design」の略称で、日本語に直訳すると「コンピューター支援設計」と呼ばれています。一般的には「キャド」と呼ばれる事が多く、設計業務を行う建築設計事務所だけでなく、建設現場やさまざまなシーンで大活躍しています。

CADが手書き図面に比べて秀逸な点は「容易な修正が可能」「関係者同士の情報共有が簡単」「製図クオリティの均一化できる」ことです。A1サイズ、A2サイズといった大きな図面を広げて作業する必要もなく、小型のノートパソコン1台あれば誰でも設計・作図業務を遂行できるようになりました。


2.代表的な建築CAD6選

【第1回】CADの上手な使い方講座 〜CADの概要〜

CADと一言にいっても、大きく2種類に分類されます。
「専用CAD」と「汎用CAD」です。

「専用CAD」は専門分野の設計に特化した機能を有するCADです。
建築設計であれば建築用CAD、機械設計であれば機械用CAD、といったように、土木用CAD、電気用CAD、服飾デザイン用CADなどがあります。専用CADの大きな特徴は、専門業界でよく使われる機能が最初から準備されている点です。

「汎用CAD」はその名が示すとおり、汎用性を重視したCADです。
特定の専門分野を問わず利用することが可能な機能を備えたCADを指します。「直線を引く」「円を描く」「直線を二重にする」など、どのような作図を行うこともできる基本形のCADです。

専用CADと汎用CADで作図した図面のできあがり具合に大きな差異がないとしても、作図に要する時間に大きな差が生じたり、作成できる形に制限があったりと、汎用CADは専用CADに比べると多くの複雑な手順が必要になることがあります。
さらにCADには「2DCAD」と「3DCAD」があり、近年普及しているのは、はじめから立体の形状を定義して設計検討が可能な3DCADです。

建築業界で利用される代表的なCADはこの6つです。
【AutoCAD】
世界トップシェアを誇るCADで、大手ゼネコンや設計事務所で多く利用されています。
【Jw_cad】
国産CADで、2次元図面を作成できるフリーソフトです。無料とは思えない操作性の高さから、広く導入されています。
【VectorWoraks】
元々はMac OS版CADソフトとして世界で最初に開発されたソフトです。デザイン性重視のアトリエやインテリアデザイン事務所で多く導入されています。

その他に「BricsCAD(ブリックスキャド)」「ArchiCAD(アーキキャド)」「Revit(レビット)」が有名なCADです。


3. CADを使う人向けの資格

【第1回】CADの上手な使い方講座 〜CADの概要〜

CADを利用して図面を作成するのは建築士や設計士だけの業務ではありません。手書き図面と異なり、作図をコンピューター上で行えるようにしたCADはさまざまな分野で活用され、CAD操作を専門的に行うCADオペレーターという職種が生まれました。さらにCADによる作図需要は増加しているため、CADの使い方を習得してCADオペレーターとして活躍を希望する人も増えました。

建築士の資格とは異なり、CADにはCAD関連の資格が存在します。
さまざまな種類のCAD関連がありますが、代表的な資格は以下の4つです。

1.CAD利用技術者試験
CAD関連の資格の中で最も知名度がある技術者試験です。一般社団法人コンピュータ教育振興協会が認定する資格で、業界を問わず各分野の企業も熟知する資格です。

2.建築CAD検定試験
建築分野のCADオペレーターとして働きたい人におすすめの、建築分野におけるCADの操作能力、知識を測る資格です。一般社団法人全国建築CAD連盟が認定する資格です。

3.オートデスク認定資格プログラム
AutoCADを手掛けるオートデスク社が認定する資格プログラムです。

4.Vectorworks操作技能ベーシック認定試験
Vectorworks製品についての知識や操作スキルを問う試験で、インターネット上で受験できます。CADオペレーターに特別な資格は必要ではありませんが、CADソフトにどれくらい精通しているのかといったレベルの判断に利用されるので、就職や業務受注のアピールポイントとして取得しておいても良いでしょう。


