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ジェネレーティブAI登場で工務店はこう変わる!
この1年でAIの技術革新が加速しています。命令文と呼ばれる「プロンプト」を入力するだけで文章生成、画像生成が瞬時におこなえるようになり、仕事のあり方が大きく変化しようとしています。
ジェネレーティブAIの登場により、住宅業界はどのように変化していくのでしょうか。
ジェネレーティブAIの登場により、住宅業界はどのように変化していくのでしょうか。
1.ジェネレーティブAIでできること
ジェネレーティブAIとは、コンピューターが自ら学習したデータを元に新たな情報を提示する技術です。 さまざまな技術に活用され、住宅業界では次のような活用方法が期待されます。
文章生成
ジェネレーティブAIでは、ユーザーの知りたい情報を瞬時に文章として作成することができます。
ホームページのお問い合わせフォームに実装すると、ユーザーの質問に対しAIが膨大なデータから代わりに答えを提示できます。 その結果、これまで電話応対の時間を大幅に削減することができ、業務効率化のサポートが可能です。
画像生成
文章だけではなく、画像生成をおこなうことができます。 イラスト、3D、写真、図面とユーザーが求めているフォーマットに合わせた画像を生成することができます。
部品設計
過去のデータを参考に部品設計することも可能です。プロトタイプをすぐに生成することができるため、新しい建材を開発検討する際に役立てることができるしょう。
実際にトヨタ米研究所では、エンジニアの設計をサポートするために、車両設計ツールを開発しました。 今後は住宅業界にも役立つツールが開発され、デザイナーや建築士の作業軽減が期待できます。
2.ジェネレーティブAIを住宅業界でどのように応用をするか
ジェネレーティブAIは今後どのように住宅業界を変化させていくのでしょうか。AI技術がもたらす住宅業界の変化を考えてみましょう。
ECサイトの利便性向上
ジェネレーティブAIが発達することで、ECサイトの利便性はこれまで以上に高まると言われています。
ECサイトにある顧客データを瞬時に分析し、サイト経由で建材を検討しているユーザーに対し、見積もり、満足度の高いオプション等を提案できます。さらにユーザーが商品を購入すると、どのようなレイアウトが完成するかAIを活用して図面やイメージ図を作成することもできます。
ECサイトが付加価値を提示できるようになれば、利用者はECサイト経由でリフォーム等を検討し、これまで工務店が得意としていたことも代わりにおこなうことができるでしょう。
作業効率化
図面の作成、設計戻しなどこれまで非効率かつ時間のかかる業務をAIが代行することで、作業効率化が考えられます。瞬時に複数の図面を作成することができるので、工務店の提案の幅が増える可能性が高くなるでしょう。
生成AIはこれまで人間が努力して作成したものを一瞬で出力することができます。オリジナリティのある提案をしていた工務店は、ジェネレーティブAIの作る図面との差別化をしなければ、差別化を提示することができなくなる恐れがあります。
3.AIにできないこと
ジェネレーティブAIの発達することで近い将来AIが全ての仕事を奪うと危惧している方もいます。しかし、AIにできないこともあります。
AIが苦手としていることは何かを紹介していきましょう。
感情を動かす
AIは人間の感情をコントロールすることは難しいと言われています。人の感情はその人によって異なります。 データでは表せない感情の動きもあります。
そのため、感動する図面を提案してほしいと命令しても、その通りに作れないこともあります。
自ら考えて提案する
過去のデータから創造することは可能ですが、自ら何かを新たに学習し提案することはできません。
過去の利用者が喜びそうなサービスを考えることができても、過去の経験から革新的なサービスをゼロから生み出すことはできないでしょう。
現場作業
ジェネレーティブAIがいくら発達しても、建物の建築に携わるのは職人です。
職人の技術を再現するツールを開発することができても、長年の経験や勘を活かした現場対応はAIにはできません。
4.工務店が向き合うべき未来
ジェネレーティブAIの技術が発達すると、工務店がこれまでやっていたほとんどの業務をジェネレーティブAIが代替する可能性があります。
具体的にどのような形で工務店の仕事がジェネレーティブAIと置き換わるかを説明していきましょう。
ジェネレーティブAIに変わる仕事
予算の見積もり、図面の設計・提案はAIが代替する可能性があります。
これまで、独創的な図面を売りにしていた工務店は、AIが誕生することで近い図面の提案が可能になってしまう恐れがあります。
お抱え職人離れ
ジェネレーティブAIが発達し、ECサイトの依頼が多くなればECサイトも職人さんを雇うようになります。現場で働く職人さんは、買い叩かれず報酬の良い場所を選びます。
職人を囲うために報酬を高く設定したECサイトが現れると、これまで付き合いのあった職人さんも工務店ではなくECサイトの案件を受けるようになり、工務店の案件を断ってしまうこともあります。
質の良い職人さんと良好な関係を築けていない工務店は、案件を受注することができても今後職人さんの確保に苦労するかもしれません。
ECサイトの案件のみを担当する受注業者
これまで通りの業務に立ち行かなくなってしまった工務店は、ECサイトから降りる業務を受注する業者に成り下がってしまう可能性があります。
受注業者となってしまうと、これまで自由度の高い設計や提案が難しくなるだけでなく、ECサイトに買い叩かれてしまう恐れがあります。
最悪の事態を回避するために、工務店は独自の対策を検討しなければなりません。
5.工務店はどう向き合うべきか
ジェネレーティブAIにより業務形態の改革をしなければならない工務店は、この先どのように変化をすれば良いでしょうか。
変化するために大切なことは「AIにできないことができる工務店」になることです。具体的にどのようなことかを紹介していきましょう。
ジェネレーティブAIの活用方法を検討する
ジェネレーティブAIを研究し、どのような場面で活用できるかを工務店が検討します。これまでホームページの作成等ができないのであれば、ジェネレーティブAIにホームページの簡単な設計をしてもらうでも構いません。
積極的に導入し、ジェネレーティブAIに任せた方が良い仕事とそうでない仕事を選択しましょう。
ユーザーにAIができない新たな価値を提供する
工務店を利用したユーザーに対し、住宅のメンテナンスなどAIができない価値を提案します。
接客時にきめ細かい対応をすることで、ユーザーの顧客満足度を高め、このお店から受注したいと思うような関係性を構築しましょう。
AIを取り入れたサービスを構築する
工務店がこれまで苦手としていたことをジェネレーティブAIを利用することで問題を解消することも可能です。苦手としていた分野をジェネレーティブAIに任せることで、業務効率化を行うことができます。
脅威と捉えるのではなく、自社でどのように活用することができるかを検討しましょう。
まとめ
ジェネレーティブAIは人の仕事を奪う脅威として扱われてしまいますが、AIをうまく活用することで、工務店がこれまでできなかった価値を提供することもできます。最もやってはいけないことは、何も対策を考えずこれまでの事業展開で乗り越えようとすることです。
ジェネレーティブAIの登場はDX化を促進するためのツールと捉え、どのようにすれば自社で活用できるかを検討してみてはいかがでしょうか。
著者(山口 晃平)プロフィール
本職は、エンタメクリエイター。
知人のエクステリア界隈の記事執筆を機に、エクステリア界隈に興味を持つ。
現在は、エクステリア系専門誌の記者としても活動中。
展示会が好きです。
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