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掲載:2024年06月27日更新:2024年06月28日

定期的にチェックしたい「防水工事」の基礎知識|種類・費用相場・耐用年数など

防水工事が適切に施工・メンテナンスされていないと、建物の防水性能は著しく低下します。 防水層の劣化は、漏水・浸水による内部構造の腐食や室内側のカビ発生につながり、建物とそこに住む人の双方にとって危険です。 この記事で、陸屋根やベランダなどの平面に対して行う防水工事について下記の点をチェックしておきましょう。

● そもそも防水工事とは
● 主要な防水工事4種類の費用や耐用年数など
● 防水工事をリフォームするタイミングの計り方

また、RC造の建築物に有用な防水製品もご紹介します。

そもそも防水工事とは?

防水工事とは屋根材でカバーできない屋根・ベランダなど雨風にさらされる水平面に防水層を形成し、建物を漏水から守る工事です。

防水工事は次のような部分において、建物を雨水から守る大切な役割を果たします。

● 陸屋根(屋根材が葺かれていない平坦な屋根)
● バルコニー
● 庇
● 外部階段・廊下

屋根材などの外装材に保護されていない上記のような部分では防水層自体が外皮となります。それで十分な防水性能に加えて、人の歩行や物の荷重、落下物などによる負荷に対する耐久性も必要です。

防水工事の種類は主に4種類


防水工事は、資材や組み合わせによるいくつかの工法から選択できます。 防水工事では各工法の価格差に大きな開きがないのが一つの特徴と言えるでしょう。そのためたいていの防水工事では、費用面よりも機能性・下地素材や形状などとの相性に基づいて工法を選択されます。

①アスファルト防水・改良アスファルト防水


● 参考費用相場:1㎡あたり6,000〜9,000円程度
● 参考耐用年数:15〜25年

アスファルト防水工事は防水性の高いアスファルトルーフィングシートを、溶かしたアスファルトで貼り付ける工法です。古くからあるポピュラーな工法で、RC造建築物の屋上によく採用される工法で、安定した防水性能を発揮します。さらに十分な耐久性も大きな特徴の一つです。

アスファルトを溶かす際のトーチによる煙の発生や、アスファルト特有の臭気の問題など、建築工法においても環境への配慮が重視される現代においては敬遠されがちな防水工法でもあります。 防水工事としてはやや難易度の高い工法となるため、同工法における十分な実績を持つ施工業者を選ぶようにしましょう。

一方「改良アスファルト防水」では、アスファルトと合成繊維不織布を使用し、より通常のアスファルト防水より薄く、簡単な手順で施工できる工法も開発されています。 また、環境への負荷を低減した「低臭低煙型アスファルト」など、時代のニーズに合わせた新しいアスファルト防水も登場しています。

②シート防水


● 参考費用相場:1㎡あたり6,000〜7,000円程度
● 参考耐用年数:10〜15年

シート防水工事では防水性の高い塩化ビニルや合成ゴムなどでできたシートを貼り付けて防水層を作ります。 樹脂アンカーやビスなどを機械で打ち付けてシートを固定する「機械式固定方法」、下地にプライマーを塗布した後、接着剤によって密着させる「接着工法」など、施工方法にもバリエーションがあります。 シートを貼り付けるシンプルな工法で広大な空間に短時間で施工できるのが特徴で、RC建築の屋上などによく採用される工法です。

またシート防水は老朽化した既存防水層の上からも施工可能で、防水工事のリフォーム・修繕でも採用されます。 このように既存防水層を撤去せずに新しい防水層を重ねる工法は「かぶせ工法」と呼ばれます。既存防水層の撤去のための費用や時間を節約でき、環境への負荷も低減できるなど、時代のニーズに応える特徴を持ちます。

ただしシート防水は施工面積が狭い工事や、室外機・貯水タンクなどの設備の多い場所には向いていません。

③塗膜防水


● 参考費用相場:1㎡あたり5,000〜7,000円程度
● 参考耐用年数:10〜12年

塗膜防水では、ウレタンゴム系、ゴムアスファルト系、ポリマーセメント系などの防水塗料を塗布・硬化させて防水層を作ります。 塗膜防水は狭くて複雑な形状の場所にも施工しやすく、シームレスに仕上げられるのが大きな特徴です。

人気のある塗膜防水には、ウレタン樹脂を重ね塗りして防水層を作る「ウレタン防水」や、シート状の繊維強化プラスチックを補強材とし、樹脂塗料で固める「FRP防水」などがあります。 特にFRP防水は防水層の衝撃や熱の変化などによるダメージへの耐久性が高く、住宅のベランダなどによく採用されます。

トップコートは防水層の一種?