4. 圧倒的シェアを誇る建築CADのフラッグシップ「AutoCAD」

【第1回】CADの上手な使い方講座 〜CADの概要〜

建築業界で利用される代表的なCADを6つ紹介しましたが、その中でも特に幅広く利用されている「AutoCAD」と「Jw_cad」について、今後「CADの上手な使い方講座」を連載紹介していく予定です。この2つのCADの特徴についてもう少し詳しく見てみましょう。

「AutoCAD」はまさに建築系CADのフラッグシップとも呼べる存在です。
アメリカのAUTODESK社が開発・販売している汎用CADソフトで、すでに35年以上の長い歴史があります。CADソフトの先駆者といえる立ち位置があり、世界規模で圧倒的な利用ユーザー数を誇ります。CADの習得を目指すなら、まずAutoCADをオススメします。

インターネット上にも操作方法の情報が多く、解説の書籍も多く出版されています。 AutoCADの最大の魅力は「拡張性の高さ」です。AutoCADは「汎用CAD」に分類されますが、建築や設備、電気制御やプラント設計といった専門の分野に特化した機能を付け加えることが可能です。
カスタマイズによりさらに効率的な作図が可能になります。AutoCADは有料ソフトですが、「無料体験版」を利用することができます。通常版と同じ操作が可能で、ダウンロードから30日間が無料になります。さらに「学生版」は無料で3年間使用することができます。


5.無料で性能が高い魅力的なCAD「Jw_cad」

【第1回】CADの上手な使い方講座 〜CADの概要〜

CADソフトは世界中に100以上も存在するといわれています。そのCAD激戦区の中において、圧倒的人気を誇るのが国産CADの「Jw_cad(ジェイダブリューキャド)」です。

「Jw_cad」の最大の特徴は「全ての機能が無料」で利用可能という点です。日本国内ではAutoCADに次いでシェアの高いCADソフトのため、AutoCADと一緒に学んでおくことをオススメします。

Jw_cadもAutoCAD同じく汎用CADに分類されますが、開発に建築士が関わったため、建築設計に役立つ作図機能などが豊富に搭載されているため、「建築汎用CAD」と呼ばれます。
基本的には2次元CADになりますが、平面図に高さを、立面図に奥行きを設定することによって2.5次元図面を作成することも可能です。
誰でもダウンロードして利用できるフリーソフトなので、個人ユーザーや費用対効果優先の中小企業や小規模な設計事務所で広く導入されています。フリーソフトのために電話やWeb上よるサポート体制が用意されていないことが最大のデメリットです。
Jw_cadには「クロックメニュー」と呼ばれる機能があり、他のCADソフトに比べるとマウスによる操作が多く、ドラフターによる手書きの感覚に近いCADソフトです。


6.まとめ

いかがでしたか?
建築設計に利用される代表的なCADの特徴を紹介させて頂きました。
今後は圧倒的シェアを誇る「AutoCAD」と「Jw_cad」の2大CADを使った上手な使い方について連載させて頂きます。知っているようで知らないポイントや、基本設定で大きく作図効率が変わるのがCADの特徴です。限られた時間で精度の高い図面を作成するためにも、効率化できるものは積極的に導入していきましょう。

CADだけでなく、今後は3次元CADやBIMなどのソフトも一般的になると予想されるため、積極的にCADのスキル向上を目指してCAD関連資格に挑戦することもオススメです。




著者(田場 信広)プロフィール

・一級建築士、宅地建物取引士

・建築設計、工事監理、施工(大工)、戸建て木造住宅の新築からリフォーム全般、分譲マンションの内装改修、マンションの大規模修繕工事の設計・設計管理、警察署の入札仕事や少年院の特殊な工事も経験

・某資格学校にて2級建築士設計製図コースの講師を6年務める






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