土間のある家で暮らしたい
「土間のある家」と聞くと、昔ながらの住宅をイメージする方が多いと思いますが、最近は新築住宅に採用されることも多く注目を集めています。古民家カフェやリノベーションなどが人気なこともあり、長い間日本人の生活に溶け込んだその魅力は再び見直されているのかもしれません。
今回は、土間のメリットや注意するポイント、間取りへの取り入れ方をご紹介します。
1.そもそも土間とは?

土間とは、室内でありながら土足で歩ける空間のことを指します。
意味としては玄関と同じように感じますが、土間はもう少し広めの空間で、靴の脱ぎ履き以外の用途も兼ねていることがほとんどです。昔の日本の家では玄関を入るとまず土間があり、農作物を置いたり農具の手入れをしたり、室内ではできない作業をする場所として重宝されていました。屋外と屋内をつなぐ役割の空間といえるでしょう。
かつては文字通り土を固めてつくられていましたが、最近は漆喰やタイル、コンクリートやモルタルなどの素材を用いることが多いようです。
2.土間のメリット

土間にはどのようなメリットがあるのでしょうか。具体的に見ていきましょう。
天候に左右されず作業ができる
土間は屋内なので雨や強風など天気を気にする必要がなく、土足で利用できるため室内には持ち込めない作業も行うことができます。DIYをしたり自転車を修理したり、スポーツ用品を手入れする場にも向いています。
夏場に涼しい
土間の床材によく使われるタイルやコンクリートは、熱伝導率が高く、触ったときに冷たく感じます。そのため、夏場など暑い時期でも涼しさが感じられる空間づくりができるでしょう。
エアコンなどの冷房器具の使用が減れば、光熱費の節約にもつながります。
メンテナンスがしやすい
土間の部分はコンクリートやタイル仕上げが多いので一般的な床材に比べて汚れが目立ちにくいメリットがあります。
汚れても掃除が簡単で、水洗いもできます。毎日過ごす場所だから、掃除やお手入れが簡単なのは嬉しいですね。
おしゃれな空間がつくれる
人気とはいっても、土間を取り入れている住宅はまだそれほど多くないので、個性を発揮でき、おしゃれな雰囲気が演出できるでしょう。
床材との素材の変化や目線の高さが変わることによって、動きのある空間がつくれます。土間というと和風のイメージが強いかもしれませんが、素朴でナチュラルな雰囲気なので、どのようなテイストの空間にも馴染むでしょう。
3.土間のデメリット

土間のデメリットもしっかりと把握しておきましょう。
白
清潔さを感じさせる白は、内装やインテリアでも人気の色です。光を反射するため明るく、膨張色なので部屋を広く見せる効果が期待できるでしょう。
どのような色も引き立たせるため、合わせる建具や家具の色を選びません。清潔感がほしいトイレや洗面室、広く見せたい室内の壁紙などに取り入れると良いでしょう。
あまりに白が強かったり面積が広いと、落ち着かない雰囲気になることもあります。アイボリーやベージュのような、ナチュラルで優しい色を用いるのもおすすめです。
冬場は冷える
先述したように、土間は夏場に涼しく過ごすことができる反面、冬場は寒さを感じやすく大きなデメリットといえます。
床下に空間があるフローリングとは違い、土間は地面からの熱が直に伝わるうえ、熱伝導性の高い素材を用いることが多いため、足元から底冷えしやすくなっています。
住宅全体の断熱性能を高めるのはもちろんですが、断熱材や床暖房の導入、暖房器具の設置などの寒さ対策を施しましょう。
湿気が生じやすい
屋外と屋内をつなぐスペースである土間は、温度差で湿気がこもりやすく結露が発生しやすくなります。
壁材や調湿性能を持つ壁紙を使用したり、吸湿効果のある漆喰や珪藻土など素材を用いると良いでしょう。
除湿機を置いたり、こまめに換気を行い、家の中の湿気を外へ逃がすことが大切です。
段差ができやすい
土間の特性上、どうしても段差ができやすいということもデメリットでしょう。
高低差はそれほど大きくありませんが、小さな子どもや高齢者など転倒のリスクがあることも念頭に置いておかなければなりません。
段差をできるだけ小さくする、スロープを設けるなどの工夫が必要です。
4.間取りへの取り入れ方

