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掲載:2023年07月21日更新:2023年09月12日

壁面緑化で植物を取り入れるメリットは?知っておきたい基礎知識


「オフィスビルを話題性のある外観にしたい」「ショッピング施設の利用客の滞在時間を上げられないだろうか」そんなときに検討したいのが壁面緑化。SDGSの一環として社会貢献にもつながります。
今回は壁面緑化の基本を解説するとともに、おすすめの植物やメリット・デメリットなどをご紹介します。


1.壁面緑化とは?



壁面緑化とは、建物の壁や門などを植物で覆うことをいいます。単に見た目がいいから取り入れるわけではなく、ヒートアイランド対策空気浄化なども目的のひとつです。

地域によっては、条例で壁面緑化や屋上緑化が定められていることもあります。例えば東京都で敷地面積1,000 ㎡以上の土地で建築物を新築・増改築する際は、壁面緑化や屋上緑化が義務付けられています。


2.壁面緑化の手法は3タイプ


壁面緑化をするには「壁面登はん型」「壁面下垂型」「壁面前植栽型」のタイプの手法があります。

【壁面緑化手法1】壁面登はん型


壁面登はん型」とはその名の通り、壁面を植物が登っていくタイプです。

自立登はんタイプ


付着根をもつ植物を用いて、建物の壁をつたわせていく方法です。甲子園球場を覆うツタが分かりやすい例ではないでしょうか。
補助材が不要で簡単に導入できる方法ですが、壁が覆われるまでに時間がかかる、金属やガラスなどツルツルした面には定着しないなどの注意点があります。

補助材使用登はんタイプ



壁面をまんべんなく植物が覆うよう、ワイヤーやワイヤーメッシュなどの補助材を設置する方法です。補助材に茎や根が絡むため、基本的に壁自体には付着しません。あらかじめ壁面に補助材の取り付けが可能か、確認しておく必要があるでしょう。

【壁面緑化手法2】壁面下垂型


壁面下垂型」とは壁面上または途中に植栽基盤(プランター等)を設置し、植物を垂らして壁面を覆うタイプです。

自立下垂タイプ


壁面の上部や途中に植栽基盤を設け、そこから植物を垂らしていく方法です。自立登はんタイプと同じく経済的でメンテナンスがしやすい反面、壁を植物が覆うまでに時間が必要であったり、風の影響を受けやすかったりするデメリットがあります。
また、利用できる植物の種類もあまり多くありません。

補助材使用下垂タイプ



「補助材使用下垂タイプ」はワイヤーやネットなどの補助材を用いて、植物を下垂させていく方法です。植物が壁面を覆うまでに時間がかかるというデメリットがあるため、登はん型と下垂型を併用する方法もあります

【壁面緑化手法3】壁面前植栽型


壁面前植栽型」とは壁面や補助材に直接植栽基盤を設置するタイプです。

緑化コンテナ設置タイプ


コンテナ式 壁面緑化イメージ

ツル性植物を生育したコンテナと補助材を壁面に取り付ける方法です。ある程度植物が成長した状態なので、施工後すぐに緑被率が高くなります。
ただし、普段手入れや水やりができないような場所に設置する場合は、自動潅水装置が必要となります。

植栽基盤取付タイプ



植物を育成した基盤を壁面に取り付ける方法で、主に商業施設で採用されています。壁面緑化にはツル性植物を用いることが多いなか、比較的自由に植物を選べるのが特徴。
メンテナンスが欠かせず、1㎡あたり100kg以上の荷重がかかるため、設置できる建物が限られます。


3.壁面緑化に使われる植物の種類


壁面緑化にはそれぞれ適した植物を選定しなくてはなりません。ここではタイプごとにおすすめの植物をご紹介します。

登はん型・下垂型



登はん型と下垂型でおすすめなのは、ツタ植物やツル植物。
代表的なヘデラをはじめ、ジャスミン、カズラ、トケイソウ、ツタ、キウイなどが適しています。

壁面前植栽型


壁面前植栽型には平面を広く覆ってくれる地被植物(グランドカバー)が適しています。
セキショウやフイリノシランといった多年草だけでなく、シダ、コケ、多肉植物などさまざまな植物を取り入れられます。


