明るさ?それとも雰囲気?インテリアをワンランクアップさせる照明の選び方
マイホームをより心地よい空間にしたい時、こだわりたいポイントのひとつがインテリアという方は多いのではないでしょうか。
しかし同じインテリアでも、大きく印象を変えてしまう照明にこだわる方はまだ少ないのが現状です。明るさ、そして色の見え方はインテリアの印象に加えて、その場で過ごす気持ちにも影響してくる大切な要素だけに、空間づくりにおいて照明選びにも時間をかけたいですね。
この記事では、こだわりのインテリアの印象をワンランクアップさせる照明の選び方について、インテリアづくりと絡めながらご紹介します。
1.インテリアと照明のカラーバランスに注意しよう
普段私たちが目で見て認識している「色」は多種多様です。
たとえば「赤」といっても色みや明るさ、濃さによってさまざまな「赤」がありますし、他の色でも同じです。細分化していくととても専門的な話になってしまうので、ここではインテリアと照明のカラーバランスという観点から分かりやすく説明します。
色の分類として「イエローベース」「ブルーベース」という言葉を目や耳にしたことはないでしょうか。
あらゆる色は、黄色がベースとなる「イエローベース」か青色がベースとなる「ブルーベース」に大まかに分けることができるという理論で、ファッションやメイクの分野ではよく使われる言葉です。インテリアでも基本的な考えは同じで、要は「黄みがかっているか青みがかっているか」ということです。
たとえば白色でいうとソフトクリームの白と空から降ってくる雪の白は同じ白色ですが明らかに違うトーンですね。
ソフトクリームの白はやわらかくやや濁っている「イエローベース」の白、雪の白は透明度が高く冷たい感じを与える「ブルーベース」の白です。色の名前としては同じでも、2つのベースの色は明らかにトーンが異なり与える印象も大きく違うため、同じ空間内で併用するとごちゃごちゃした雰囲気になります。
逆に言えば、同じ空間内では同じベースの色でそろえるとまとまりやすいということです。
この基本ルールはインテリアと照明のカラーバランスでも変わりません。
照明の光の色はオレンジがかった「電球色」、白っぽい「昼白色」、電球色と昼白色の中間である「温白色」の3つに大まかに分けられています。
電球色はオレンジ、つまり黄みが強い光なのでイエローベース、昼白色は青みがかった白い光なのでブルーベースの色のアイテムと相性がよく、魅力を引き立ててくれます。
先ほどの例でいくと、ソフトクリームの白は電球色の照明によってよりやわらかく癒される印象が強くなりますが、昼白色の照明だと濁って見えるため魅力が半減してしまうのです。照明の光がアイテムの色に及ぼす影響はカーテンやソファ、ラグといった面積の広いアイテムになるほど大きくなるので、インテリアと照明のカラーバランスは空間全体の印象を左右する重要な要素なのです。
2.空間の用途に合わせて照明を使い分けよう
インテリアアイテムの美しい色が照明の光の色によって生かされる場合と生かされない場合があることはご理解いただけたかと思います。
とはいえ、住宅の場合は生活空間として日々のさまざまな作業がしやすい、過ごしやすいことが大前提です。
そこで大切になってくるのが、空間の用途に合わせて照明を使い分けることです。
直接照明:調理や在宅ワークなど細かい作業を行う場所に
直接照明とは、照明器具の光が直接作業面に届くような照明器具を使ったプランのことです。
シーリングライトやペンダントライト、ダウンライト、スポットライトなどの照明器具を使って手元を明るく照らします。作業面が明るくなり調理やパソコン、新聞や本などを読む作業がしやすいため、キッチンや書斎、ワークスペースなどに適しています。
間接照明:団らんや食事などくつろぎながら過ごす場所に
間接照明とは、壁や天井・床などに光を当てて反射させる照明器具を使ったプランのことです。
ダウンライトやスポットライト、シャンデリア、ライン照明などを使ってやわらかく空間全体に光を広げます。明るさは落ちますが光が当たる部分以外は陰影が生まれくつろぎやすい雰囲気になるため、リビングやダイニング、寝室などに適しています。
照明器具の機能をフル活用
近年の照明器具はほぼLEDが主流になってきており、照明器具の寿命が長くなっています。それだけに使い勝手がいい機能にも注目して選びたいですね。
明るさを調整できる調光機能や光の色を変えられる調色機能は、国内メーカーのシーリングライトにはほぼ標準搭載されています。ペンダントライトやスポットライト、ダウンライトにも搭載されているシリーズがありますが、現時点ではランプの色は固定である製品が多いので、調光・調色機能が欲しい場合は搭載の有無を確認しておきましょう。
その他に、Bluetooth接続によってテレビやスマートフォンなどの映像や音楽の音声を天井から聞くことができるスピーカー付属の照明器具もあります。映画鑑賞やライブDVDの視聴が好きな場合はこうした照明器具を選ぶのもよいでしょう。
生活空間においては、明るさと色の見え方、陰影の有無による雰囲気のどれを優先するか事前によく検討することが重要です。
手元を明るくしたいのに間接照明でぼんやりと照らしたのでは作業が進みませんし、ゆっくり過ごしたいのに直接強い光にあふれた空間だとなかなかくつろげません。特に明るさについては年齢による視力の低下や好みによって家族の中で意見がすれ違うことはよくありますから、「誰が」「主に何を」する空間なのかを踏まえて照明計画を立てましょう。
3.インテリアをワンランクアップさせる照明アイデア
せっかくお気に入りのインテリアにこだわるなら、照明の効果を最大限に活用してより魅力的な演出を楽しみたいですね。
おしゃれなインテリア×照明のアイデアになる事例をご紹介します。
玄関収納の上下にライン照明でやわらかい光を拡散
滞在時間が短い玄関ホールは、明るさよりも雰囲気を重視した照明で来客に魅力的なイメージを印象付けたい場所です。
玄関収納の上下に設置したライン照明の光を天井や床に向けることで、ふんわりと光が拡散し上品な雰囲気に。
シャンデリアを主人公にした光と影の演出を楽しむ
キッチンとダイニングが一体化した間取りだとつい全体を明るく照らしがちですが、食事の時間は少しドラマチックな演出をするのもおすすめです。
天井のダウンライトの明るさを絞ってペンダントタイプのシャンデリアの光だけに包まれると、ゆったりとしたやさしい家族団らんの時間を過ごせそうですね。
まとめ
同じ照明器具を使っても光の色や照度、部屋の広さ、空間内にあるアイテムの素材などさまざまな要素との組み合わせによって明るさや雰囲気が変わるだけに、照明選びはとても難しいものです。
しかし内装材や住宅設備と比べると、照明器具は比較的簡単に取り替えできるのがメリットなので、一度選んだら終わりではありません。空間の用途や家族構成、暮らし方などの変化に合わせて、またインテリアの模様替えとセットで照明計画もアレンジしていくのがおすすめです。
今回の記事を参考に、こだわりのインテリアを照明の力でさらにランクアップさせていってくださいね。
住宅やオフィス・店舗などの設計およびインテリアコーディネート、新築分譲マンションの設計変更などを担当。
建築関連企業の社員研修外部講師、インテリアコーディーネーター資格対策テキスト監修、工務店の施工事例集ディレクションなどの実績も多数。
▼略歴
住宅設備メーカーや住宅コンサルタント会社、大手リノベーション設計企画会社で10年勤務したのち独立。
主に住宅を中心としたリフォームやリノベーションを担当。
新築分譲マンションの設計変更やインテリアコーディネート業務にも携わる。
▼保有資格
二級建築士、インテリアコーディネーター、防災備蓄収納1級プランナー。