COLUMN
コラム
高齢者が住みやすい家にするためのポイント
日本が超高齢社会となったのは、もう10年以上も前のことです。内閣府の調査によると、令和4年の時点で65歳以上の人口が総人口に占める割合は29%で、三人に一人は高齢者という計算になります。この傾向は今後も続く見込みで、ますます超高齢社会が進んでいくと思われます。
また、同じ内閣府の調査では、高齢者の8割以上が持家に住んでいることが分かりました。そういった中で、高齢者の事故は7割以上が家の中で起こっているという結果もあります。住み慣れた家、街、地域はやはりとても大切な存在だと思います。
毎日暮らす住宅で安心して過ごせるように、今回は高齢者が住みやすい家について考えていきましょう。
また、同じ内閣府の調査では、高齢者の8割以上が持家に住んでいることが分かりました。そういった中で、高齢者の事故は7割以上が家の中で起こっているという結果もあります。住み慣れた家、街、地域はやはりとても大切な存在だと思います。
毎日暮らす住宅で安心して過ごせるように、今回は高齢者が住みやすい家について考えていきましょう。
1.住みやすい家をつくる場所別のポイント
住みやすい家をつくる具体的なポイントを、場所別にまとめました。
家全体
新築で建てるなら、階段の上り下りをする必要がなく、生活のすべてがワンフロアにある平屋がおすすめです。間取りの工夫次第で動線もコンパクトになり、移動が楽になります。段差をなくしバリアフリーにすれば、転倒のリスクも軽減でき、車椅子を利用することになってもスムーズに移動できるでしょう。各居室や廊下などの温度差は、体に大きな負担やストレスを与えます。
また、高齢者は暑さを感じにくいこともあるため、気密性や断熱性を高め、家全体の温度を一年中快適に保つことで過ごしやすくなります。家中の空調を一括で管理し快適な温度に保つ、全館空調というシステムもあります。導入コストは少し高めですが、新築や大規模なリフォームを機に検討してみるのもいいかもしれません。
玄関
築年数が経っている住宅では、玄関前が階段になっていたり、上がり框が高いところも少なくありません。段差はできるだけなくしたいところですが、土地の形状や基礎部分との関わりもあるため難しい場合もあります。スロープを設置することで高低差を解消し、少しでも歩きやすい玄関周りをつくりましょう。
上り框にもスロープは有効ですが、ある程度スペースが必要となるので、縦方向の手すりを付けスムーズに上り下りができる工夫が必要です。腰かけられる椅子を置けば、体重移動もしやすく、靴の脱ぎ履きも楽になります。玄関で不便を感じてしまうと、外出が億劫になることもあります。楽しく健康的に暮らすためにも、気になるところは解消しておくことが大切です。
廊下
できるだけ自分で歩いて生活ができるように、廊下には手すりを付けることが最も一般的です。
しかし、壁の補強が必要な場合や、手すりによって廊下の幅が狭くなり、車椅子を利用する際はかえって不便になることもあります。リフォームできる規模や体の状況を考慮して、柔軟な対処が必要です。廊下の幅は90cm以上を確保しておくと、介助者に支えられながら歩くときや自走式の車椅子でも通行できます。廊下の足元にライトがあれば、夜間の移動もしやすくなるでしょう。
キッチン
家の中で起こる高齢者の事故は、キッチンでも多く発生しています。キッチンマットなどの小さな段差や収納できていない物につまずき転倒する、高い所の物を取ろうとして滑る、といったことが多いようです。使い勝手が良く、できるだけ体に負担をかけないようなキッチンにすることが大切です。まずはリスクがある物を取り除き、動線を見直して必要な場所に必要な物だけ置くように整理します。通常の吊戸棚は使いづらいので、昇降タイプの吊戸棚に変更するのもいいですね。
疲れたら座って作業ができるように、作業台の高さを工夫するのもおすすめです。作業台の下をオープンにしておくと、足が入れやすく車椅子での利用も楽になります。蛇口をレバーハンドルやタッチレス水栓に換えると軽い力で使えます。
コンロはガスコンロよりもIHコンロのほうが火災のリスクは軽減できますが、火力ランプが見えない、使用後すぐにコンロを触ってしまい火傷するといったケースもあり、視力が弱くなる高齢者では注意が必要です。現在はほとんどの製品に安全装置機能がついており、音声ガイドが付いた製品も登場しています。体への負担を考え、メンテナンスのしやすさも重要でしょう。汚れが拭き取りやすいキッチンカウンターや壁紙、自動洗浄機能がついたレンジフードなどを取り入れるのもいいですね。
トイレ
新築や全体的なリフォームをするなら、トイレは寝室の近くに設けると安心です。年齢を重ねると夜間にトイレに行く回数が増えます。夜間の移動は転倒のリスクも高まり、温度差による体への負担も心配です。移動がゆっくりとなることも考えると、寝室からの距離は短いほうがいいでしょう。
また、車椅子を利用することになると開き戸では動作がしづらいので、ドアは引き戸のほうがおすすめです。段差をなくし、車椅子でも入れる広さを確保しておくと、介助が必要になった場合でも介助者がスムーズに動くことができます。手すりは立ち座りがしやすいようにL字型に付けるといいですね。暖房便座を付ければ、冬でもヒヤッとすることなく快適に使えます。トイレは毎日何度も利用する場所です。負担にならないように工夫しましょう。
洗面・脱衣室
洗面・脱衣室で気をつけたいことは、転倒と温度差です。水に濡れやすい場所のため、滑って転倒するリスクがあります。床材は滑りにくい素材にしたり、クッション性のあるものを選ぶと怪我の心配も軽減できるでしょう。
必要な場所に手すりを付けることも重要です。温度差が要因で起こるヒートショックは、暖かい室内から洗面・脱衣室に移動したときになりやすいといわれています。洗面・脱衣室にを取り入れるなど、温度差を小さくする工夫が大切です。
浴室
浴室の使いにくさは重大な事故につながる可能性があるため、より注意が必要です。まず、浴室のへの出入り口は段差を解消し、難しい場合は段差の上り下りが楽になるように手すりを付けましょう。トイレ同様、開口部のドアは引き戸がおすすめです。
浴室内は水はけが良く滑りにくい素材を選び、バスタブ内も含め滑り止めを取り入れるのも有効です。高齢者にとって浴槽を大きく跨ぐことは困難なこともあり、危険も伴います。洗い場と浴槽の高さは、通常よりも少し低めのほうが安心でしょう。浴槽に入れない場合でもしっかり温まれるように、ハンドシャワーとは別にボディ用シャワーを採用するのもいいですね。車椅子の利用や介助者の動きやすさを考慮して、浴室を広めにしておくと使いやすいでしょう。ヒートショックも心配なので、温度差を少なくするため、浴室暖房は積極的に取り入れたい設備です。
まとめ
高齢者が住みやすい家をつくるにはさまざまなポイントがあります。大規模なリフォームが必要になることも少なくありません。費用が気になるところですが、段差の解消やドアの変更など、バリアフリー工事に適用できる助成金制度があるので、各自治体に確認してみましょう。
年齢を重ねても、楽しく健康的で快適な生活を送りたいと思うのはとても自然なことです。そして、誰もがいずれ高齢者となります。高齢者が安心して暮らせる家は、すべての人に安心を与えられる家といえるでしょう。
著者(おのみき)プロフィール
建築・インテリア系の専門学校卒業後、工務店にて建築業務に携わる。
福祉住環境コーディネーター2級。
二児の母。
おのみきの他の記事
RELATED ARTICLE
アクセスランキング(コラム)
SumaiRing最新記事
TAGS
お役立ち
建築建材