防水層の最表層には仕上げとしてトップコートが塗装されるのが一般的です。トップコートは防水層ではありませんが、防水層を紫外線による劣化から守る保護膜として機能します。 グレードごとの異なるトップコートの耐用年数はおおむね下記の通りです。

● アクリル系トップコート…3〜5年程度
● フッ素系トップコート…10年程度

上記の耐用年数を踏まえてトップコートの塗装メンテナンスを定期的に実施するなら、ベースになる防水層を長持ちさせることができます。 さらに、排水溝やドレンなどに枯葉やゴミが詰まらないように定期的な清掃を行えば、トップコートや防水層の早期劣化を防ぐことができます。


④コンクリート防水


● 参考費用相場:情報なし
● 参考耐用年数:最大20年

コンクリート専用の特殊な防水剤を塗布(または噴霧器などで散布)することにより、コンクリート自体を防水層とする防水工事です。防水材の主成分としてはケイ酸ナトリウムやケイ酸カリウムなどが使用されます。

この工法はコンクリートの上に防水層を重ねる工事ではないため、フロアライン高さや建物の意匠などを変えずに施工できるというメリットがあります。 さらに、製品によっては打設から長時間経過し中性化が進んだコンクリートをアルカリ性に戻す作用を持つ防水材もあります。この作用により内部の鉄筋の防錆効果も期待できます。

このような数々のメリットにより、コンクリート防水はコンクリート打放しの質感が意匠性において重要な建物の外壁や、立体駐車場の雨掛かり部分の防水、または老朽化したRC造建築物の長寿命化リノベーション工事などにおいて有用です。 コンクリート防水材の代表的なものを一部ご紹介します。

シリカテック - NEXT防水工法(シリカテック株式会社)



コンクリート表面にケイ酸カリウム液体材料(シリカテック)を散布し、コンクリート自体の防水力・止水力を大幅に強化できる防水剤です。 最大20年の防水保証が可能な製品となっています。

インナーコート(株式会社アールシージージャパン)



純粋とほぼ同じ表面張力のインナーコートは、水と同様に速やかにコンクリートに浸透します。 浸透したインナーコートは、コンクリートの微粒子を緻密化させ、強固な防水コンクリートを作り出します。 清掃、散布、約1時間の湿潤養生、ポリッシャーによる残材撤去という簡単な手順で施工することが可能です。

Sクリートアップ(株式会社バークスアップ)



Sクリートアップは塗布後すぐコンクリートに浸透し、コンクリートを改質、強化し、防水・止水性能を向上させると同時にクラック発生も防止します。 塩害・凍害・アルカリ骨材反応などですでにクラックが発現したコンクリートの回復にも役立つ優れた製品です。

防水工事のリフォームのタイミングはどう判断すべき?

防水層の修繕・リフォームが必要かは下記のような手順で診断されます。

● 一次診断…建物の最上階の天井部分を目視し、雨漏りの痕跡がないか確認する。
● 二次診断…剥がれ・浮き・亀裂などの劣化症状がないか防水層を全面的に確認する。
● 三次診断…防水層の一部を選んでサンプルとして切り取り、劣化状況を詳細に確認する。その後、切り取られた箇所を修繕する。

一般的に一次〜二次診断は無料で受けられますが、修繕を含むやや大掛かりな作業となる三次診断は有料で行われます。

一般住宅の場合


一般的な木造戸建住宅の場合、防水層の劣化状況は防水層や室内側の雨漏りの有無などを目視するだけで判断することが可能です。 雨漏りや防水層の劣化が見られるようであれば、ダメージが拡大する前に防水リフォーム工事を計画しましょう。

集合住宅やホテル等の大型施設の場合


マンション・アパート・ホテルのような大型建築物の場合、防水工事の総費用はかなり高額となります。そのため劣化が判明してから予算を立てていたのでは間に合わないかもしれません。 前回の防水工事のタイミングと防水層の耐用年数から次回の工事時期を予測し、十分前もって修繕費用を積み立てておく必要があります。

まとめ

防水は木造やRC造など構造の種類に関わらず、全ての建物にとって重要な性能です。 建物の耐久性を向上させ、そこに暮らす人の快適な生活を守るため、防水機能を定期的にチェックしてみましょう。


著者(澤田 秀幸)プロフィール

建築科を卒業後、住宅メーカーの木造大工、大手インテリアメーカーの店舗勤務などを経て、現在はWebメディアを中心にフリーライターとして活動中。






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