4.壁面緑化を取り入れるメリット


壁面緑化を取り入れるメリット

壁面緑化を取り入れるメリットには何があるのでしょうか。

メリット①建物の保温・断熱


壁面を植物で覆うことで、直射日光や照り返しによる室温上昇を抑えられます。冬場は室内の暖かさを逃がしにくくする保温効果も。
年間を通じて快適な室温に保ちやすく、省エネにつながります。

メリット②ヒートアイランド対策


建物にこもった熱が放出されることも、ヒートアイランド現象の原因です。
そのため建物の温度上昇を抑える壁面緑化を取り入れることで、ヒートアイランド対策になると言われています。

メリット③建物のダメージを軽減


壁面を覆う植物が紫外線や熱から建物を守ることから、コンクリートやコーキング材の耐用年数が上がるのもメリットのひとつです。

メリット④ストレス緩和やイメージUP


緑は人々を癒す力があると言われており、実際に壁面緑化にはストレス緩和効果が期待できるという研究結果も出ています。
壁面緑化を施すことで、さわやかなイメージや環境問題への取り組みをしているという印象、イメージアップにもつながるかもしれません。


5.壁面緑化を取り入れるときの注意点


壁面緑化を取り入れるときの注意点

壁面緑化を取り入れる際は、いくつか注意しなくてはならないポイントがあります。

注意点①建物本体への影響


特に植栽基盤取付タイプは、壁面への荷重を確認しなくてはなりません。直接壁面へ金具を固定するため、最悪の場合建物本体に影響を与えてしまうことも。
構造補強をするか、壁面手前に鉄骨柱をたてて壁に干渉しない方法をとるなど、工夫が必要です。

注意点②メンテナンス


植物は生き物なので、美しさを保つには日々のメンテナンスが欠かせません。普段水やりができない場所には自動潅水装置を取り入れたり、植物が枯れたら植替えをしたりする必要があります。
自分たちではメンテナンスが難しい場合、業者による定期メンテナンスを検討するとよいでしょう。

注意点③緑被率が上がるまでの期間


登はん型や下垂型は建物が緑で覆われるまで、数年かかります。すぐに緑豊かな壁にしたい場合は、壁面前植栽型を選択するのもひとつの手。
また、壁面前植栽型でも発注してすぐに施工できるとは限りません。使用する植物が育つまでに数ヵ月程度時間が必要なので、時間に余裕を持って発注しましょう。

注意点④植物の種類


キウイやトケイソウなど果実をつける種類の植物は落下する可能性があるため、通行人が多いスぺースに採用するのはおすすめできません。
また、屋内に落葉植物を採用すると、景観や掃除の問題が出てきます。設置場所に合わせて植物を選ぶことが大切です。


6.壁面緑化が活躍するシーン


ここからは壁面緑化が活躍するシーンを見ていきましょう。

商業施設



商業施設内の壁面を緑化することで、やすらぎの空間を演出できます。緑豊かな空間づくりで利用客に好印象を与え、リラックス効果により滞在時間を長くする効果も。
話題作りにもなり、リピーターや売上アップにも貢献できるかもしれません。

オフィス



仕事というストレスがかかりやすいオフィスにおいて、緑を取り入れることは働く人々のストレス緩和にも一役買います。リラックスしやすい空間づくりをすることで、生産性の向上にも役立つかもしれません。
水やりや手入れが難しい場合は、フェイクグリーンを用いた壁面緑化もおすすめ。本物の植物よりも軽量なので、場所を選ばず設置できるというメリットもあります。

まとめ ~壁面緑化で植物を取り入れた心地よい空間づくりをしよう~


木材を取り入れた内装はそこで過ごす人に好ましい影響を与えたり、快適な室内環境を保ったりできると考えられています。
さらに地球環境問題、国内森林資源の活用、林業の活性化の点でも、建物への木材利用は推進されており今後もこの流れが止まることは考えにくいでしょう。

興味がある人は今回紹介した材料選びや施工のポイントを押さえつつ、メリットの多い内装の木質化に挑戦してみてはいかがでしょうか。




著者(村田 日菜子)プロフィール

大学で建築を学んだ後、住宅専門のライターとして活動中。
主にWebコラムや住宅情報誌で、住宅購入やリフォームのノウハウ、マネー情報等の原稿執筆・編集をしています。






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