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掲載:2021年04月23日更新:2021年04月23日

建築士あるある!現場で困ったアレコレ

建築士あるある!現場で困ったアレコレ

オシャレなイメージが強く、常に人気職種の上位に位置する「建築士」と言う仕事。

専門的な高い知識と経験を有し、立場が強く思われがちですが、意外にも諸外国に比べて日本の建築士のポジションは弱く、抱えている問題も多いのが現実です。

建築士の仕事をされている方なら、一度は味わった事がある現場で起きる困ったアレコレの問題。
現場に出向いた時に直面した困り事、お施主様との打ち合わせや交渉の場で起きる問題、下請け作業の苦しい立場と無理難題の対処。
華やかそうに見えて裏側では苦労の耐えない建築士。

今回は、建築士なら遭遇してしまう現場で起きるトラブルと対処法、そして強いポジションを構築する為に必要なノウハウについてお話します。

1.なぜか建築現場で嫌われて困った

建築士あるある!現場で困ったアレコレ

悲しいことに、「建築士は現場を知らない」とよく言われます。
特に「細部の納まり」「作業の流れや段取り」「工法」に関しては、作業を行う職方と大きな差があります。

私がお会いした建築士の中にも、現場の細かい納まりを十分に理解出来ていない人は確かに実在しました。 施工出来るか否か、と言う判断も出来ない状態で書かれた図面は現場での混乱を招きます。また、適当な現場指示はお施主様とのトラブルになる場合もあります。

建築士の中には「現場が好き」と言う人も居ますが、逆に現場に足を運ぶ事を嫌う人が居ます。図面はあくまでも想像の世界の産物であり、実在するのは現場の建築物です。
設計士であれば、自分の書いた図面がその通りに現場に再現出来ているのかをしっかり確認しなければなりません。

お施主様、建築士、現場管理者、職人が力を合わせて完成させるのが建築工事です。その気持ちや役割を大切にしなければ良い工事は出来ません。 先生と言うポジション意識も大切ですが、実際に建築現場に赴き、素直な気持ちで「納まり」や「作業の流れ」を勉強する事も重要です。

有名なドラマの名言ですが「事件は現場で起きている」のであって、建築の仕事も現場が最優先です。 施工業者と上手く接しられず、嫌われるから行かないのではなく、建築士自ら率先して現場の成長を見守り、積極的な関係構築が必要です。


2.施主と現場の板挟みに困った

建築士あるある!現場で困ったアレコレ

大型の建築工事に設計や管理で参入する場合とは異なり、小型の工事、特に住宅工事の場合は人間関係のトラブルが生じやすいので注意が必要です。

住宅工事は規模こそ小さいのですが、建築物として求められる品質や内容については大型建築や一般建築とさほど変わりがありません。
逆に規模が小さくなるほどタイトなスケジュールで多くの要求を処理しなければならなくなり、小さなミスさえもカバー出来なくなる危険性があります。

個人宅工事の場合のお施主の多くは建築のプロではない為、建築の常識や予算関係には疎いのですが、仕入れている情報に関してはプロを凌ぐほど熱心に勉強されているので注意が必要です。
うっかりした発言が後のトラブルを招く可能性もあります。
建築士として知らない事、自信が無いものは適当に誤魔化さずに正直に伝え、後ほど確認して正式な回答を送る方が良いでしょう。

個人住宅の工事の場合、施主・設計士・現場管理者・職方の立場が近くなります。
お施主様が頻繁に現場確認に訪問する場合もあり、つい現場の職人と話を進めてしまうような事が時々起こります。この時にウッカリ図面や打ち合わせには存在しない約束事が生まれてしまい、後々大変な板挟み状態に陥って思わぬトラブルに発展するケースがあるので注意が必要です。

お施主様が工事業者と直接交渉を始めると、設計からずれた物が完成し、板挟みで大変な事になる場合が起こります。事前に入念な打ち合わせを行い、良好な関係を構築しておかなければいけません。


3.やたら物言う施主に困った

建築士あるある!現場で困ったアレコレ

インターネットの普及により、一個人でも多くの情報を簡単に入手出来るようになりました。特にスマートフォンの登場は、専門家でも知り得ない情報収集が可能になりました。

士業の仕事は「知識」と「経験」が物を言います。これは建築士も同じで、専門知識を豊富に持ち、いかなる建築物にも柔軟に対応出来る能力を問われる仕事と言っても良いでしょう。

ところがこの知識、インターネット上に出回る情報の影響で翻弄される事があります。
個人住宅における工事のお施主様は、自分の身銭を切って自分の望むイメージ通りに建築工事を完成したい為に必死で勉強されています。 カタログを取り寄せ、仕様書を隅々まで読み、何箇所も住設ショールームを渡り歩き、建築雑誌も熟読されています。

さらにインターネットを利用して、裏話や建築経験者でなければ知り得ないような専門的な知識まで吸収しつつあります。
情報収集に熱心なお施主様ほど、やたら物を言うので注意が必要です。

