環境と合わせて考える、空きスペース・エクステリアの舗装材の選び方
戸建て住宅や集合住宅、パブリックスペースなどには計画的に空きスペースが設けられています。
そのようなスペースは風通しや日照が保たれ住み心地が良くなると同時に、万が一火災が生じた際にも延焼を防ぐという重要な役割を果たしていますが、土地の用途に合った適切な舗装を施すことが重要になります。
この記事では舗装材の中でも路盤に使われるものではなく、表層に用いられる舗装材について、
・舗装材の果たす役割
・舗装と環境との関係
・よく使用される舗装材の種類
などについて記述します。
舗装材が果たす役割
道路や駐車場だけでなく、エントランスまでのアプローチなどの空きスペースに適切な舗装を施すことには、
・砂埃が舞うのを防ぐ
・水たまりができにくくする
・日光による温度の上昇を防ぐ
・景観を美しく保つ
といった大切な目的があります。
ただし、適切でない舗装方法を選ぶと、効果がないばかりか逆効果になってしまうこともありますので注意しておきましょう。
ヒートアイランド現象から考える、舗装材と環境の関係
舗装材について計画する際には、舗装材が周辺環境に与える影響について理解しておくことが大切です。
たとえば東京では100年前に比べて年間の平均気温が約3℃ほど上昇しており、このような気候の変化が、
・熱中症などの健康上の被害の増加
・ゲリラ豪雨と、それによる都市型水害の発生
・生態系への悪影響(伝染病を媒介する蚊のような害虫の越冬など)
につながっているとされています。
そのような温暖化の原因の1つと考えられるのが「ヒートアイランド現象」です。
特に、アスファルトやコンクリートなどによる舗装によって本来の土や草木の面積が大幅に減少している都市部では一帯が熱くなりやすく、夜間にも温度が下がりにくくなることにより、ヒートアイランド現象が生じていると考えられています。
例えばアスファルトは、夏場には表面温度が約60℃にまで上昇することが確認されており、このような舗装がヒートアイランド現象の深刻化に影響を与えています。
また、透水性が全くない舗装材で地面の大部分を覆っていて水はけが阻害されている点も、植生や地中生態系、気候の変動への影響を与えていると予想されています。
環境に配慮した舗装材選びで重要な2つのポイント
従来型の舗装による温度の上昇・水はけの悪さという問題は、舗装材の下記の2つの性能に注目し、適切な舗装材を選ぶなら大きく緩和することが期待できます。
①「透水性」
透水性舗装材は、粗骨材の間に空隙が多く残る多孔質構造で、その空隙を水がすり抜けるような構造になっているため、透水性が悪いように思われるコンクリートやアスファルトなどを主な素材とする舗装材であっても、十分な透水性を持つものがあります。
ただし土地の条件によっては、舗装材の透水性にとって需要な空隙が砂埃・泥などで詰まってしまい、透水性が長持ちしない可能性もあります。
また、空隙が多い舗装材は高い耐久力を期待できないため、高い交通負荷がかかるような場所には向いていません。
②「保水性」
透水性舗装材のように多孔質構造で、なおかつ保水性を持たせるために保水材(鉱物質や樹脂製の素材)を混合した舗装材もあります。
保水性のある舗装材には、降雨または人為的な散水によって含んだ水が、蒸発する際に気化熱で路面の温度を下げるという効果があります。
涼をとるために日本では古来より「打ち水」を行なってきましたが、保水性舗装材はこの打ち水の効果をより高めるためのもの、と説明すればイメージしやすいかもしれません。
また、保水性に加えて地中側への熱伝導性を高めるものや、表面に反射性の高いコーティングを施してあるものなど、表面温度を上げないためのハイブリッドな性能を持つ舗装材も登場しています。
舗装材の種類
透水性や保水性を持たない舗装はすべて環境に対し悪影響を及ぼしている、というわけでもありません。 土地の目的・用途・景観などをすべてバランスよく考慮し、適切な舗装材を選ぶなら、人にも環境にも優しいサステナブルな空間とすることができます。
天然石舗装材
石の産地はベルギーやイタリアなどのヨーロッパ産が多く、元々は石畳などに実際に使用されていたものをピンコロとして再利用したアンティーク材もあります。
アスファルト系舗装材
アスファルト系混合物舗装は施工が比較的簡単でコストパフォーマンスも良く、交通荷重に対する耐久性も高いため道路や駐車場によく使用されます。 ただし、通常のアスファルト舗装には透水性は悪いというデメリットもあります。
透水性アスファルト混合物舗装は開粒度アスファルトとも言われ、骨材の粒度にギャップを持たせて空隙率を高め、透水性を高めたアスファルト舗装です。
透水性に優れていますが、交通荷重に対する耐久性が低いため、公園内などにある園路や使用頻度の高くない駐車場などの舗装に活用されます。
コンクリート系舗装材
コンクリート舗装はアスファルトに比べてイニシャルコストが高くなりますが、耐久性が高いためライフサイクルコストは低く抑えられ、舗装材として安定した支持を得ています。 コンクリートによる舗装方法はとても多様ですが、乾式工法として施工するコンクリート系の舗装材としては下記のようなものがあります
舗装材のコンクリート平板は正方形で大型タイルのような形状をしていますが、十分な厚みがあり、単体でも十分な耐久力があるという点でタイルとは異なります。
コンクリート平板は空練りモルタルの上に設置するか、荷重の少ない戸建て住宅の駐車スペースなどには砂地の上にそのまま設置するだけでも施工できます。
デザイン性の高いコンクリート平板は、タイルの要領で玄関ポーチやアプローチなどにも利用できます。
公共工事でトンネルの路面などに使用される大型のコンクリート平板(コンクリート版)もあります。
インターロッキングブロックはコンクリート製のブロックで、形状もデザインもさまざまですがレンガ大のものが一般的です。
路盤に砂を平滑にならし、その上にインターロッキングブロックを敷き詰めた上で目地砂をブロックとブロックの間の隙間に充填します。
そうすることにより荷重がかかると配置されたブロック同士が目地砂を介して噛み合い、荷重が周囲に分散される構造で強度を発揮します。
インターロッキングブロックは、デザイン的にも美しく周辺の景観に調和し、透水性に優れた舗装材であるものの、目地に雑草が生えやすい、不陸が生じやすいといったデメリットもあります。
そのため、施工には高い技術が求められますし、高い負荷が頻繁にかかる場所には向いていません。
まとめ
普段の生活で地面に注目することはあまりありませんが、建物のない空きスペースがどのような目的で設けられているかに応じて、適切な舗装材が選ばれ、舗装されています。
私たちの暮らす環境にもさまざまな形で影響を与える舗装に、いま一度ゆっくり注目してみるのも面白いかもしれません。
CAD利用技術者1級、CADアドミニストレーター
住宅メーカの下請けとして木造大工作業を担当。
注文家具の製造と設置。製図補助を担当。
国内最大手インテリアメーカーの店舗で接客・販売を担当。