安全で快適なサッカー場をつくるには?芝生を選ぶときのポイント、防球ネットや照明などの特徴を紹介
サッカー場を管理・運営する際に、選手の安全面や快適さを考えた環境づくりは重要な課題となります。また、メンテナンスや維持費用についても考慮しなければなりません。 そこで今回は、維持しやすく安全で快適なサッカー場をつくるための建材をご紹介します。
1.サッカー場の象徴である芝生のピッチ
サッカー場といえば、緑の芝生が映えるフィールド。天然芝と人工芝の2種類があり、それぞれメンテナンスしやすさやプレーのしやすさが異なります。
天然芝:踏圧に強く転倒時も怪我をしにくい
プロサッカーのピッチで、最もよく使われているのが天然芝。サッカー場は選手の激しい動きによる地面へのダメージが大きいため、公園やゴルフ場よりも踏圧に強く、回復力があるものが使われます。 サッカー場で使われる天然芝を大きく分けると、暖地型と寒地型の2タイプ。両者を組み合わせて使うことで、年間を通じて緑色を保つ「ウインターオーバーシーディング」という手法もあります。
特徴・種類 | |
暖地型芝生 | 高温と乾燥に強く、冬は冬眠する芝生で、関東以西に向いています。 ・ノシバ:踏圧耐性が高い ・コウライシバ:細やかな芝生をつくれる ・ティフトン:暑さや踏圧に強い |
寒地型芝生 |
寒さに強く、冬でも青い芝生で、関東以北に向いています。 ・ブルーグラス類:踏圧耐性が高い ・ライグラス類:初期生育が非常に早い |
天然芝のメリット
● 冷却効果がある天然芝は熱を吸収し、フィールドを冷却する効果があります。芝生自体も熱くならないため、人工芝のようなやけどの心配がありません。
● 施工費用が安い
天然芝は人工芝に比べると施工費用が安く、初期費用を抑えることができます。
● プレーがしやすい
クッション性があり滑りにくい地面になるため、自然な反発力・ボールの動きになり、選手が本来のパフォーマンスを発揮しやすくなります。また芝草が柔らかいため、スライディング時に怪我をしにくいというメリットも。
天然芝のデメリット
● メンテナンスに手間や費用がかかる天然芝は植物であるため、お手入れをして育てていかなければなりません。そのため、芝刈りや水やり、肥料やり、除草など定期的にメンテナンスが必要で、手間がかかります。
● 悪天候に弱い
雨や雪が降るとぬかるんで水たまりができ、プレーに影響してしまいます。泥で衣服が汚れてしまうことも欠点です。
● 芝生のコンディションが季節に左右される
冬には地上部が枯れて冬眠する芝生もあり、ピッチのコンディションが悪くなってしまうことも。このような問題に対して、冬眠しない芝生を組み合わせるなどの対策が取られていることもあります。
人工芝:維持が簡単でクッション性も高められる
人工芝とは、主にポリエチレンやポリプロピレンといった合成繊維を使用し、天然芝を模倣して作られたものです。サッカー場の人工芝は、家庭用の人工芝とは異なり、衝撃吸収性の高いものを使用します。 人工芝は下地の布と葉の部分のパイルで構成されていますが、サッカー場の人工芝にはクッション性を高めるためにアンダーパットを敷いたり、珪砂・ゴムチップを充填したりします。天然芝により近づけられるように、複数組み合わせて使用されるものもあります。
人工芝のメリット
● 悪天候の影響を受けにくい土や天然芝と比較すると、とても水はけが良い人工芝。雨や雪がふってもあまり影響を受けずにプレーができます。また、雨の多い地域や積雪のある地域では天然芝が育ちにくいため、人工芝が適しています。
● 維持にかかる手間と費用を抑えられる
人工芝は水やり・肥料やり・芝刈りが不要で、基本的にはゴムチップの補充程度の維持費しかかかりません。落ち葉やゴミの掃除、月1程度のブラッシングで済むため、天然芝に比べて大幅に手間を削減できます。また、塗料でラインが引けるため、毎回ラインを引く時間を省けるのもメリットです。
