洗濯がラクになる家をつくるため、おさえたい3つのポイント
「わかる!うちもそう!」という声が聞こえてきそうな情景です。
実際、間取りの打ち合わせをしているときに、相談される困りごとの上位に入ってくるのが「洗濯動線」です。家を建てたら今度こそ洗濯物が放置されない家にしたい。頑張らなくても片付く家にしたい。それが家を建てる人の多くが考えていることです。
まずは「洗濯」という家事について、何が問題で『ソファの上の洗濯物山盛り現象』になってしまうのか考えてみたいと思います。
洗濯のここがイヤ!のワースト2は「たたむ」「しまう」
↓
洗う
↓
干す(乾燥する)
↓
たたむ
↓
クローゼットにしまう
順番に解説しましょう。
この一連の流れがスムーズに進むようにするためには、ソフト面とハード面の両方から正解を探さないといけません。
ハード面というのは、間取りや収納計画などを適切な形にしておくことです。
「洗濯なんてみんな一緒でしょ!」なんて思ってはいけません。
・一日の中で、どんなタイムスケジュールで洗濯をしているのか。
・いつ洗って、いつ干して、いつたたんでいるのか、
突き詰めてヒヤリングしたいところです。
設計者自身の経験から、洗濯動線とは「こうあるべき」と決めつけるのは時期尚早。
同じ方法で解決できる場合もあれば、まったくアプローチを変えることも必要です。
洗濯の作業のなかでも特に、敬遠されがちなのが「たたむ→しまう」の部分です。
冒頭に説明したソファの上に洗濯物が山盛り現象は、まさしく「たたむ」「しまう」に挫折してしまった結果なのです。
この問題解決のために提案できるポイントを3つ、考えていこうと思います。
ポイント1:「たたむ」という家事をなくす
衣装ケースやタンスなどの引き出し収納と比べて、ハンガーのまま「かける収納」は、収納量がぐっと減ってしまうというデメリットがあります。
それでも、収納の奥で出番のない洋服がたくさんあるより、着まわせる洋服が一目で見渡せる収納のほうが実際は使いやすいかもしれません。
「かける収納」をメインにするならハンガーパイプは2段にする
そうすると、上の段にはトップス、下の段にはボトムスと分けて掛けることができます。
家族で使う場合、大人の洋服は上の段に、子どもの洋服は下の段に分けることもできます。
子どもの成長に合わせて高さを変えたい場合は、可動ブラケットタイプのハンガーをつける提案もおすすめです。
本当に着たい服や必要な服だけを選び取り、それが収まるクローゼットを用意するように提案できるといいですね。
ポイント2:家族の洋服を集中一括管理する「ファミリークローゼット」
家族の洋服を一個所でまとめて管理できれば、「しまう」ハードルをグッと下げられます。
それを可能にするのがファミリークローゼットです。
ファミリークローゼットの場所と広さ
もちろん洋服が大好きで、たくさん持っているという家庭の場合は、それに見合った広さを確保してください。
ファミリークローゼットだけで、家族の洋服すべてを収納することが難しければ、
・個室のクローゼットには、オフシーズンの洋服を収納。
季節ごとに衣替えをすることで、収納スペースを有効に利用することができます。
ファミリークローゼットがあれば、わざわざ部屋のクローゼットを回って収納する必要がなくなります。そして、洋服をしまう作業をしてくれない家族に「せっかくたたんだのに、なんでしまってくれないの?」と、イライラする時間も削減することができます。
ポイント3:「干す → たたむ → しまう」の距離を近づける
戸建て住宅の「洗濯動線」でありがちな失敗として、
・洗濯物を干す場所
・たたむ場所
・しまう場所
との距離がやたらと遠いことがあります。
例えば2階建ての家で1階と2階のたて移動が頻繁になってしまうと、とたんに家事がおっくうになってしまいがち。特に今までマンション暮らしだった人が、初めて戸建てに住む場合は注意が必要です。
そんなときは必ず「こまめに行ったり来たりできそうですか」と、たずねることにしています。
マメな方であればそのままでも大丈夫。
「面倒になって後回しにしちゃいそうです」という方だったら、動線を見直す必要があります。
1階にファミリークローゼットがあるなら1階に干すスペース
1階にファミリークローゼットがあるのであれば、1階に干すスペースがあると便利です。
外にデッキやベランダなど、洗濯物を干す場所を用意します。最近では、室内干し派も増えてきているので、1階に室内干しスペースを確保したいですね。リビングに生活感があふれてしまうのを避けるために、洗面脱衣室を広めにとって室内干しスペースを兼用する事例も多いです。
干す場所のすぐ近くにファミリークローゼットを用意し、乾いたらすぐしまうことができるとベストです。できれば干す場所からファミリークローゼットに行くときには、リビングなどを通らず直行できるといいですね。“ついついソファの上に山盛り”を防ぐことができます。
2階個室のクローゼットなら2階に干すスペース
2階個室のクローゼットにしまうのであれば、2階に干すスペースを用意しましょう。一般的には、ベランダに干すパターンが多いかと思います。室内に干す場合は、階段を上がったところにつくるホールを大きめに用意して、そこで干すのがおすすめです。
取り込んだ洗濯物をその場でたたんだり仕分けたりして、すぐに2階のクローゼットにしまうという流れが大切。そのための「たたむスペース」を用意することも大切です。
階段ホールを広めにとって、そこにちょっとしたカウンターがあると作業がしやすいですね。
ホールにちょっとした余裕を持たせることで、ぐんと作業がしやすくなります。
5.まとめ
ライフスタイルについてグッと一歩踏み込んでヒヤリングできると、より生活に寄り添った提案ができますよ。
一級建築士/ライフオーガナイザー/建築カラープランナー
注文住宅の設計を続ける傍ら、ライフオーガナイザーとして整理収納セミナーも開催している。
建築士として住宅設計を続けて18年。 サスティナブルな家づくりがこだわり。