私も過去に勉強熱心なお施主様と出会いましたが、一番驚いたのは、工事中の屋根の上に登ってきてスマートフォンアプリで屋根の角度を測る人でした。工事内容の全てを自分で目視し、写真を収めると言う、現場監督さえも驚くお施主様です。

これは極端な事例ではありますが、昨今のお施主様は建築工事の知識に関してはプロ顔負けである事は認識しておきましょう。迂闊な発言は命取りになる危険性があります。 勉強熱心なお施主様を褒めつつ、適切なアドバイスを行うのが設計士の役割です。


4.下請けの弱い立場に困った

建築士あるある!現場で困ったアレコレ

現場は、建築現場やお施主様宅だけはありません。交渉の場も一種の現場と言えるでしょう。

図面を書くだけが設計士の仕事ではなく、建築士の仕事は多岐に渡ります。
最も身近な設計の仕事と言えば、一般住宅工事の設計ですが、この仕事はあまり儲かりません。
設計業務として面白い仕事になりますが、安定して毎月受注出来るわけでもなく、個人宅の工事では金銭面を含めた厳しい条件が色々とあります。

小規模の設計事務所では、大型工事の設計業務は簡単に受注出来ません。
そうなると、安定した受注を目指すと下請け業務が必要になります。

建築業界は「元請け」「下請け」の縦割りが特に厳しい社会です。
元請業者の立場は強く、下請け業者は簡単に「NO」が言えない弱い立場にあります。
下請け業務に関しては法的に様々な制限が設けられていますが、それでも下請け業者の立場が強くなるわけではなく、最低限の保証がされている程度の措置に過ぎません。

華やかそうに見える建築士の仕事も、実際には下請け業務が多く、威厳のある先生というポジションは夢の世界のお話です。

下請け業務は、金銭的・時間的に厳しいものが多く、一度受注するとなかなか関係性を断てない為、長期に渡り厳しい業務を請け負う事になります。
さらに少子高齢化と人口減少の影響により、個人住宅を中心に新築需要が減少しています。この厳しい状況の中、建築士が生き残れる新しい市場開拓と交渉スキルが必要になっています。


5.強い立場を作る為のスキル

建築士あるある!現場で困ったアレコレ

建築士に良くあるトラブルを紹介してきましたが、実は共通するスキルがあれば改善可能です。

その能力とは、ズバリ「コミュニケーション能力」です。

建築士には「コミュニケーション能力が必要」だと良く言われますが、私自身も強くそう感じます。
コミュニケーション能力は建築士だけに必要なものではありませんが、有名な建築家の先生達に共通するのは「コミュニケーション能力の高さ」であるのは間違いありません。

建築士は、建築設計のプロです。当然ですが建築設計に関する知識や経験が豊富でなければ仕事は出来ません。しかし、いくら良い図面が書けても、どれだけ素晴らしいデザインセンスがあっても、仕事を受注出来なければ業務として行っていくことが出来ません。
交渉や営業、打ち合わせや現場での指示、これらの全てにコミュニケーション能力が問われる事は言うまでもないでしょう。

黙々と図面を書くだけが建築士の仕事ではありません。人との関わりを大切にし、お施主様や現場とも良好な人間関係を構築する為には、コミュニケーション能力の向上に努めなければなりません。
個人のお施主様であれば、よりコミュニケーション能力が高く、要望を聞き入れてくれる柔軟な建築士を望む傾向があります。

弁護士以上に寄り添い、心強く親身になってもらえる建築士が望まれています。
専門である建築関連の勉強は当然の義務ですが、コミュニケーション能力向上の勉強をしっかり行うべきでしょう。


6.まとめ

いかがでしたか?建築士なら「あるある」と感じた苦い経験もあったのではないでしょうか。

建築の専門家とは言え、最初からプロではありません。
数多くの苦い経験を経て、何度も壁に当たりながら成長を遂げていくものです。

お施主様との交渉の場や、現場に赴く事に気が重いと言う人も居ますが、これも大切な仕事の一部です。
積極的に人と関わりを持ち、自分自身の人間性を高め、信頼のある建築士を目指さなければなりません。

経済成長著しい華やかな時代であればオシャレな建築士でも生き残れたかも知れません。しかし、この先は人口減少やIT化に伴い仕事も大幅に変わると言われています。

これからの時代に建築のプロとして生き残るためには、コミュニケーション能力向上は必須です。人と関わるスキルをしっかり持つ事は、トラブル回避の最大の秘訣でもあります。


著者(田場 信広)プロフィール

・一級建築士、宅地建物取引士

・建築設計、工事監理、施工(大工)、戸建て木造住宅の新築からリフォーム全般、分譲マンションの内装改修、マンションの大規模修繕工事の設計・設計管理、警察署の入札仕事や少年院の特殊な工事も経験

・某資格学校にて2級建築士設計製図コースの講師を6年務める






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