床にも使えるフロアタイル(塩ビとセラミック)のメリットとデメリット
1.フロアタイルには様々な種類がある
タイルと聞くと、一般的には陶磁器でできた建材が思い浮かぶかもしれません。
また「フロアタイル=ポリ塩化ビニル製」と間違った説明がなされることもありますが、実際のところ、この素材はセラミック・磁器質・天然石・ガラスなど様々で、素材ごとに特徴や施工方法、メンテナンス方法は異なります。
フロアタイルでは下記の2種類がよく使われています。
・ポリ塩化ビニル製の「塩ビタイル」を使用したフロアタイル(「ビニル床タイル」「PVC床材」とも呼ばれる)
・陶器製の「セラミックタイル」を使用したフロアタイル今回の記事では、これら2種類のフロアタイルの特徴・メリット・デメリットについてご説明します。
2.塩ビタイルのメリット・デメリット
塩ビタイルの特徴
塩ビタイルは一般的なクッションフロアと同じポリ塩化ビニルという合成樹脂製で、木製のフローリング材と比べて安価で、施工も簡単であることから人気があります。
同じポリ塩化ビニル製でも、クッションフロアが柔らかくて耐久性が低く、テーブルや椅子の脚ですぐにくぼんだりへたったりするのに対し、塩ビタイルには適度な硬さと耐久性があります。
さらに、塩ビタイルの厚さは約2.5〜3mmほどと、一般的なフローリング材の厚さ(12mm)に比べるとかなり薄くいため、既存のフローリングの上に敷き詰めるだけで工事は完了し、ドアの開閉や敷居と干渉することもほとんどありません。
塩ビタイルのメリット
塩ビタイルは普通のカッターナイフでも切断でき、既存のフローリングを剥がすことなく上から専用のボンドで貼り付け、ローラーでしっかり押さえ付けただけで完成するため、DIYでも施工可能です。
塩ビタイルの種類によっては、納品の時点で裏面にシールのような粘着剤が付いていて、ボンドすら不要なものもあります。
とはいえ、プロの手を借りる必要がないという意味では手軽ですが、技術的には簡単というわけではありません。
塩ビタイルは柔らかいゆえにカッターできれいに・まっすぐに切るのにはかなりの技術が求められますので、自信がなければ施工はプロにお願いした方が良いかもしれません。
塩ビタイルには、木目調や石目調など様々なデザインがあり、木目調の中でもウォールナットやオークなど樹種ごと、石目調であればアラベスク風やテラコッタ風など石の種類ごと、といった具合に豊富な選択肢の中から選ぶことができます。
もちろんデザインは全て塩ビにプリントを施した、いわゆるイミテーションと言われるものですが、現在のプリントやエンボス加工の技術は非常に高く、本物と見紛うような高品質な塩ビタイルも多くあります。
賃貸物件であれば基本的に床や壁を借主の自由にリフォームすることはできませんが、塩ビタイルの中にはボンドすら使用せず、既存のフローリングの上に切って設置するだけでよい簡易的なものもあり、このタイプであれば賃貸物件でも簡単な模様替えを楽しむことができるでしょう。
塩ビタイルのデメリット
ポリ塩化ビニルは融点が85℃〜200℃の熱に弱い素材です。
家庭内の床暖房程度の温度で溶けてしまうことはありませんが、85℃より低い温度でも膨張・たわみは発生しますので、床暖房を敷設しているフローリングには使用できません。
ホットカーペットやこたつは床暖房ほど温度が上がりませんが、塩ビタイル床での使用は控えた方が良いでしょう。
塩ビタイルは耐久性の高いフロア材ではなく耐用年数は10年前後で、比較的柔らかいために表面は傷つきやすく、磨耗しやすいというデメリットもあります。
塩ビタイルは張り替えが簡単なので、傷がついたタイルは自分で張り替えられるよう施工時に何枚か余分に購入しておきましょう。
また、塩ビタイル自体は耐水性がありますが、水や汚れが目地から侵入すると床とタイルの接着力を弱めてしまうので、水がかかる部分には向いていませんし、掃除をする際には必要以上に塩ビタイルを濡らさないように気をつけながら行いましょう。
3.セラミックタイルのメリット・デメリット
セラミックタイルの特徴
セラミックタイルには輸入材と国産があり、国産セラミックタイルは美濃焼の里であり陶業が盛んな岐阜県を中心に製造販売されています。
セラミックタイルはその名の通り陶器であり、素焼きの質感を生かしたマットなものから施釉(釉薬によって焼成時にガラス質のコーティングを施すこと)して美しい光沢を持つものまで様々で、中にはマーブルやライムストーンを模したセラミックタイルもあり、デザインの選択肢は非常に豊富です。
セラミックタイルのメリット
セラミックタイル は、日本ではインテリアよりもエクステリアによく使用されますが、インテリア用のセラミックタイルも多く販売されています。
床材としてのセラミックタイルは、一般家庭よりもブティックや高級ホテルなどで見かけることが多いかもしれません。
それゆえ、ホテルライクな高級感、クールなインテリアを実現したい場合に、セラミックタイルは賢い選択です。
セラミックタイルの中には屋内・屋外の両方に使用できるものや、床材にも壁材にも使えるものも多くあり、それらを活用すれば家全体のインテリアに統一感を出すことができます
セラミックタイルは施工後すぐに防汚処理を施していれば、その後はフローリングのように定期的にワックスを塗布するないため、一般的なフローリング材と比べてもメンテナンスは簡単です。
セラミックタイル用の洗浄剤もありますが、重歩行しない屋内仕様のセラミックタイルにはほとんど必要ないでしょう。
ただし、目地には汚れが沈着することもありますので、目地の清掃は定期に行うのがベストです。
セラミックタイルのデメリット
床をセラミックタイルへリフォームする場合、費用は
・既存床材撤去(排気量込み):約8,000円〜15,000円/坪
・タイル施工費用:18,000円〜30,000円/坪
程度となり、これに材料費を加えると総工費は8畳程度のスペースでも30万〜50万の費用になってしまいますが、範囲が大きくなれば坪単価も安くなる傾向にあります。
タイル工事は左官工事になり、セラミックタイル張り替えリフォームに関連して大工作業も必要になるため複数業者に依頼するか、セラミックタイルの張り替えになれた工務店を探す必要もあり、施工業者の選定が難しくなります。
セラミックタイルは陶器の食器や花瓶などと同じく、衝撃によって割れたり欠けたりすることがあります。
ホワイト一色などのシンプルなデザインのセラミックタイルであれば目立たなくリペアすることもできますが、デザイン性の高いものであればリペアは困難で、修理には張り替えるしかなく費用も高額になります。
4.まとめ
塩ビタイルであれば手軽なリフォームを楽しむことができますし、セラミックのフロアタイルを上手に活用すれば、木製のフローリング材を使った場合とは全く異なる、ブティックやホテルのような住空間を作り出すことができます。
床材をどうするか悩むことがあれば、一般的なフローリング材だけではなく、フロアタイルという選択肢があることを覚えておきましょう。
CAD利用技術者1級、CADアドミニストレーター
住宅メーカの下請けとして木造大工作業を担当。
注文家具の製造と設置。製図補助を担当。
国内最大手インテリアメーカーの店舗で接客・販売を担当。