国内企業3社が塩ビクロス廃材を内装壁材にアップサイクルする技術を開発
フクビ化学工業、エスエスピー、積水ハウスの3社が、日本初となる塩ビクロス廃材をアップサイクルした内装壁面建材を共同開発したというニュースが流れてきました
戸建住宅や集合住宅の新築、リフォームでの採用に向けて2024年4月の商品化を目指しているとのことです。また、今回の開発の目的は、塩ビクロス廃材を構成している天然素材とパルプの素材感を活かし、愛着の湧く建材に実現に力を入れたとのことです。
今回はそんな塩ビクロス廃材を活かした新しい建材の可能性について執筆していきます。
※アップサイクルとは、廃棄物を再利用し、以前よりも付加価値の高いものを作り出すことをいいます。創造的再利用とも呼ばれています。
1.塩ビクロス廃材とは?
そもそも塩ビクロスとはなんなのか、その特徴を下記にまとめます。
・国内の壁紙生産量の93%を占めるものの、リサイクルが難しい、処理困難物とされている
(コストの高い埋め立てが必要なため)
このような特徴をもつなか、最近では防音材などに再利用する動きが出てきています。クロスと言えば塩ビクロスというほどの高いシェアを誇っています。
また、塩ビクロスには通常の量産品のものと、デザイン性に優れ付加価値を高めた一般品のものとがあります。
そんな高いシェア率を誇る塩ビクロスですが、一時的に人気が落ちてしまったことがあります。一部の商品で使用されていた可塑材が空気中に揮発するなどして健康被害をもたらす危険性があるとされた時期がありました。
しかし現在では難揮発性の可塑材が使用されるようになり、この問題点は解決し、また人気が復活しています。
2.なぜ塩ビクロス廃材をアップサイクルすることにしたのか?
高いシェア率を誇る塩ビクロスですが、リサイクルがしにくいというデメリットが目立ってしまっていたため、塩ビクロスの処理課題解決とリサイクル促進に向けて3社がそれぞれの得意分野を活かして開発することとしました。
この開発の最大のメリットは、住宅業界においての塩ビクロスの循環型モデルを可能にできる点です。
3社ともホームページ内において、下記の内容を掲げています。
※フクビ化学工業、積水ハウス、エスエスピー 日本初「塩ビクロス」のアップサイクル内装壁面建材を共同開発参照
3.3社のスキーム
積水ハウス
積水ハウスのゼロエミッション活動拠点である資源循環センターにて、分別された廃棄物の塩ビクロスを原材料とする。
エスエスピー
エスエスピーの混錬技術にて、塩ビクロスの構成材である塩ビとパルプを混ぜたリサイクル原料として再資源化。
フクビ化学工業
フクビ化学工業の異形押出成形技術で、デザイン建材としてアップサイクルする。
※フクビ化学工業、積水ハウス、エスエスピー 日本初「塩ビクロス」のアップサイクル内装壁面建材を共同開発参照
4.塩ビクロスの魅力
今回開発されたリサイクル建材は、リブ柄(デコボコとした畝のような模様)の壁面材として使用が可能であり、この柄は時代を問わず人気であることから、どの世代の方からも受け入れられやすいです。また、低コストで済むことも魅力です。
仮に木材を使用した場合には、非常に高価な建材であり、コストもそれなりにかかってしまいます。塩ビクロス由来のリサイクル素材を用いると、木材と比較しても価格を大きく抑えることができます。
またサステナブルである点も魅力です。
5.実は環境問題に貢献する塩ビ製品
近年、日本においての環境問題と言えば、「脱炭素」と「資源循環」がキーワードになってきています。
また、プラスチックに係る資源循環の促進に関する法律案が成立しました。
製品の設計からプラスチック廃棄物の処理までに関わる、プラスチック資源循環等の取組を促進するための措置が講じられることとなりました。
そんななか、塩ビ製品には以下のような特徴があり、これが環境問題に貢献するといわれている由来です。
塩ビ製品は主に、断熱性、耐久性、製造時のCO2排出量等の面で優れた特性を有しており、脱炭素や資源循環の実現に大きく貢献しています。
6.コストを気にしない方は和風建築らしく「板張り」も
板張りというと、昔の住宅などをイメージする方が多いでしょう。
しかし、近年はこれが再注目されており、お洒落な住宅に利用されることが増えてきました。
板張りとは、壁に板材そのものを仕上げ材として施工する手法のことです。板張りは日本人に馴染みがあるだけでなく、本物志向や高級志向のある方におすすめします。
板張りには以下のような特徴があります。
・張替を部分的に行うことが可能
・汚れを落としやすく高級感がある
・施工中に乾燥させる期間が不要
上記以外にも、クロスと異なる点は傷が目立ちにくいというメリットがあります。
メーカーによっては、耐摩耗や耐汚、耐キズ塗装が施されているものもあり、公共施設や店舗、学校、病院などに使われている例も多くあります。また、天然木の持つ調湿・保湿機能によって、高級感のあるデザインだけでなく暮らすうえで快適な空間をつくりだすことができます。
メリットがあるなかで、デメリットも存在します。
・施工費が高い
・施工するうえで高い技術が必要
・木割れしてしまう可能性がある(無垢板の場合)
上記以外に、傷がつきにくい代わりに、傷がつくと補修が難しいというデメリットもあります。
もしも補修が必要となってしまった場合、プロに依頼するか板材ごと張り替えなくてはなりません。こういった点でもコストがかかってしまうことになります。
部分的な補修も可能なのですが、天然のものであることから、同じ色合いや風合いのものをすぐに用意できるとは限りません。そのため、将来的に必要な場合を想定し、新築時に余分な材料もストックしておくことをおすすめします。
まとめ
今回積水ハウスをはじめとする3社が開発した塩ビクロス廃材のアップサイクルは、住宅業界によって画期的なものであることは間違いありません。
海外では塩ビクロス自体をあまり活用されておらず、そんななかで日本初の塩ビクロス廃材のアップサイクルのニュースは、環境問題にも大きく貢献していくと思います。
クロスの可能性を大きく飛躍させた塩ビクロス廃材、2024年4月からの商品化に向けていまのうちから視野に入れておくことで、これから新築住宅を建てる予定の方はひとつの選択肢として検討していてはいかがでしょうか。
建設会社にて2×4工法、RC造の建築物の設計・積算を担当。
住まいでの快適な暮らしや建築に関するニュースを執筆していきます。