● 衣服が汚れにくい
人工芝では泥や砂埃、芝草の汁による汚れを防ぐことができます。子どものサッカーなど頻繁に試合がある場合、予洗いするなどの手間がかかると洗濯も負担になるため、汚れにくい人工芝は大きなメリットとなるでしょう。
● 身体に優しく安全にプレーできる
サッカー場にはスポーツ用のクッション性の高い人工芝を使用するため、衝撃を和らげ、身体への負担を軽減する効果があります。また地面の平坦性を維持しやすいため、怪我のリスクを減らすことにも繋がります。
人工芝のデメリット
● やけどのリスクがある人工芝では強い摩擦力が働くため、スライディングや転倒により芝で擦ったとき、摩擦熱により火傷するリスクがあります。また人工芝やゴムチップが日光の熱を吸収して表面温度が上がり、足の裏に火傷による水ぶくれができることも。近年発売されている熱くなりにくい人工芝や、温度抑制効果のあるチップの採用がおすすめです。
● 5~7年で交換する必要がある
サッカー場の人工芝は激しい運動が繰り返されるため、数年で劣化してしまいます。そのため芝を剥がして、新しい芝に貼り替える作業が必要です。下地まで劣化していると、大掛かりな工事になることも。最近では10年以上持つような高品質な人工芝も販売されているため、導入を検討してみるのも良いでしょう。
2.人工芝の下地を平坦にしてプレーしやすくする舗装
競技用に人工芝を使用する場合、平坦な地面になるように下地を舗装します。舗装には次のような種類があります。
浸透性があり耐久性の高いアスファルト舗装
砕石路盤の上に、浸透性のあるアスファルトを設置する方法です。雨水が浸透する素材に加えて適切な傾斜をつけることで、より水はけの良いグラウンドをつくることができます。また高い耐久性を持つため、砕石舗装よりも下地改修の頻度を減らせるのもメリットです。
費用を抑えられる砕石舗装
人工芝設置の下地処理として、最も費用を抑えられる方法です。砕石を転圧することで、水平な下地をつくります。費用は抑えられますが、経年劣化により雨水などの影響を受けて水平でなくなってしまうことも。その際は芝生を剝がし、下地の改修工事が必要になります。
3.防球ネット・ポールでボールの飛び出しを防ぐ
サッカー場のまわりには、ポリエチレンやナイロン等で作られた防球ネットを設置します。防球ネットを設置するためのポールには、次のものがあります。
多く採用されているコンクリートポール
コンクリートポールは、多くの施設で使われているもので、コストを抑えたい方におすすめです。大型トレーラーによる搬入が可能な場合に施工できます。
狭い場所にも搬入できる鋼管ポール
鋼管ポールは分割して搬入することができ、現場組立が可能なポールです。大型トレーラーでの搬入が難しい設置場所の場合に適しています。
4.夜でもピッチを明るく照らす照明
サッカー場では、タッチラインとゴールラインに囲まれた競技面全体を照らさなければなりません。照度の高さ、寿命の長さ、グレアや演色性を考慮したものを基準に選びましょう。 以前は水銀を使ったランプが主流でしたが、「水銀に関する水俣条約」により2021年に水銀灯の製造輸出入が原則禁止になったため、現在はLED投光器が広く使われるようになりました。なお、メタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプは水銀を使っていますが、規制対象外となっています。
まとめ
サッカー場をつくるためには、芝生や防球ネット、照明など選ぶものが多くあります。目的に合った建材を使用して、選手が安全で快適にプレーでき、管理者にとっても運営しやすいサッカー場をつくりましょう。
大学で建築を学んだ後、住宅専門のライターとして活動中。
主にWebコラムや住宅情報誌で、住宅購入やリフォームのノウハウ、マネー情報等の原稿執筆・編集をしています。