実際にどのように土間を間取りに取り入れたら良いか、生活スタイルを踏まえて考えてみましょう。
土間玄関
もともと使用目的が似ている玄関を広めにして、土間玄関とするのが最も手軽な取り入れ方法ではないでしょうか。
玄関に土間収納を設けることで、自転車やベビーカーをそのまま収納でき、雨具やDIYの工具、アウトドア用品などもしまうことができます。
土間玄関に椅子やテーブルを設置し、来客スペースとして使うのもおすすめです。お客様も靴を脱がずにそのまま入れるため立ち寄りやすく、楽しい時間が過ごせそうですね。
土間キッチン
キッチンに土間を取り入れると、水はねや油はねがあっても、モップで水拭きしたり直接水で汚れを落とすこともできます。
火を扱うため熱気がこもりやすいキッチンでも、土間の涼しげでひんやりとした感触は心地よさを与えてくれるでしょう。土間は他のスペースよりも床の高さが低くなるのですが、立ち仕事の多いキッチンの床高が低くなることによって他のスペースにいる家族と目線が近くなり、活発なコミュニケーションにも一役買ってくれるかもしれません。
土間リビング
リビングの一部に土間スペースを設け、庭とつなげてアウトドアリビングとして活用することもできます。
室内でありながら開放感のある空間がつくれるでしょう。家族や友人とバーベキューを楽しんだり、子どもの遊び場にするのもいいですね。土足で歩き回れる土間スペースなら多少の汚れは気にならず、掃除もしやすいので、子どもたちも思い切り遊べるでしょう。
近年人気となっている薪ストーブを設置するときも、土間が活躍します。通常薪ストーブを用いる際は、レンガやタイルなどの素材で床(灯台)や周りの遮断壁をつくります。土間を床に使用すれば、部屋との統一感も生まれ、薪を置くこともでき、掃除もしやすいので便利です。
土間は水に強いので、天気が悪いときに室内物干しの場所として活用することもできます。
通り土間
通り土間は玄関から家の中へと続く土間のことで、廊下のような役割を持ちます。
玄関を入ると、通り土間が奥へと続くことで奥行きが感じられ、家の中を広く見せる効果もあります。通り土間は、人だけでなく風や光の通り道としての役割も果たしています。空気が循環することで、快適な空間をつくってくれるでしょう。
キッチンやパントリーとつなげば、買い物したあとに重い荷物を待ったまま靴を脱ぐことなくキッチンまで運ぶことができ、とても便利です。土間なら濡れているものもそのまま置くことができるため、作業効率UPも期待できるかもしれません。
玄関から庭までつなげると、より開放的な雰囲気になり、自然な風の流れも感じられるでしょう。通り土間を使って、来客スペースと生活スペースを分けることもできます。完全に分けるのではなく、ほどよいつながりが感じられるのも土間が持つ柔らかく温かみのある風合いの良さかもしれません。
通り土間の幅を広めにすれば、家族のクローゼットを設けたり洗面台を設置することもでき、生活スタイルに応じて通路以外にもさまざまな使い方ができます。
まとめ
土間は優れた機能性を持ちながら、素朴で親しみが感じられます。さまざまな素材があるので、今の暮らしに合った土間スペースの取り入れ方があります。
土間の良さを活かすためにも、生活スタイルや生活動線、土間の使用目的などをじっくりと考えてみると良いでしょう。
建築・インテリア系の専門学校卒業後、工務店にて建築業務に携わる。
福祉住環境コーディネーター2級。
二児の母。